2011年11月30日
※この作品はフィクションです。作者の日記ではありません。
11月30日(水)
榎本なごみという存在について少し深く考えてみたかったが、そんなことを考える間もなく、起きると診察時間が迫っていたので私は病院へ行かなければならなかった。いつものように40分待って5分の診察を受けるために。病院の診察室で、体がアルコールを欲してたまらない、これはもしかしたらアルコール依存症の前触れなのかもしれない、と相談してみた。一笑で処理された。「飲んでないのにアルコール依存になるわけがないでしょう、はは」とのことだった。
帰ってから文章の続きを書いた。新たな出会いの続きである。猿と逃亡中の男女は仲良くなり、猿の朗読する即興の散文詩に二人は感動した。そしてこれからのみの振り方について、二人は車の中で並んで寝転びながら話し合った。というところまで書いた。二人がどういう結論を下したのか、そこはまだ書けていない。結論は後回し、である。私は結論を出すことをいつも躊躇してしまう。
榎本なごみの目の前で目を閉じ、姿が消えるよう念じてから再び目を開ける。すると榎本なごみは姿を消している。そうしてから、意を決して妹に話しかけてみた。昨日は緊急時だったので咄嗟に声をかけることができたのだが、今日のような通常時は意を決さなければ話しかけることができない。私は妹が怖いのである。「クラスメイトだけど?」妹は、榎本なごみについて総証言した。その妹の目の前で、私は目を閉じ、念じて目を開け、榎本なごみを出現させた。そして再び同じことを訪ねてみた。「最近、家に来てるみたいだけど?」榎本なごみという存在は、私の妄想ではなかったのか。それとも妹もろとも私の存在だったりするのではないだろうか。なにせ私は狂っているからな。自分に妹がいるなどといった妄想にずいぶん前から取り付かれているなどという可能性も捨てきれない。
晩餐の席で、私に妹が本当に存在するのか、母に訪ねてみた。母は、確かに妹は存在する、と証言した上で、私に訪ねてきた。「お父さんと私、どっちについてくる?」離婚の話し合いは順調に進んでいるらしかった。