2012年1月31日
※この作品は作者の日記ではありません。
1月31日(火)
書道をやる夢を見た。私が使っていた筆は毛の一本一本がやたらと太く、線を引いても不細工な細い線の集団がゆっくり移動した跡、みたいになってしまった。誰に対して、どこで書道をやっているのか、それは夢に出てこなかった。とにかく書道をやっていた、という行為だけが夢の残留物として頭に残っている。
金もないのにコンビニへ行った。酒が恋しくなってしまったためである。ずいぶん長い間(1ヶ月くらい)飲酒していないので、酔って痺れる脳の感触が恋しい。いや、以前酒を飲んだ時には酔ったりなどしなかった。ずっと気持ち悪がっていただけだった。次に酔えるのはいつなのだろう。次に酒が口に入るのはいつになるのだろう。そんなことを考えながらコンビニへ行った。すると恵方巻きの予約を受け付けていた。恵方巻きが流行っているということにしたのは主にコンビニではないだろうか、などと考えながらジャンプを立ち読みしていると、窓の外にサルの姿が見えたので即座にジャンプを所定の位置に戻してコンビニを出た。ところが猿の姿は見つからなかった。そういえば動物園から逃げ出した猿はその後どうなったのだろうか。働いていたらきっとこんなこと思い出しもしないだろう。
と思っていたら晩餐時にテレビから流れていたニュースで、動物園から逃げ出した猿が死体となって発見された、と報じられていた。しかも撲殺されていたらしい。警察はその犯人も突き止めていて、猿を捕まえた上で撲殺した男は逮捕されていた。「物騒ねえ」とそれを見ながら母は微塵の緊張感も含ませずに呟いた。
晩餐後、部屋に戻って横になると榎本なごみと猿が浮いていた。なるほど幽霊となって現れたのか、と見ていると、「驚かないんですかね」と猿が言った。うちに居座っても良いことなど一つもないぞ、と言いながら、私はキノコがもたらす狂いの奔流にその身を任せていった。