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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年8月31日

※これは作者の日記ではないことを明言させて頂きます。又、登場人物、又は作者が完全に狂った場合、連載を終了とさせていただきます。ご了承ください。

8月31日(水)

 朝、起きると私は狂っていた。まるで現実が幻覚に用に見えていた。空の色も昨日ほど青く見えない。昨日の日記を読み返してみると、まるっきり普通の駄目な人間の生活そのものが書かれていた。狂っていないと私はこんな感じの生活を送ることになるのか。怖くなったので、私は日記をすぐに閉じた。これからは日記を書くときはキノコをちゃんと食べよう、と心に固く誓った。常人のまま駄目人間と言われるくらいなら狂った駄目人間と呼ばれるほうがましである。


 部屋の中のものが壊されることに恐怖を覚える。例えば、日曜日に榎本なごみから貰った腕時計、これが壊れることを考えただけで、私の胸はまるで悪い相手に恋しているかのように締め付けられる。実際、昼寝中に、何者かに腕時計を壊されるという夢を見た。それがあまりに恐ろしかったので、ショックで目を覚ましてしまった。目覚めると窓の外に猿がいた。ずいぶん前に動物園を逃げ出した猿のように見えた。というか、ここに猿がいる理由で最も納得できるものがそれだった。窓を開けて追い出そうとすると、猿が喋った。「あなた、お暇そうですね。退屈な生活、大変結構。羨ましいものです」きっと夢に違いなかった。


 それから、いつ目覚めたのか、自分でも分からないが、とにかく晩になった。晩餐にいつものようにキノコが入っていたので私はむさぼるようにこれを食べた。悪夢を見てしまうのも、現実ではないようなものを現実のように認識してしまうのも、私の狂いかたが足りないせいだ。私よ、もっと狂え、そしてこんな悩みなど感じない身体になってしまえ。

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