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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
180/366

2012年2月10日

※この作品は作者の日記ではありません。

2月10日(金)

 創作トキワ荘では創作トキワ荘の一人も美形と呼べるほどのルックスを持たない仲間たちが「今日の創作」と称して30分くらいで書いた小話を披露していた。それぞれの仲間たちが披露するたびに、創作トキワ荘の仲間たちは拍手してその話を褒め称えた。創作トキワ荘の仲間たちは総勢八人いたので、つまり拍手は八回鳴らされた。それ以外の時間は「創作鍛錬の時間」らしく、自分の将来のための創作活動を行う時間、であるとのことだった。つまり自由時間だった。創作トキワ荘から出て遊びに行く、という人物もいた。しかもそれが当然であるかのような顔をしていた。真剣に創作を志している人間は何人いるんですか、と創作トキワ荘の管理人を名乗る人物に訪ねてみた。「当然、全員ですよ」とマニュアル通りの模範解答を頂戴した。


 創作トキワ荘の人間の中に榎本なごみを見ることができる者は一人もいなかった。だから私は榎本なごみと大っぴらに話をした。「なんだか楽しそうですね」しかし、創作というものは本来苦しいものではないのだろうか。楽しく創作してそれでデビューできればそれに越したことはないが、さっきの「今日の創作」の発表を聞く限りでは、とてもデビューしようと考えているとは思えなかった。それほど「今日の創作」の話のクオリティは低かったのである。私が書いたほうが面白い、と思えるほどだった。私は自分の書く話に自信を持っているわけではないが、それでも、私のほうが面白い、と思えたのだから相当である。


 帰ると晩餐の支度がしてあった。「どうだった?」と母に尋ねられた。あそこの人たちはレクリエーションとして創作活動を楽しんでいるようだ、と私は報告したが、「それでもいいじゃない、とりあえず通ってみたら?」と母は言った。もしかして母は私を追い出したいのではないだろうか。「そんなわけないじゃない。愛する我が子よ? 追い出したいなんてとんでもない」と母は言うが、嘘に聞こえてしまうから不思議だ。

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