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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
139/366

2011年12月31日

※この作品はフィクションであり、実在する人物・団体・組織等とは一切関係ありません。

12月31日(土)

 主義主張のない文章を書いている、ということになる。現在、私は、である。私が書いている文章には逃亡者の男と女が登場し、それを追う男が登場し、それらの登場人物が絡み合ったり絡み合わなかったりしながら物語は進んでいく。書くことによって主張したいことは、これといってない。だから面白くないのではないか。そういう気がする。しかし主義主張が無くても面白い本は面白いので、単純に私に書く力がないのが悪い、主義主張のない文章は面白くないとかいう主張に逃げるのが悪い、ということになる。そんな気がして目が覚めた。これを書いている時点で既に年は開けていて、太陽は既に登ってしまっている。


 12月31日の朝から、私は母のデートに付き合わされた。起きると母が急に友好的になっていたのである。まるで我が子を愛しているかのようにふるまうのだ。私に笑顔さえ向け、この豹変っぷりに私は背筋が寒くなったが、そういえば昨晩パソコンの設定をいじってメールが届くと音が鳴るようにしていたのだ、ということを思い出し、それにしてもこんな形の変化が訪れるとは、と私は心の中で驚きが隠せないでいた。


 母のデートの相手は編集者だった。ここは変わらないようである。母は自分の子供を自分のデートに同行させたが、編集者は自分の家族を自分のデートに同行させたりしなかった。つまり榎本なごみの姿は見えなかったのである。寂しくなかったと言えば嘘になるが、当然だ、という意見にも賛成はできる。私たち三人は編集者の車でドライブに出かけた。母は免許を持っていない。私の免許は狂って福祉を受け始めると同時に失効扱いになっている。運転できるのは編集者しかいなかった。前の席に母と編集者が座り、私は一人で後ろの席に座った。母と編集者は仕事の話も交えつつ雑談を楽しんでいた。


 ドライブは長距離、長時間に及び、宮崎市に帰ってくる頃には日が暮れていた。私たちはファミリーでも入れる飲み屋に入った。そして母は酒を飲んだ。編集者も酒を飲んだ。私も酒を飲んだ。母は私にキノコを食べさせようとしたが、私がそれを拒否するとあっさり引き下がった。三人とも体温が上がったところで、店に車を置きっぱなしにしたまま平和台公園まで歩いた。平和大高遠に続く道はちょっとした上り坂がおよそ1キロ続くもので、酒を飲んだあとの体には決して楽なものではなかった。しかし私と母と編集者は歩いた。私たちの周囲にも歩く人々がいた。


 平和台公園に到着すると、母と編集者はそこで日の出を待つらしかった。平和台公園は高台にあるため、初日の出を見るのに適しているのである。私はトイレに行くと言って二人から離れ、そのまま逃げ出した。編集者となるべく一緒に居たくなかったから、それと元日早朝に榎本なごみと一緒に初詣に行く約束をメールで交わしていたからである。私は約束の場所である宮崎神宮まで歩いた。かなり歩いた。続きは、一月一日の出来事になってしまうので明日の分の日記に書く。

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