2011年12月3日
※この作品はフィクションです。実在する人物・団体・場所等には一切関係ありません。
12月3日(土)
今日は文化の日である。違う。それは先月の3日である。こんな出だししか思い浮かばない私の脳は壊死しているのかもしれない。とにかく私は一日かけて引越しの準備を進めた。とはいえ簡単なものだった。なにせ部屋のものは編集者にほとんど破壊されてしまっているのだ、残っているものといえばいくらかの着替えとノートパソコンくらいしかない。ダンボール一箱に全ては収まった。
私はこの家に残るかマンションに移るのか、父を選ぶのか母を選ぶのか選択を迫られ、マンションに引っ越すことを選択した。結論を出すのに時間がかかるだろう、と昨日書いておきながら今日になると結論が出ていた。こんなことを長々と考えていても気分が沈降するだけだということに気がついたのだ。狂っているくせに今日の私は賢いな、などと自画自賛しながら、私はダンボールに荷物を詰め終え、それを部屋でデスクトップパソコンを解体していた母に告げた。「そう。ついてくるのね」と母は言った。きっと父を選んでも父は「そうか。残るのか」と言っただろう。私が付いてくることによって親にもたらされる利益は皆無である。きっと選ばれないことを期待されていたに違いない。
「環境が変わるのは、いいことですよ」と今日も家に居座っていた榎本なごみ入った。榎本なごみが通っている高校は土曜は休みらしい。最近の高校で土曜が休みなのは珍しいと思うのだが、きっとそれ相応の偏差値を誇る高校なのだろう。どんな子供でも受け入れますよ、という、門戸の広い高校。それがいいことなのか悪いことなのかは、狂っている私には判断しかねる。
晩餐の席に、今日は家族が一堂に会していた。「どうして母親について行く気になったんだ」と父は私に、母の名前を用いずに尋ねた。「キノコを食わされるんだぞ」それもそうだな、と思った。しかし、父も母も、私が付いてくることを望んでいないだろう。ならばどちらを選ぼうと、私にとっては同じことだ。どちらにしろ邪険に扱われるだけなのだから。と言ったら父は私を殴ってきた。「子供を思わない親がいるか!」じゃあ今の扱いは一体なんなんだ、と問いたかったがさらに殴られそうだったのでやめておくことにした。