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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
117/366

2011年12月9日

※この作品は作者の日記ではありませんずら。

12月9日(金)

 起きて本を読んで文章を書いてぼんやりと過ごし、夜になってキノコ入りの晩餐を食べて狂って気絶して深夜に目が覚めて日記を書く、という生活を曜日にかかわらず続けているため、このところ曜日の自覚が薄い。今日は金曜日だったが、土曜日だったような気もする。しかし昨日は木曜日だったので、金曜日で間違いないのだろう。


 幻覚を最近見なかった理由について、それは最近現実が比較的忙しかったからではないだろうか、という仮説を立ててみた。突如立ち上がった両親の離婚という大ハプニング、そして直ちに行われた別居、それに伴う引越し。どれも人生の大きなイベントの一種である。しばらくして生活がさらに安定するようになると、もっと曜日の感覚が薄くなり、幻覚もまた見えるようになるのだろう。それを望んでいるわけではないのだが。むしろそうでない方が世の中的には喜ばしいに違いない。家でぼーっとなんかしてないで外に出て働くべきだ、世の中的には。個人的にはどうなのか、それは私自身に尋ねてみなければ分からない。


 榎本なごみがゲーム機を持って家に現れた。異様に耐用年数が高いことで話題のスーパーファミコンである。しばらく遊んでみたが二人揃ってなかなかコース通りに走ることができない。ヘボなりに互角の勝負が続いた。夕方まで二人で遊んでいたので、今日は文章を書く暇がなかった。同じような日々が続いている、みたいなことを日記に書いた奴はどこのどいつだ。


「しあわせの書」というタイトルの小説を読んだ。題名からしてもっと重い話かと思ったら軽いミステリだった。この本の仕組みを面白いと評価する人もいるかもしれないが、私としては人物の描写が甘いように感じられた。幻覚が見えないでいると、この日記は単なる引きこもりの読書感想文になってしまう。面白くない。でも面白いからといって誰が読むんだ、面白いとして面白いことを誰にどうやって伝えるんだ。


 晩餐に白い焼き魚が出た。名前がわからなかったので母に尋ねてみると、介党鱈を焼いたものであるとのことだった。そうかこれが鱈というものか、と味を下に記憶させるように味わった。そしてキノコ入りの味噌汁は味わえなかった。キノコから滲み出る無味のエキスが味噌の味すら消してしまっていたのだ。

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