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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
186/366

2012年2月16日

※この作品は作者の日記ではありません。

2月16日(木)

 起きると唐突に思い出した。サロンのことではない、自分に口座があったことを思い出したのである。働いていた頃は収入をその口座に入れていた。狂ってからはその口座に手をつけていない。もしかしたら口座にはいくらか金が残っているかもしれない、そうすれば酒が買えるかもしれない。そう考えた私は、要件を告げずに家を出た。久しぶりに、自分の財布を持って。


 銀行に到着し、残高を見て驚いた。一億円が振り込まれていたのである。私はそんな額を稼いだ覚えはないし、稼いだ額は稼いだだけ使ってしまうという実家暮らしでなければできない浪費家的生活を送っていた社会人だった。それなのに口座には一億円が入っている。もしかしてこれが昨日ハガキに書いた「生活に安定を」の結果だったりするのだろうか。そんなわけあるか。ハガキの送り先は天国である。天国に私をピンポイントで救う神が住んでいるとは思えない。結局、あまりにも怪しかったので残高には一切手を付けづに銀行を出た。


 晩餐に出たのはパスタだった。簡単な料理である。炒めた野菜等が入っているが、その中に味のないキノコが混じっているため、パスタ自体の味も消えてしまっている。試しに母にパスタの味を尋ねてみた。「塩味が少しきつくなったわね」母は味を感じている。しかし私は味を感じていない。この赤いキノコは狂っている人間にのみもたらす作用があったりするのか、と母に訪ねてみた。「そんな話は聞いたことがないけど」晩餐後、ネットで調べてみた。「キノコ マザー」で検索。出た。「狂っている人間の味覚を乱す作用あり」と書いてあった。なんだ、あっさり分かってしまったじゃないか。そして気づくと私は倒れていて、パソコンの前に座ったまま深夜になっていた。

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