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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
140/366

2012年1月1日

※この作品は作者の日記ではありません。

1月1日(日)

 昨日の続き。日が登ってしまってから。初日の出が登り、新年となってからも、しばらく私は歩き続けた。平和台公園から宮崎神宮までは相当離れていたからである。私は汗ばんでいた。その汗も乾いてかつてない寒気が体を襲い、それでも歩き続けているとまた汗ばんできた。しかし今度は服がさっきの汗で湿っていたので気持ちが悪かった。それを二回ほど繰り返した頃、ようやく私は宮崎神宮にたどり着いた。もはや早朝とは呼べない時間になっていた。


 宮崎神宮に到着してから、私はあることに気がついた。確かに待ち合わせ場所を宮崎神宮と定めはしたが、宮崎神宮のどこである、とは定めなかったのである。宮崎神宮は広大な敷地を持つ県内最大級の神社であり、さらに元日ということもあって人通りが多く、この中から目的の人物一人を探すのは困難に思えた。まさか敷地内になぜか居着いている野生の鶏に尋ねるわけにもいくまい。まだ歩き回って探さなければならないのか。そう考えてうんざりしていると目の前に突如として榎本なごみが現れた。遠くから走ってきたのでもない、後ろから回り込んで現れたのでもない、突如目の前に現れたのである。これは人間業とはとても思えない。榎本なごみは幻覚だった。パソコンの設定変更により現実の設定も変更され、幻覚になっていたのであった。


 それから幻覚となった榎本なごみと初詣をした。とは言ってもやることは人ごみをかき分けて賽銭も入れずに両手を合わせただけである。賽銭にするための小銭すら私は持たされていなかった。だからお守りを買うこともおみくじを引くこともなかった。幻覚となった榎本なごみも金銭は持ち合わせていないようで、それらは不可能だった。だから用の済んだ二人は別れるしかなかった。これから家に帰るのか、と私は尋ねた。「私にいえなんかありませんよ」と榎本なごみは言った。また現実の変更点を見つけた。


 榎本なごみと別れて家に歩いて帰ると母が待ち構えていた。それから私は長いこと説教を食らった。無言で立ち去ったのだから当然といえば当然である。罰として、という名目で、私は茹でただけのキノコを食べさせられた。罰と言われれば仕方がないので、私はそれを食べた。そして倒れた。ついさっきまで私は横になっていた。今は多分、日の傾きからして午後である。しかしこんな時間に、私は二日分の日記を書いている。

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