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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
173/366

2012年2月3日

※この作品は作者の日記ではありません。

2月3日(金)

 節分である。しかし無職の人間には無縁の行事である。いや、世の中のほとんどの行事は無職の人間とは無縁だと言ってしまってもいい。日本では行事といっても店の品揃えが変わるくらいのことしか怒らないのだ。確かに春は桜が舞うし秋は葉が赤くなったり黄色くなったりするが、それに合わせて行楽弁当が並んだりデジタルカメラがプッシュされたりする。それらを味わったり感じたりするためには金がなければどうしようもない。世の中そういうふうにできている。


 だから私は働かなければならなかった。そう自分に言い聞かせてみたが、どうしてもそういう気になれなかった。しかし気分で働くか否かを決められるのであれば生きていくのになんの苦労もないわけで、私はハローワークの私を担当している中年女性と顔を合わせていた。そして沈黙が流れていた。「働く気がないなら、紹介しても、きっと面接に通らないでしょうし……ねえ……」しばらく向かい合って黙り込み、「本当に働く気になったら顔を見せなさいよ」と言われ、私はハローワークを出た。


 そんなこと母には報告できないので、タイミング悪く仕事が見つからなかった、と母には伝えた。榎本なごみには真実を伝えた。「そうですねえ、あなたも死んでみてはいかがでしょう」おばけにゃ学校も試験もなんにもない、とは有名な文句である。だから幽霊は堕落する一方である。そんな生活は耐えられない。「あなた、堕落してないって言えますか?」私は黙った。今の私の生活には試験もなんにもなかったからである。

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