2011年12月10日
※この作品はフィクションであり、登場する人物・団体・地名とは一切の関係がありません。
12月10日(土)
果たして面白いのか分からなくなったので、今まで書いた日記を榎本なごみに読ませてみた。「私が前に読んだ小説にちょっと似てますね」という感想が帰ってきた。私もそのくらいは承知している。自分の書いているものが、図書館に返却しに行ったらなぜか自分のものになってしまった小説「このキノコ人間が。」に似てしまっていることくらい。しかし、仕方がないのだ。私の日常が、その日記体で書かれている小説に似てしまっているのだ。もしかしたら「このキノコ人間が。」は予言の書なのかもしれない。
図書館へ行った。田舎の図書館は予算がないせいか、本棚に空白が多い。その代わり、無償で寄贈されるせいだろうか、郷土関連の本は嫌になるほど充実している。しかし私は郷土関連の本には手を出さない。宮崎のことを深く知ったところで何の得にもならなそうだったからだ。だから私は、人生に於いて何の役にも立たなそうな娯楽小説を数冊借りて帰った。
晩餐の席で肉豆腐が出された。二日連続して白いものが出たのである。しかし、編集者も毎日来ていいのではないだろうか。せっかく家庭から父という存在が消えたのだから。「編集者って仕事はね、昼から朝まで働くことが多いらしいのよ」と母は言った。母も難儀な職業の人間と恋に落ちたものである。
恋か。私にはそんなものに落ちる資格などない。それに、狂っているのだからきっと恋愛感情など理解できないだろう。
というところまで書くと、急にいつものように私の部屋で寝ていた榎本なごみが起きだして言った。「狂っているからといって、決してその人は知能が低いわけじゃないんですよ」それだけ言うと、榎本なごみは再び眠りに入った。なんだったんだ。今の唐突な励ましは。