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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
128/366

2011年12月20日

※この作品は作者の日記ではなく、実在する人物・団体等には一切関係ありません。

12月20日(火)

 昨日病院の待合室で祖母にしっしっされる夢を見たのは、先週病院に行き忘れたことを深層心理で気にしていたからかもしれない。そんな想いを胸に、今日は病院へ向かった。待合室は昨日の夢で見たものとは全く違った内装をしていた。しかしやることは変わらず、ただ呆然と待つだけだ。急遽予約したのでいつもは40分待ちのところを、今日は60分待たされた。診察はいつもどおり5分である。主に処方箋をもらいに通っているだけなのだから仕方がない。


 薬局に寄ってから帰って文章の続きを書いた。話の続きはこんな感じになった。人を殺して逃亡中の男女は疲弊していた。もとより大した準備もせずに逃亡生活に突入したのだから、毎日をやり過ごすのが精一杯だった。ゴミ捨て場を漁って食べられそうなものや売れそうなものを探し、食べ物やトラックの燃料代を得ることを繰り返すその日暮らしの毎日が続き、女の精神は荒れ始めていた。しかし文句は言えない、と女は悲壮な決意を固めていた。どんなに不便な生活をしていても、私はこの人が好きだから一緒にいるのだ、生活が本当に嫌になった時はこの人と別れなければならない、それは嫌だ。嫌だから我慢しなければならない。と、女は決意していた。女は男に自分から進んで囚われているのだった。一方で男も生活に疲れ始めていた。これからどこへ向かうのかわからない生活は不安を加速させ、自首という考えすら頭を過ぎり始めたが、一緒にいてくれる女のため、それもできずにいた。二人は表面上は愛し合いながら、お互いにうんざりしていた。と、ここまで書いた。これからまた一展開加えなければならない。文章を書く事は苦難の連続である。


 晩餐に卵焼きが出た。過度に甘い卵焼きだった。口に入れると、じゃり、という食感と共に砂糖がその存在感を示した。母はおそらく目分量で調味料を入れたのだろう。それから、卵焼きにはキノコが入っていた。この無味の食材のせいで卵焼きからは卵の味が消え失せており、私はただ甘いだけの物体を口に入れ、咀嚼し、嚥下することを繰り返した。今日ばかりはさっさと狂ってしまいたかった。それほどまでに口の中が不快だったのだ。

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