2012年1月23日
※この作品は作者の日記ではありません。
1月23日(月)
「頼まれてくれないかしら」と珍しく午前中に目覚めた私に母は言った。頼みごととは燃えろゴミ出しだった。これからは私がゴミ出し当番になっていったりするのだろうか。こうやって私は家族の中で丁稚的扱いをされるようになっていくのではないだろうか。本家の丁稚には申し訳ない言い回しだが、不安は不安だ。ただゴミを出すだけのくせに。
ゴミを出すべくマンション一階の外にあるゴミ置き場へ向かうと、若い男と目があった。この寒い中気合の入った服装をしていた。薄着なのである。そして長髪であった。しかし筋肉のおかげでその長髪が宅八郎ではなくロッカーのそれに見えた。私等すぎの男は声もなく互いにゴミを出し合った。そして二人して同時にマンションのエレベーターに乗り込むと、同じ階で降りた。そのまま二人してロッカーを先頭に歩き、ロッカーは私の部屋の目の前で扉を開けて入っていった。薄着の男の住処は私の部屋の隣だった。
ふと思い立ち、前の家に電話してみた。父が出るだろうが遅々と何を話せばいいのかわからなかった。それでも電話してしまったのは、虫の知らせを感じたからだ。そしたら誰も出なかった。父にも仕事というものがある、と気づいたのは電話を切ったあとだった。しばらく経ち、今度は電話が鳴った。母が出た。そして話を終えると、私の部屋の扉越しに母が話しかけてきた。「あなたのお父さんが死んだらしいわ」つまり私の父が死んだということであり、母の夫(まだ正式に離婚が成立していないので)が死んだということになる。「首吊りだったらしいわ」死因など別に知りたくなかった。しかし、昨日のトイレでの一件は、そういうことか。と納得できた。死後何日目の発見だったのだろう。
晩餐はしめやかに行われた。とはいえいつも私は無言で食べるので、食卓に流れる音量はいつもと変わらない。今日も食事にキノコは入っていない。私は大きくため息をついた。まだキノコを絶ったことによる作用が何も出てこないことへのため息である。