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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
169/366

2012年1月30日

※この作品は作者の日記ではありません。

1月30日(月)

 退屈な統計学の話が聞こえている夢を見た、と思いつつ目を覚ましてみると退屈な統計学の話が聞こえてきた。40代女性のテレビの視聴率が高いとかなんとか。声はリビングから漏れ聞こえているようだった。自室のドアを開けて自室とリビングを地続きにしてみると妹がテレビをつけっぱなしにしたままリビングの机に伏せて寝ていて、テレビからは退屈な統計学の話が聞こえていた。私はテレビを消して自室に戻った。するとまたしばらく経つと統計学の話が聞こえてきた。起きていたならなぜ机に伏せていたのだろう。私と顔を合わせるのも嫌、ということなのだろうか。


「本屋に行きたくなったわ」と母が言い、なぜか私も一緒に連れて行かれることになった。本屋に行くのも久しぶりである。なぜいかなかったかと言えば、行っても私には本の一冊を買う金もなく虚しく悲しくなるだけだったからである。本屋に到着し、雑誌を立ちよみするついでに猿の本を探してみることにした。本の減り具合で本は売れているのかどうかわかる。積まれていれば、の話になるが。ところが女性小説のコーナーにも男性小説のコーナーにも海外小説のコーナーにも文庫のコーナーにも「猿」というペンネームの作家の本は見当たらない。「一冊だけ買ってあげるわよ」と母が太っ腹なことを言ってくれたので、じゃあ猿の小説で読んでいないものをひとつ買ってもらおう、と私は店員に猿の小説の在処を尋ねてみた。店内を見回して見つからないものの在処は店員に訊くに限る。ところが、検索機をひとしきりいじった店員は、「そんな作家はいませんね」と言った。仕方がないので町田康の「東京飄然」を買ってもらった。妥協である。


 晩餐の席に図書館で借りてまだ読んでいない猿の「あいしてる」を持ってきて母に見せてみた。これと同じ作者名の本がなかったのはおかしい、と母に言ってみた。「あら、当たり前じゃない」と母は言った。「その人の本、売り物じゃないもの」それは一体どういうことなのか。「猿の本はね、図書館にしか置いてないの」それはなぜか、と尋ねたかったが、晩餐に混ざっていたキノコが効いてきた。

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