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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
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2011年12月19日

※この作品はフィクションであり、作者の日記ではありません。

12月19日(月)

 夢に祖母が出てきた。病院の待合室で座っていた私に、祖母はその席をどくように手を振った。祖母の厳しい顔を私はその時初めて見た。夢の中だったけど。そんな祖母は去年の夏、死んだ。祖母は私が生まれてから死ぬまで、私に優しく接し続けた。もしかしたら榎本なごみは祖母の霊魂が具現化した姿なのかもしれない、と少しだけ考えたが、すぐに打ち消した。さすがにそれはファンタジーが過ぎる。ファンタジーとは逃避である。


 昨日図書館に出かけた際、歩道に植えられている気に電飾が巻きつけられているのを見た。昼間だったので光ってはいなかったが、夜になればきっと光っているのだろう。外はクリスマスを意識している。テレビの世界でもクリスマスを意識した番組構成を行なっている。インターネットは案外そうでもない。我が家ではここ数年、クリスマスにやることといったらケーキを食べる位である。今年は私が狂ったこととクリスマス直前に妹の不幸があったこともあって、何もやらないような気がする。別に構わない。


「クリスマスなのに何もしないんですか?」最近、毎日のように違う話題で話しかけてくる榎本なごみがクリスマスの過ごし方についての話題を降ってきた。私は妹に不幸が起きたので今年はきっとなにもやらないだろうと伝えた。「寂しいですね。聖夜なのに」聖夜だろうがなんだろうがうちの家族はケーキを食べることくらいしかやらない。神なんかに感謝もしない。榎本なごみは友達とパーティでもやるんじゃないのか。「私は、憧れてるんですよ。クリスマスにパーティ開くの」その友達はいないというのか。私は以前、榎本なごみが知らない女子高校生と歩いているところを見たことがある。あれはおそらく友人だろう。「幼稚園の頃は、よく友達とクリスマスパーティを開いてたんですけどね。私の友達の一人が、小学校に入ってからいきなり反抗期に入っちゃって。クリスマスパーティなんてダサい、って言い出したんですよ。それ以外は親に反抗するくらいでいい子だから仲間から外すこともできないし。だから私たちはその流れに逆らえなくて、小学校に入って以来、友達とクリスマスパーティを開かなくなったんです」榎本なごみは珍しく身の上話を長々と語った。「その子とは今でも付き合いがあるんで、今年もクリスマスパーティは開かれないでしょうね」その友達と、クリスマスに会わないのか。「会いません。あってもやることがないので」今の私に友人はいない。2011年12月19日の私には友達がいない。確認のため、再度書いておく。


 晩餐に煮物が出された。手間のかかった料理である。大根の煮物まで冷めていたが、そんなことに文句をつける権利は私にはない。最近、起きている間に狂っている症状が出ない、と母に相談してみると、「今週、病院行った?」と尋ねられた。そういえば行っていない。薬も処方してもらっていない。飲み忘れが度々起こるので、少しはストックがあるが、それもあと数日でなくなってしまう。「明日行きなさい」と言って母は病院に電話した。どうして起きている間に狂っている症状が出ない、という改善の釣行の話から病院へ行っていないから行けという話になったのか。母が日本語の解釈が下手である、という可能性は有り得ない。母は翻訳家なのである。何語を翻訳しているのかは知らないが。

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