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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
158/366

2012年1月19日

※この作品は作者の日記ではありません。

1月19日(木)

 昨日もキノコを食べなかった。一昨日もキノコを食べなかった。今日もキノコを食べなかった。しかし異常は何も起こらない。このままでは真人間になってしまうのではないか、と思ったが、しかし病院で処方されているちゃんと効いているであろう薬は飲み続けている。この薬を抜いても大丈夫になった時が、真人間に戻ったとき、ということになるのではないだろうか。


 世間は女子高生に甘く作られているようで、今日も編集者がやってきて、「隣の漫画雑誌の編集者がさ、あの子の漫画、読んでみたいんだって」となぜか昨日の妹の友人のことを母に報告した。「少年漫画の編集だからなあ。きっと女に飢えてるんだろうな」と編集者は続けたが、それでも世間は女子高生に甘く作られている、と思う。多分。


 報告しただけで編集部は去っていった。あの編集者は本当に仕事をやっているんだろうか。設定の変更で実はクビになっているけど働いているふりをしている、とかいう感じになっていたりしないだろうか。そうだとしたら毎日でも来ることができて、私としては迷惑なので設定が変わっていないことを祈るばかりだ。「本当に、何のために来たんでしょうね。特に今日」と榎本なごみは言ったが、それは私が口にしたい疑問だった。だから二人で考えてみたが、何も思い浮かばなかった。「この期に乗じて漫画を描いてみるっていうのはどうですか」と榎本なごみは思いつきを口にするが、ペンも用紙もSAIも無いのにどう描けというのだ。私に自由にできる金はない。


 晩餐の席で、一応母にトイレに盛り塩をしている理由を訪ねてみた。「え?」と母は首をひねって確認しに行き、「確かに盛ってあるわね」と戻ってきた。消去法で考えるにどうやら妹の仕業らしい。思うに、妹は榎本なごみの存在を快く思っていないのではないだろうか。だから成仏させるか追い出すかしたくて、塩をトイレに盛っている。きっと風水的な意味があってそうしているのだろう。しかし榎本なごみは喜んでその塩を舐めていた。無意味であることを妹に伝えてみようか。しかし、自分からいもうちに話しかけるのは何ヶ月ぶりになるだろう、と考えると、つい躊躇ってしまう。

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