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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
187/366

2012年2月17日

※この作品は作者の日記ではありません。

2月17日(金)

 最近、睡眠が浅いせいで変な夢を連続してみる。しかし記録してはいないので、昨日見た変な夢も思い出せないでいる。別にそれでもいい、と考えている。夢の記録を付けることは義務ではない。確かに夢日記を書いて出版した作家はいるが、私の夢はただ変なだけで然程愉快なものではない。


 私の残高には一億円が入っている。それだけで精神は安定するものである。もちろん母にも妹にも教えていない。おしえたらせびられるに決まっている。きっと今の私の資産は母の総資産を超えているだろう。我が家は一億という金額に手が届くほど裕福ではないのである。


「ゾンビパウダー、って知ってますか」と榎本なごみが話を切り出した。ゾンビパウダーなら知っている。死体にそれをふりかければゾンビとなって蘇るという粉だ。「私、死体はまだ焼かれてないんです」榎本なごみの死因はなんだったか。「交通事故です。跳ね飛ばされたショックで死にました」葬式は行われなかったのか。「確か、まだ行方不明ってことになってますから、どこかに死体はあるはずです」聞くたびに死因が変わっている気がする。まあいい、相手は幻覚だ。しかしその話とゾンビパウダーと何の関係があるのか。「ゾンビパウダーを、三百万円で売ってくれるところがあるんです」そういえば昨日、銀行へ行ったとき、榎本なごみは私の背後を浮遊していた。


 晩餐の席で、榎本なごみは生き返りたがっている、とだけ母に話した。ゾンビパウダーや私の残高の話は出さずに、である。「生き返れるなら、人生やり直したいわよねえ?」母は榎本なごみにすっかり慣れてしまっている。妹は毎日晩餐の席を一緒にしているのだが、いつも一言も口を聞かない。だから榎本なごみに慣れているのか分からない。しかしはっきりとした拒絶の態度は取っていない。「ね、やっぱり生き返れる機会があるなら生き返りたいんですよ、人間は」榎本なごみは私を見ていう。例え、生き返ったところでゾンビと呼ばれても、でもか。「もちろんです」榎本なごみは力強く言った。

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