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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年12月28日

※もうすぐ年越しですが、こんな日は年明けが遠くに感じられるものですね。ところでこの作品はフィクションであり、登場する人物・団体・企業とはなんの関わりもありません。

12月28日(水)

 体を支配されることと心を支配されることのどちらが恐ろしいだろう。私はどちらも同等に恐ろしいと思う。例えば体を支配されて好きな人を襲えと命じられると、好きな人を襲うことになる。例えば心を支配されて好きな人を襲えと命じられると、好きな人を襲うことになる。どちらも結果は同じである。しかしこんなことを本気にしてしまう人間は、食事の選り好みをする資格はないと思う。何を食べようが栄養価さえ偏っていなければ同じである。


 結局、榎本なごみは自宅へ戻っていった。榎本なごみは最後まで嫌そうな足取りで部屋を出ていった。確か榎本なごみが嫌っているのは、自分と同名の兄だけではなかったか。だったら帰ることくらい苦ではない……いや、苦か。確か榎本なごみが嫌っているのは家族全員だった気もする。だったら帰ることは苦であるはずだ。とにかく、家族に一人でも嫌いな人間がいる、ただそれだけで、人は一ヶ月以上も家を空けるほど家が嫌いになるものなのである。ところで、私は家族が好きか嫌いか。家が嫌になっていない以上、少なくとも嫌ってはいないはずだ。かと言って好きかと訊かれれば、私は口ごもる。照れとかではなく。分からないのである。


 病院へ行き処方箋をもらい、その足で薬局へ行って病院へ出かける前に手渡された代金を支払って荷物を薬だけにして家に帰った。そしてふと思い立ち、惰性で飲み続けている三種類の薬のうち、一種類を止めてみることにした。今までに一日に一回や二回程度薬を抜いたことはあるが、丸一日以上薬を抜かなかったことはない。でも、きっと支障はないだろう。キノコという壮絶な効き目を持つ薬を毎日摂取しているのだから。


 晩餐に出されたのはキノコの炊き込みご飯だった。炊き込まれていてもキノコ入りの料理は無味だった。珍しくもないことなのだが、晩餐はそれ一品のみだった。晩餐後、理由は不明だが自室に帰ると涙が出てきた。榎本なごみが居なくなって本心では寂しいのか、それとも晩餐がわびしかったから泣いているのか、理由は不明だがとにかく悲しいので泣いた。

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