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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
143/366

2012年1月4日

※この作品は作者の日記ではありません。

1月4日(水)

 テレビを点けると日用品と車のほかには保険とローンのCMばかりやっているような気がする。謙譲な生活を送ること、これ即ち車を乗りつつ日用品を買いに息がてらローンを組んで保険に入るべし、とテレビは指し示しているような気がする。自動車保険に入ることがそれほど必要なことなのだろうか。やはりテレビを無条件で信じてしまうこと、及び信じてしまう人間には注意が必要だ。要注意人物たる狂人である私のようなものが言っていいことではないだろうが。


 母が友好的になってしまったと以前書いたが、それは態度だけのものであったらしく、今年初の病院へ出かける際にも最低限の金額しか手渡してもらえなかった。それに前回の通院から一週間しか経っていない。いつもは二週間ごとに通院していたはずである。どこで体内時計が狂ってしまったのか。分からなかったので40分待たされて5分診察があった後、一週間後に予約を入れた。薬も一週間分だけ受け取ることにした。これで一週間分の薬代が私のものになったわけである。たかだか数百円ではあるが、金銭というものを持つことを禁じられているような生活を送っている私にとって、この金額は貴重である。貴重なので数百円は一枚ずつ分けて自室のあちこちに隠しておくことにした。これなら一つや二つ見つかっても偶然で済ませられるし、取り上げられてもダメージは少ない。きっと見つかったら取り上げられるに決まっている。態度が変わっただけで本質が変わっていない母は、そういう性質を持っているのである。


 そう考えながら帰ってくると編集者が私を待ち構えていた。正確に言うとキッチンで料理をしていた。そしてそのまま私に「やあ、おかえり」と声をかけたのである。編集者まで友好的になったのか、と驚きつつ、まだ部屋のあちこちに隠しておらずポケット一つにまとめて入っている小銭たちがジャラジャラ音を立てないように気を付けて歩きつつ、編集者が構えているフライパンの中を覗いてみると、そこではほうれん草とキノコが炒められていた。どこかで見覚えのあるメニューである。「ソテーだよ。君が食べるんだ」キノコの色は赤だった。食べると狂うキノコの色をしていた。


 食べないでいると何をされるかわからないのでほうれん草とキノコのソテーを食べ、すぐさま部屋に戻ってそのまま気絶し、目覚めると隣に榎本なごみが横たわっていた。榎本なごみは面白そうに微笑んでいた。「大変な状況ですねえ」少し前まであの編集者は兄だったのではないのか。あんなのが肉親だったらと思うと、ぞっとしますよ」榎本なごみは編集者を嫌うという点に変更は加えられていないらしい。

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