表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
112/366

2011年12月4日

※この作品は作者の日記ではありません。

12月4日(日)

 一日中引越しをしていた。今日からマンション暮らしである。新居には妹も付いてくることになっていた。私は今日まで知らなかった。母はもちろん承知していた。ということは、父は一軒家に一人で残されることになるのか。それは寂しい、などとうっすら考えながらダンボール一箱分の荷物を解いた。パソコンを電源に接続して着替えを畳んだまま部屋の隅に置くだけの簡単な作業だった。あまりにも簡単に終わったので他の部屋の手伝いを命じられた。ついでに自分の分の布団も母から支給された。部屋のすべての元が破壊された前の家ではもちろんベッドも破壊されており、私は床に掛け布団を敷き、その上に寝ていた。寒かったら包まるのである。だから布団の上に寝るのは久々のことだった。私は自室に久々に布団を敷いたのだ。


 自室。そう、私には個人部屋が与えられていた。もちろん妹も個人部屋である。母も当然個人部屋を持っている。このマンションは部屋数が多かった。母など個人部屋の他に寝室まで所有しているのである。その上で台所兼リビングも存在している。母は子供が二人とも付いてこなかったらこのマンションに一人で住むつもりだったのか。さぞ家賃は高かろう、そう思って母にこの部屋の家賃を訪ねてみた。「八万円よ」異様な金額だった。安すぎる。幽霊でも出るのだろうか。


「私が幽霊みたいなものじゃないですか」と新居に早速やって来た榎本なごみは言った。しかしIМEの変更によって私を取り巻く環境は変更されており(原理は不明のまま)、榎本なごみは実在の人物になったのではなかったのか。「私はずっと実在していますよ? あなたが認識している限り、私は実在しているんです」と榎本なごみは言った。


 母の荷解きは夜になってようやく終わり、それから新居での初めての晩餐を取った。晩餐の席で、私は少し傲慢なことを頼んでみた。ネット回線を私の部屋に引いて欲しい、と働いていないくせに頼んでみたのである。すると母は既に新しいプロバイダと契約しており、明日には回線工事が行われる、と私に説明した。なぜか母はパソコン関係にだけは私に甘いのである。それから、新居になっても晩餐には赤くて味のないキノコが含まれていた。このキノコは一体どこから仕入れているのだろう。スーパーにこんなに赤いキノコが売られているとは思えない。ベニテングダケにしか見えないからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ