15.規格外【4視点】
◆???◇
「さぁて、お遊びもここまでだな。」
「あぁ、もうすぐだ。」
ここまで、多くの時間を要した。
だが、これも全て、この褒美のため。
「それにしてもそんな身体でいいのか?フォーキン。」
「へっ。結構気に入ってるんだぜ?この身体。」
そう言ってフォーキンは、皇王の身体を私に見せつけた。
「だが、お前はその身体で一度表に出たんだろう?バレてないだろうな?」
「当たり前だ。まぁ、ヘンリ当たりは勘づいているかもしれないがな。」
――ヘンリ・カルロッテか。
「強いのか?あいつは。」
「そうだな。今の俺でも無理だ。」
ほぅ……。
フォーキンでもか。
「あの決闘で全てが終わる。それまでバレるなよ?」
「あぁ。…………だが、よくエレナと勇者を接触させられたな?勇者がエレナに執着しなければ、こうも上手くはいかなかったはずだ。」
「はっ。事前に吹き込んでおいたからな。」
あの女好きの勇者なら、少し吹き込めばそれだけで十分だ。
理想郷も、十分見せてやったわけだしな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆メラルダ◇
はい、とういうわけで……。
決闘当日が来てしまいましたっと。
「ほ、本当に行くんだよね?」
「メラルダ?」
これで負けたら、エレナさんが……。
「大丈夫。仮にあなたが負けても、エレナさんが私達を連れて逃げてくれるわ。」
「そ、そうだよね。」
大丈夫、大丈夫。
いつも通りにやればいい。
いつも…………通りに……。
「…………あなた、何を気にしてるの?」
「え、 いや…………私は…………。」
「もしかして、あなた、自分が弱いとか思ってる?」
っ――――!
「確か、アトキンス家の襲撃の時も」
――「………………え?」
――何があった?
「その後の、あなたの護衛が死んだ時も」
――……え…………。
――なんで……………………赤く……。
「あなたは死んでいたかもしれないものね。」
「………………それだけじゃないよ。」
それだけじゃない……。
私は…………私は…………。
「………………私は、この国に来て出会ったほとんどの人に勝てないと思う。」
「――――。」
ごめんね、シャーリィー。
私はもう…………。
――……………やめろ、もう死んでる。
誰かに勝てる、自信がないよ……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆リディア◇
決闘場には、多くのエルフ、そうして商人達が来ており、付近はお祭り騒ぎになっていた。
「皇主、メラルダは?」
「………………今になってきたのね。」
まったく……。
もう少し早く来てくれれば……。
「行ったわよ。今、係の人に連れていかれたところ。」
「そうか。…………ところで……何故、そんな顔をしている?」
そんな顔……?
「お前、今にも泣きそうな顔をしているぞ?」
「ぇ…………?」
泣きそう?
私が…………?
「な、何を言って……。」
「私がお話してます。実は――。」
そうして、シャーリィーはメラルダの現状を話した。
「そうか……。」
「はい。この戦いは、メラルダ様自身はもちろん、エレナ様やアトキンス英爵家全体の運命を左右する戦いです。責任を押し潰されそうになるのも、無理ないかと。」
確かに、それもそうだ。
でも……。
「違う。」
「え?」
「メラルダは、あの護衛のことを悔やんでいるんだと思う。」
あの時は私も、メラルダが自分の力に自信を無くしているだけかと思ってた。
でも、あの様子だと、多分それだけじゃない。
そして、シャーリィーに聞いた話だと、メラルダはアトキンス家を出る前まで、屋敷のメイド達によくあの護衛の家族の現状について聞いていたという。
それがもし、あのことを悔いていたからだとすれば……。
「悔やんでる?だが、あいつはあの時、憤ってはいても、悔やんではいなかったぞ?」
「決闘を前にして思ったのかもしれないわね。メラルダは実質、アトキンス家とエレナ殿を人質にとられているようなものだもの。」
「…………なるほどな。」
だから…………だからっ…………!
「そんな彼女の心情を、私はさっきまで気づかなかった。」
「それを、悔やんでいると?」
「………………まぁ、そうね。」
メラルダから事情聞いた時に気づくべきだった。
あの子がバチストの話をする時だけ、少し悲しそうな表情をしていたことに……。
「子供の心情一つ読み解けないなんて、皇主失格ね……。」
私が、一番近くにいた。
まだ短い付き合いだけど、それでも私の始めての友達。
そんな友達の心情さえ分からなかったなんて……。
「はぁ…………自惚れるなよ?」
すると、エレナ殿はそう言って私の頭に優しく手を置いた。
「お前も子供だ。その割には、よくやってる。」
「っ…………!」
「シャーリィーだけでは、ここまで気づかなかっただろう。…………よくやったな、皇主。」
◇◇◇◇◆◆◇◇◇◇◇
◆フォーキン◇
「では皇王様、こちらで少々お待ち下さい。」
「あぁ……。」
まさか、こうも順調に事が進むとはなぁ?
エレナの妨害も視野に入れてはいたが、どうやら全て奇遇だったようだ。
――コンコン。
「誰だ?」
「ドゥーセでございます。」
ほぅ、ドゥーセか。
奴もただのエルフの割には、いい手駒になってくれた。
まぁ、それも今日までだが。
「入れ。」
「失礼致します。」
しかし、そうして部屋に入ってきたのは、ドゥーセではなく、見た事もない青髪の女だった。
「ん?」
「いやぁ……。ここまで来るのは大変でしたよ………………なんちゃって。」
なっ……!
こいつ、ドゥーセの声をッ!
「それにしても、それで変装したつもりとは……。それくらいで騙せるなら、わざわざお姉様に頼る必要はなかったですね。」
すると、扉の向こうから別の女がそう言って姿見せた。
真っ黒の服を着こなし、髪を一つまとめた騎士のような女だ。
「無礼ものっ!私を」
「もういいよ、そういうの。悪魔なんでしょ?あなた。」
「なっ……!」
な、何故だ……何故バレているッ!!
俺はこいつらとは、会ったことすらないと言うのに……!!
しかも、この力が悪魔の力だということは、組織の中でも一部の者にしか知らされていない。
あのアトキンスだって知らないんだぞ!?
にも関わらず、何故こいつらは……。
「それにしても、皇王にまでなって、一体何がしたかったの?」
「聞くだけ無駄ですよ。」
そう言うと、黒髪の女はスっと腰に下げていた剣を抜き、剣先をこちらに向けた。
「さぁ、言い残すことはありますか?」
「ちっ……!」
やるしかねぇかッ!!
「ラ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!」
魔力を拳に集結させて、黒髪の女の顔面にぶち込む。
――ドガァァンッ!!
この俺の本気の一撃だッ!
例え避けたとしても、タダじゃすまねぇだろう。
それに、仮に無償であったとしても、この音を聞き付けて騎士が――。
「なっ…………!」
「幼稚ですね。」
しかし、気づけば女は首だけで拳を避けていた。
俺ですら、気づけないほどの速さで。
う、嘘だ…………。
俺の拳が、かすりもしてない?
それだけじゃねぇ……なんで、この部屋は無償なんだ?
「何故?と言った顔をしていますね?」
「っ…………!」
「そんなの簡単です。避ければいいのですから。」
避ける?
この近距離で俺の攻撃を避けただとッ!?
「こんな攻撃の余波なんて、そよ風と同じだしね。部屋なら軽く結界を貼ればいい。」
「有り得ねぇ…………有り得ねぇ有り得ねぇ有り得ねぇッ!!!」
何故だッ!!
初撃の攻撃は本気だったッ!
にも関わらず、自分だけではなく、結界で部屋を守っただと!?
ふざけんじゃねぇ!!!
この拳は、あの竜すら瞬殺する拳だぞッ!?
「…………ルミナ。」
「そうですね。私達も忙しいので。」
すると、女の持つ剣に異常なほどの魔力が集まっていくのを感じた。
それも、ただの魔力じゃねぇ。
周囲にただよう天然の魔力をだッ!!
だが、こいつが吸血鬼だとは思えねぇッ!!
なんなんだ、こいつッ!!
「――では、あとはお願いします。」
「うん。」
「は?」
気づけば、女の剣にある魔力は霧散していた。
まるで、もうすべてを終えたかのように。
黒髪の女は平然とそう言い残し、俺を殺さずに部屋を出て行った。
「た、たす」
「そんなわけないじゃん。」
「なっ…………!」
その瞬間、全身を激しい激痛が襲った。
身体が熱いっ!!
腹が痛てぇ!!
「っ…………!くそっ!」
反射的に後退し、自分の腹を確認すると、そこには貫通した一本の短剣が刺さっていた。
「舐めた真似をッ!!」
だが、これくらいすぐに再生を………………なっ!
「何故だ…………何故再生がッ」
「させると思った?」
あの剣に気を捕られて、全く気付かなかったッ!!
これは、聖属性がのった短剣ッ!!!
「くそっ…………。」
なぜだァ!!
なぜ、俺が…………こんなッ!!
「痛い?でも、自業自得だよね。」
「ク…………そっ…………。」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の投稿は2025年6月10日を予定しております。
また、誤字報告も合わせてお願いいたします。




