23.探索【2視点】
◆フォシュ◇
あの後、私達は作戦を改めて練り直し、皇城を出た。
ちなみに、リディアさんは万が一の為に今回はお留守番。
これは、皇城にいれば何かあってもお姉ちゃんがなんとかしてくれるという、エレナお姉様の信頼によるものだった。
『あの……エレナお姉様。』
『なんだ?フォシュ。』
ふぅ……、よかったぁ……。
エレナお姉様の機嫌も、少しは落ち着いてきたみたい。
『その世界樹周辺に設置されている魔道具は、どれほど複雑なものなのですか?』
『気になるか?』
『はい。』
あの時、あれほど苛立っていたエレナお姉様が、それでもメラルダちゃんを探しに行くことなく、この役目を選ぶほどに危険な魔道具。
勿論怖いけど、それがどれほどのものか、少し興味もある。
『それは、私の気になりますね。』
『お前はある程度分かっているだろう、オマール。』
『そんなことありませんよ。』
そう言って、オマールさんは謙遜した様子で笑った。
まぁ、でもお姉ちゃんが団長にならなかったら、団長になっていたのは、このオマールさんなんだ。
それでも今は副団長と一花の隊長を兼任してる凄い人なんだけどね。
『まぁ、いい。……そうだな、例えるなら、百万本ある導火線だな。その中から正解の一本を選び、切る。もし間違えれば、一瞬で全ての導火線に火がつくがな。』
『『え゛…………。』』
う、うそ……。
しかも、エレナお姉様の言い方からして多分、それ正解を見分けるのって至難の業なんじゃ……。
『本当に、何も分かっておりませんでした……。』
オマールさんも、まさかここまでとは思っていなかったのか、ガクッと項垂れた。
『聖域に入るぞ。私はまだ遭遇していないが、人型のスライムには注意しろ。』
『『了解。』』
そうして、私達は聖域に突入した。
しかし、聖域に入っても、ティアさん達が言っていたスライムが姿を見せることはなく、気づけば世界樹の眼下まで来ていた。
『何も……いませんね……。』
『油断するな。聞いた感じでは、ただのスライムとは思えないからな。』
そうして等々、私達は世界樹の前まで到着した。
しかし、一見世界樹に変化は見られず、魔道具が置かれている様子もない。
「何も……ありませんね。」
「そうだな。エレナ様、魔道具というのはどの辺に?」
「ここだ。」
そう言って、エレナお姉様は軽く手刀を振った。
すると、まるでベールが切り裂かれるかのように、何も無かった世界樹からの周辺から、魔力を吸収する三つの巨大な魔道具が出現した。
「こ、これは……。」
「まさか、これほどの魔道具が置かれていたなんて……。」
オマールさんでも気づけないほどの幻影魔法かぁ……。
「どうした?フォシュ。」
「いえ、これは私達だけでは苦労したなーと。」
「違いない。」
お姉ちゃんなら、気づけたと思うけど……。
でも、大抵は聖域に入る前に二花に止められるから、一般人は入れないし、聖域の中を巡回するのは、一日に二、三回巡回する二花だけ。
おまけに巡回するのもティアさん本人ってわけじゃないから、多分知らないうちに仕掛けられてたりしたら、気づけなかっただろうなぁ……。
「ほぅ……。こいつらが……。」
「ぇ……?」
その瞬間、まるで種からスライムが生えたかのように、何の異変もなかった地面から突如三十を超える人影のようなスライムが出現した。
「ほ、本当に人の形をしてますね……。」
「あぁ、私も初めて見る……。」
「オマールさんもですか?」
「当たり前だ。あんなものが当たり前のようにいたら、この国はとっくに滅びているだろうな。」
まぁ、ティアさんでも面倒って言ってたスライムが常に、しかも聖域で湧いたりしたら、国の内側でスタンピードが起きるようなものだもんね。
「………………オマールさん。」
「それ以上言うな、フォシュ。………分かってる。」
その数を、私達が相手するんだよね……。
しかも、エレナお姉様なしで。
「じゃあ頼むぞ、二人とも。」
「「え、あ…………はい。」」
その瞬間、周囲のスライム達が一斉に襲い掛かってきた。
ヤバい……これ……死ねるかも……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆ノーラ◇
「はぁ……。ティア、あなたいつまでその調子なの?」
「………………悪かった。」
捜索を初めてもずっと黙りのティアに、ロルダンさんが声をかけると、彼女はボソッとそう言った。
「それ、みんなの前でもう一度いいなさい。特に、メラルダ様にはね。」
「…………分かってる。」
それにしても……。
ティアがここまで落ち込んでいるのは、私も初めて見るわね……。
「ねぇ、ティア。そのスライムは、そんなに強かったの?」
「………………あぁ。だが、それだけじゃねぇ。」
「どういうこと?」
「………弱点が分かんねぇんだ。」
弱点が分からない?
でも、ティアの攻撃なら、敵そのものを吹っ飛ばすことくらい容易のはず……。
「…………頭とか、核とかは?」
「勿論、頭は何度も破壊した。他にも、私とアネで何度もぶっ飛ばして、弱点を探った。だが、それで倒せたスライムは一匹もいねぇんだよ。」
「嘘……。」
弱点がないスライム……?
「何か変わった事とかもなかったの?」
「…………ないな。」
ロルダンさんが険しい表情でそう問うも、ティアは無念そうに首を横に振った。
「なら遭遇しても、逃げるしかないわね。」
「え?弱点を探るのではなくですか?」
「時間に余裕があったらそうしたいところだけど、今は違うでしょ?」
「……そうですね。」
でも、流石に捜索範囲が広すぎる……。
転移で逃げたと言ってたから、多分聖域の中にはいないだろうし、かと言って目につく場所にいると思えないから、どこからの建物にはいると思うけど……。
「いないわねぇ……。」
「探知を逃れる術があると考えてよさそうですね。」
そもそも、それがなかったら、とっくにエレナ様が見つけているわよね……。
「この首都から出られてたら、流石に見つけるのは難しいですが……。」
「いいえ、それはないわ。」
そう私が弱音を零すと、ロルダンさんはそう断言した。
「なぜですか?」
「洗脳が解けてないからよ。」
「…………なるほど。ロルダンさんは、あの魔道具には有効範囲があると考えているんですね?」
「えぇ。」
確かに、この魔道具がなんの制限もなしに使えるとは思えない。
それに、仮に制限がなく、もう国外に逃げていたとしたら、大量の魔力を常に消費してまで、洗脳を続けるメリットがない。
「でも………………どうやってこの中から見つけましょうか?」
「そうねぇ……。」
首都には、最低でも三千を超える建物が存在する。
その中から、こうして一つ一つ探してはいるけど、この調子じゃあ、何回日が沈むことか……。
かと言って離れてしまえば、さっきの失敗を繰り返すことになりかねないし……。
「…………居場所なら分かるぜ。」
「…………ティア?」
分かるって…………。
「ティア、意地になってるならやめておきなさい。」
「なわけあるかっ……!…………私も今さっき気づいたばかりだしな……。」
「今さっきって……。」
ロルダンさんですら気づいてないのよ?
それをティアが気づいたなんて…………ほんとに……?
「じゃあ聞くけど、なんで気づいたのよ。」
「いや、なんでって…………アレ見ろよ……。」
「あれって………………ぇ?」
そう言ってティアが指した方向を見ると、その先にある建物のうちの一つに、何故か純精霊が避けている場所があった。
「…………なるほど。確かに、人の皮の被る化け物には、純精霊は寄り付かないかもしれないわね。」
「あぁ、そうだな。」
人の皮を被った化け物……。
でも、確かにこんな光景を見るのは、Aランク以上の魔物と戦う時くらいね。




