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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
174/366

2012年2月4日

※この作品は作者の日記ではありません。

2月4日(土)

 猿の幽霊を見ない、と思ったらどこかへ消えていた。「そろそろ成仏することにする、って言ってましたよ」榎本なごみなどより余程この世に未練が残りそうな死に方をしたというのに。「でも、あなたは私が成仏したら寂しいでしょう?」そうかもしれない。「生きている人間の未練に縛られるケースだってあるんですよ」と榎本なごみは私に説明するが、私に申し訳ない気持ちになって欲しいのだろうか。その望み、叶えてやることにする。


 働くことをイメージしてみる。しかし、上手くいかない。それというのも今の私には働く気がないからで、まずは意識改革から始めなければならなかった。意識改革には何が必要か? 他者の意見を聞き入れることが必要である。そこで私は榎本なごみに身体に入ってもらうことにした。「入ってくれ、と頼まれることになるとは思ってもみませんでした」これも意識改革のためである。「じゃあ、おじゃまします」と言って榎本なごみは私の体に入った。


 それから榎本なごみは外へ出た。公園では犬連れの中年男性が歩いていた。「わあ、可愛い」と榎本なごみは犬に近寄った。私は犬が苦手だったが、そんな私の意識など榎本なごみは構いもしなかった。そもそも私は榎本なごみに自分は犬が苦手であるなどと話したことはないので、知らないのだろう。榎本なごみはしばらく私の体を使って犬と遊んだ。一緒に走り回って、やがて疲労困憊した私の身体は、榎本なごみの意思によって犬と別れた。


「意識改革できましたか」と帰ってから尋ねられたが、できなかったとしか答えられなかった。犬と遊んだくらいで意識改革できれば苦労はないのである。晩餐の席で、私は自分を変えていきたいという旨を母に伝えた。すると母は、「じゃあ、これに行ってみたら?」と、「創作トキワ荘」と書いてあるチラシを私に手渡した。それによると、集団活動しながら創作活動に精を出し、やがて出版を目指す。そういう集まりらしかった。「あなた、最近小説書いてるんでしょ?」なぜ知っているのだろう。「猿先生からメールで聞いたのよ」やはり私にメールしてきた猿は小説家のペンネーム猿だったのか。そうなのか。

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