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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
177/366

2012年2月7日

※この作品は作者の日記ではありません。

2月7日(火)

 人間の体内時計は27時間周期だという。だから人間の活動時間は毎日およそ3時間ずつずれていくものなのだ。月曜日の日記を火曜日の朝に書くことになってしまったのも、だから仕方がないことなのだ。決して榎本なごみに「楽そうですよね」と言われたのがショックで不貞寝したとか、そういうことではない。


 今日あたり幻覚が現れるかもしれない、と身構えていたのだが、一向に何も現れない。そこで外へ出てみた。何も見ないのであれば外に出ても何も現れない筈である。と思ったのが甘かった。一歩外に出た私は請求書を踏んだ。その紙の一番上に大きく請求書と書かれていたのだから間違いない。しかも請求先は私で、その内容は「博打の負け代金七万四千円を2月15日までに払われたし」といった内容である。私は博打など打った覚えもなければパチンコ屋に入ったことすらないのだ。なのでムシススkと鬼して、請求書を元の位置に置き、私は散歩に出かけた。


 結局、散歩中も落ち着かなかった。人間の視線が恐ろしいものであるということを忘れていたのである。平穏な生活ボケ、狂いボケである。3人の人間とすれ違った。その誰もが私を注目していた。こんな時間から歩き回って、あいつ無職なんじゃないの、といった目をしていた。「してませんよ」いや、していた。帰ってくるとまた請求書を踏んだ。なぜ私は元の位置に置いてしまったのか。仕方がないので私はそれを拾い上げ、自室まで持って行って手稲に折り畳み、破ってからゴミ箱に捨てた。


 晩餐の席、今日のメニューにもキノコが入っていて無味である。味を感じるのか、と母に尋ねてみた。「感じるわよ、このキノコ、味がないから」味がないから料理から味を消してしまうのではないのか。「味がないから料理の味を変えないんでしょうが」お互い、言っていることがおかしい。論点がずれている。いや、そういうことではなく、認識している事実がずれているのだ。これは私がおかしいからか。私が狂っているからか。

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