サクラ
【悪魔も聖書を引用できる——】
真の〝悪魔〟はいったい誰なのか!?
驚愕のラスト!あなたはきっと騙される!!
二人分の紅茶を乗せたトレイを手に、拓海は談話室へと入った。
拓海は麗子にティーカップを差し出す。
「ありがと」
麗子はアンティーク調の肘掛け椅子に腰掛けていたが、膝の上では彼女の愛猫サクラが気持ちよさそうに丸まっていた。
サクラは血統書付きのペルシャ猫だ。この屋敷の誰よりも堂々としていて、資産家令嬢が飼うペットにふさわしいだけの品格を漂わせている。
拓海は長椅子に腰を下ろすと、ティーカップを口元に運ぶ。この立派な談話室で紅茶を味わっていると、まるで自分が貴族にでもなったかのような錯覚に陥る。
サクラが麗子の膝からぴょんと飛び降りたかと思うと、拓海の足元にすり寄ってきた。拓海が背中を撫でてやると、サクラは嬉しそうに喉を鳴らし始めた。
それを見て、麗子が目を細めて微笑む。
「ほんと、サクラは拓海さんにべったりよね。人見知りが激しい子なのに」
麗子が言う通り、サクラは拓海がこの屋敷を訪れるようになってすぐに懐いてきた。当然、悪い気はしない。
「拓海さんって、動物の女の子にも好かれるのね。ちょっと妬けちゃうわ」
麗子はそう言って、愉快そうに笑う。
しかし、サクラが拓海に懐いている一方で、執事の沢尻にはまるで寄りつこうとしなかった。沢尻が現れると、サクラは露骨に警戒心を露わにして部屋を出ていくのだ。麗子はそれを面白がり、よくそのことで彼をからかっていた。
拓海は時間を確認すると口を開いた。
「もうそろそろ、ここを出ようか」
今夜は、六本木のフレンチレストランに予約を入れていた。
「じゃあ、これ飲んだら支度してくるわ。あ、それと、今日は沢尻さんが非番だから、タクシーの手配もお願いね」
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