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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
130/366

2011年12月22日

※この日記は作者の日記でも夢日記でもありません。

12月22日(木)

 起きたいが夢から覚められない、そんな明晰夢を見た。もう何がなんだかわからない状態である。寝すぎてどうにかなってしまったのだろうか。このままこの明晰夢の分析を続けようとしても「分からない」が連発されるだけであることは明白なので、この夢についてはこれ以上考えないことにする。


 昨夜、薬を一度に10錠飲んだわけだが、今朝の私には特になにも起こらなかった。いや、少しだけ変化はあった。体が重く、眠気がひどい。うっすらと吐き気もして、横になっても楽にならない。要するに二日酔いと同じ症状が出たのである。つまり私が飲んでいる薬の効き目はその程度のものである、と言うことができる。私がもらっているのは飲みすぎても二日酔いの症状が出る程度の弱い薬なのだ。それとも、こんなふうに一辺に飲まれることをあらかじめ予測して、弱い薬を処方していたとか。いや、それはないだろう。あの診察を5分で終わらせてしまう医師が私のことなどを真剣に考えているとは思えない。


 榎本なごみに「私が寝たあと、何か無茶でもやったんですか」と尋ねられた。私は何もやっていない、せいぜい薬を10錠一気に飲んだくらいだ、と答えた。「すごい顔色ですよ」と榎本なごみは言った。しかし薬を一度にたくさん飲んだ程度で起こる症状は軽い二日酔いのようなもの程度であり、「今日は何もせず寝ていたほうがいいですよ」そんなにひどい顔色をしているのか、私は。「一目で異常だと分かる程度には」


 そんなわけで横になった私を置いて、榎本なごみは一旦家に行くといった。帰るのではなく、家族と交渉するつもり、とのことだった。どんな交渉かというと、年末もこちらのマンションにいてもいいのか、という交渉をしに行くのだそうだ。そんなに気軽に家族と顔を合わせられる程度の環境にいながら、どうして家に帰らないのかが不思議である。


 不思議を放っておくのは良くないのでどうして帰らないのか尋ねてみた。「家族と一緒だと息苦しいんですよ」反抗期か。「私の反抗期は既に終わりましたよ。反抗期が終わったある日、突然お兄ちゃんが嫌いになって、家に居たくなくなったんです。ある日突然、他人のお母さんと交際を始めたから」じゃあ尚更我が家には居ない方がストレスが溜まらないのではないか。「汚らわしいじゃないですか、不倫なんて」榎本なごみは本当に都合が悪くなると私の言うことを無視するようになる。


 榎本なごみは晩餐までに戻ってきたが、晩餐の席には出席しなかった。編集者が、つまり榎本なごみの兄が、そして母の恋人でもある人物が、リビングの机に座って飯を食っていたからである。晩餐が終わったあと、榎本なごみは「私、決心しました。兄にあなたのお母さんと別れるよう説得してきます」と言って、私の部屋から出ていった。私はその背中に、どうして晩餐中にそれをやらなかったのか、と尋ねたかったが、我慢しきれずキノコで狂って倒れた。

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