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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
110/366

2011年12月2日

※この作品は作者の日記ではありません。

12月2日(金)

 昨日の晩は、正確に言えば一昨日の晩は書店で雑誌のテレビ欄を立ち読みしているという地味すぎる夢だった。しかしそういう夢を見るということは、私はテレビに飢えているのだろうか。そう考えた私は、朝からテレビを見てみることにした。朝といえばニュース番組である。どうでもいいニュースとどうでもいいニュースの合間に、動物園からサルが逃げたというニュースを5回連続でやっていた。全国5箇所で計5匹のサルが逃げた、ということになる。1つのニュースにまとめればいいだろう、と思った。それとも1つの怪現象を5つに分割しなければならないほどネタがないのだろうか。そんな筈はないと思うのだが。


 今日は榎本なごみが家から登校していった。私が登校するよう命じたのである。「そんなことより、あなたが心配なんです」と榎本なごみはぐずったが、登校させなければきっとご近所さんに不審がられる、と伝えると、渋々ながら学校に向かっていった。妹と同時に。妹と榎本なごみは顔見知り、ということにいつの間にかなっていた。私がいない間、二人はどんな会話を交わすのだろう。分かるわけがない。だって他人のことだし。


 久しぶりに一人になった私は、文章の続きを書いた。猿に宛てるつもりで書いているのだが、もはや目的は文章内の物語を完結させること、である。それが終わってから送信するかしないか考えることにする。そして文章の内容だが、猿の散文詩に感動した男女が出した結論は、そろそろ追ってくる男に会って懺悔しよう、というものである、ということにした。逃亡劇は終わってしまうのか、と思わせる展開である。読者はどこにもいないが。しかし、私はまだ逃亡劇を終わらせるつもりはない。男に捕まる直前で再び心変わりさせ、逃亡を続けさせるつもりである。しかしいつかは終わらせなければならない。物語は終がないと成立しないものなのである。


 新たなIМE導入のせいで環境が変わってしまったことを痛感した。今日になって、やっと気がついたのだ。今週はふれあいサロンに連れて行かれなかった。その代わり、今日は家にいた母に命じられた。「歩こう会にはいかないの?」と。そして家を追い出された私は、どこへ向かえばいいのかわからなかった。歩こう会とはなにか。どこに存在するものなのか。仕方がないのでしばらく外をふらふらと歩いてから家に帰った。


 晩餐の席で、両親から発表があった。とりあえず来週から別居することになった、とのことだった。母は近所のマンションに引っ越し、父はこの家に残るらしい。私は来週までに結論を出すことを迫られた。家に残るか、マンションに映るか、である。

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