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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
133/366

2011年12月25日

※この作品は作者の日記ではありません。

12月25日(日)

 爆発音がした。私は目を覚ました。するといつもと変わらない昼といつもと変わらない部屋が私を出迎えた。夢の中で爆発が起こったのである。いや、火山の噴火だったような気もする。とにかくこれを書いている深夜、日付が変わってクリスマスがあっさりと何事もなく終わった今現在の段階では既に夢は記憶から消えかかっている。


 当日の様子を見に街へ向かってみた。すると街は既に後片付けの雰囲気に包まれており、昨日までの浮ついた様子が嘘のようだった。イブが本番なのは日本人の悪い癖である。いや、何が悪いというのだろう。少しも悪くないではないか。こんなどうでもいいことを考えても許されるのではないかと思えるほどに、今日の街は祭りの準備に疲れているように感じられた。そういえば今日は視線があまり気にならない。薬を飲んだおかげなのだろう。自分の狂いが治ったとはとても思えない。なぜなら昨日から本を読むことができなくなったからだ。こうして文字を書く事は出来るのに、文字をずっと読み続けるという行為ができない。


 家に帰ると大きな包装紙がリビングのゴミ箱に突っ込まれていた。プレゼントのラッピングのようである。消去法で考えると、妹が昨日の友人との残念会で貰ったものに巻き付けられていたものだろう。プレゼントがなんだったのかは知る気もないし、素人してもきっと教えてもくれないだろう。私だったらそんなことを尋ねてくる相手は不審に思う。そして部屋に帰ると榎本なごみが頭にねじり鉢巻のようにリボンを巻いていた。「これから悪い冗談をいいます。『プレゼントはわ・た・」それ以上の発言を私は許さなかった。


 ここ最近幻覚らしい幻覚を観ないことを晩餐の席で母に報告してみた。「あら、そう」と母は言った。もう狂っていないのかもしれない、などと心に思っていない憶測も口にしてみた。だからキノコはもう不要かもしれない、と提案を続けてみた。「明日は朝も食べなさい」と母は言った。明日の朝に私は何を食べさせらるのだろう。私は不安になり、口に入れたキノコの味も分からなかった。

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