表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
162/366

2012年1月23日

※この作品は作者の日記ではありません。

1月23日(月)

「頼まれてくれないかしら」と珍しく午前中に目覚めた私に母は言った。頼みごととは燃えろゴミ出しだった。これからは私がゴミ出し当番になっていったりするのだろうか。こうやって私は家族の中で丁稚的扱いをされるようになっていくのではないだろうか。本家の丁稚には申し訳ない言い回しだが、不安は不安だ。ただゴミを出すだけのくせに。


 ゴミを出すべくマンション一階の外にあるゴミ置き場へ向かうと、若い男と目があった。この寒い中気合の入った服装をしていた。薄着なのである。そして長髪であった。しかし筋肉のおかげでその長髪が宅八郎ではなくロッカーのそれに見えた。私等すぎの男は声もなく互いにゴミを出し合った。そして二人して同時にマンションのエレベーターに乗り込むと、同じ階で降りた。そのまま二人してロッカーを先頭に歩き、ロッカーは私の部屋の目の前で扉を開けて入っていった。薄着の男の住処は私の部屋の隣だった。


 ふと思い立ち、前の家に電話してみた。父が出るだろうが遅々と何を話せばいいのかわからなかった。それでも電話してしまったのは、虫の知らせを感じたからだ。そしたら誰も出なかった。父にも仕事というものがある、と気づいたのは電話を切ったあとだった。しばらく経ち、今度は電話が鳴った。母が出た。そして話を終えると、私の部屋の扉越しに母が話しかけてきた。「あなたのお父さんが死んだらしいわ」つまり私の父が死んだということであり、母の夫(まだ正式に離婚が成立していないので)が死んだということになる。「首吊りだったらしいわ」死因など別に知りたくなかった。しかし、昨日のトイレでの一件は、そういうことか。と納得できた。死後何日目の発見だったのだろう。


 晩餐はしめやかに行われた。とはいえいつも私は無言で食べるので、食卓に流れる音量はいつもと変わらない。今日も食事にキノコは入っていない。私は大きくため息をついた。まだキノコを絶ったことによる作用が何も出てこないことへのため息である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ