2012年1月9日
※この作品は作者の日記ではありません。それは明白なことです。
1月9日(月)
毎日図書館に通えばこの生活は退屈ではなくなるのではないか、と思ってみたが毎週月曜日は図書館が休みである。だから今日は退屈である。ハローワークへ行け、と自分を叱咤してみたがなぜか起き上がることができなかった。物理的に、である。「私の体を完全にあなたの体に潜り込ませてみました」身体の内部からそんな声が聞こえてきた。声に合わせて私の口も勝手に動いている。「こうすれば、私は人間を操れるようです」榎本なごみは恐るべき幽霊である。
榎本なごみが抵抗しようとしない私の体に飽きて出て行ってから、私は榎本なごみから逃げ出したくなって外に出た。ところが榎本なごみは私の後方上空を漂い続けた。しばらく目的地もなく早足で逃げ続けていると、すれ違う人があった。その人は榎本なごみを見てぎょっとした顔になった。榎本なごみは私にしか見えない、とかそういうものではないらしい。「幽霊は楽ですよ。人の目も気にしなくていいし、食事も睡眠も不必要なんです」しかし死ぬのは嫌だ。「どうしてですか?」榎本なごみは家族が泣くのを見ていたたまれない気持ちになったのではなかったのか。
マンションから少し離れたところに小さな森を突っ切る道がある。田舎である宮崎では市街中心部でもない限り少し歩けばすぐ自然と毛虫がたっぷりの道に入り込むことができるのである。その森の中の道端に赤いキノコが生えているのを発見した。まるでベニテングダケのようである。私はそれを摘み取った。それを持って家に帰り、勝手に刻んで炒めて食べた。自分でもどうしてそうしたのかわからない。私は狂いのあまり気絶した。もしかして深層心理でキノコを求めていたりするのか。そういうわけではないことを私は深層心理に期待する。