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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
14/366

2011年8月28日

※これは作者の日記ではないことを明言させて頂きます。又、登場人物、又は作者が完全に狂った場合、連載を終了とさせていただきます。ご了承ください。

8月28日(日)

 家に知らない女の子が訪ねてきた。誰も応対しないので仕方なく玄関に向かった寝起きの私に向けられた女の子の一言は「さあ、遊びましょう!」だった。滝本竜彦の小説が思い出された。その人物の小説どおりの展開だと私はやたらと自罰的な人物と言うことになってしまう。自分のことを狂ってる狂ってるとこんな風に日記に書き続けている私は自罰的な人間なのか。そうなのかもしれない。そう考えながら私はぎこちなく女の子と話し、おっかなびっくり一緒に遊んだ、その内容については詳しく書かない。子供がやるような他愛も無い遊びで、そのあまりの幼稚さに泣きそうになった、とだけ書いておく。


 女の子がやってきたのはきっと幻覚だったのだ、さっきまで一緒に遊んでいたのも幻覚だったのだ、と私は夕方、女の子が帰ってから思った。しかし私の手元には女の子から手渡された箱があった。誕生日プレゼント、とのことだった。私の誕生日は既に通過した水曜日、つまり23日だ。遅すぎやしないか、と訊いてみたかったが訊けなかった。「ああそう、じゃあいらないね」と言われて手元から奪い取られるのを恐れたから、かもしれない。自分でもどうして素直に受け取ったのか理解ができない。


 箱を開け、誕生日プレゼントを腕に巻いてみた。似合っているか似合っていないかで言えば、不釣合いな代物だった。しかも私は特別に用事があるとき以外は外に出ないので、家の壁にかけられている時計で事足りてしまう。女の子には申し訳ないが、このプレゼントは無意味だ。


 そういえば、女の子の名前を聞いたのか、聞いたとして覚えているのか自分でも分からない。今思い出そうとしても、出てこない。あれは本当に幻覚だったのかもしれない。じゃあどうして手元に腕時計があるのか。それは知らない。


 死ぬ夢を見た。死のショックで目を覚ますと深夜だった。もう晩餐は出ないだろう、と予想しつつも、もしかしたら、と期待して居間に下りてみると、何の用意もされていなかった。私は絶食しなければならないようだ。餓死が冗談では済まされなくなってきた。

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