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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
171/366

2012年2月1日

※この作品は作者の日記ではありません。

2月1日(水)

 1月はずいぶん長かった気がする。一月行く月二月逃げる月三月さらさら流れる月、と言っていたのはずいぶん昔に死んだ祖母である。もしかして祖母は嘘をついていたのではないだろうか。それとも祖母くらいの年になると1ヶ月が相当短く感じられてしまうものなのだろうか。そんなことはない、と私は思う。過ぎ去って、振り返るから短く感じるだけだ。毎年12月になると1年が短く感じられるが、1月中は1年が長く感じられる。人間の時間感覚などその程度の曖昧なものなのだ。


 猿の幽霊と榎本なごみの幽霊はどこから取り出してどうやって触っているのか、あやとりで遊んでいた。私は蚊帳の外だった。「だって、文章書いてるじゃないですか。邪魔になったら怒るでしょう?」そう、私は久々に文章を書いていた。男の吸血鬼と女の死神は学園を舞台に男と女の関係になった。しかし死神は吸血鬼の夜に付き合わない。なぜなら死神は夜に仕事があるからである。ここで吸血鬼に関する解説を入れることにした。吸血鬼が昼間活動しているのは、そして夜になっても人間の血を吸いにいかないのは、昔からの伝承が嘘を伝えているからである、と。それにしても、ここからどうやってバトル展開に持って行けばいいのか。いっそこのまま恋物語にしてしまおうか。私の頭の中の話の筋はこんがらがっていた。そう、まるであやとりに使う毛糸のように。「そんなたとえ話を考えている頭を話を作るのに使ってはいかがですか」そう言う猿にはすぐにでも出て行っていただきたい。


 晩餐の席で猿の幽霊を母に紹介した。こちらが新入りである。「どうも、猿です。名前はありません。同じ猿の仲間が世話になっていると動物園では噂になっていました」母は驚くこともなく、「あら、あなたさる先生のお知り合い?」と反応していた。猿先生と撲殺された猿は別の猿であるらしかった。ところで私に時折メールを送ってくる猿も今出た二つとは違う猿なのだろうか。私の周囲が猿まみれになってしまいそうだ。数日前までかたつむりまみれだったというのに。

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