表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/81

07.精皇国【3視点】

◆メラルダ◇

 

「え、えぇ…………?」


 まさか、これで終わりなの?

 いやいや、そんなまさか。

 相手は勇者だもん!


 きっと、回復しようとしたのも普段の癖が出ただけで……。


「それで、勇者よ。どうするんだ?」

「ど、どうするって……。」

「続けるのか?」


 ん???

 なんでそんな当たり前のことを聞いてるんだろう?

 そんなの、続けるに決まって……。


「や、やめる!降伏するからっ!!早く回復をっ!!」


 る…………はず…………なんだけど…………。

 降伏しちゃったよ……。

 

「…………そうか。」


 その瞬間、私達を囲んでいた()()()()()()

 そして、回復魔法が勇者まで届く。


「ふぅ…………。よし!次こそ手加減は」

「お前、何を言っている?」

「え、何って試合を」

「決闘なら、お前の負けに決まっているだろう。」


 うーん。

 これって、天然ってやつなのかな?


「な、なんで……!君は、僕の仲間になりたくて……。」

「本当に愚かね。」

「なっ…………!」


 リディアさん?


「勇者ごときが、エレナ殿を本気で仲間にできるとでも思ったの?」

「餓鬼が何をっ…………!」

「少しは周りを見なさいよ。」


 え?

 周り?


 周りにいるのって…………。


「おいおい、マジでエレナ様を引き抜こうって思ってたのか?」

「嘘でしょ…………。それって、あのアトキンス家を敵に回すってことよね!?」

「こいつら、歴代の英雄達を敵に回す気か?正気じゃねーな…………。」

「あぁ。幾ら勇者様でも、これはさすがに……。」


 商人が……()()()()()()

 

「なっ…………!」


 その光景に、絶句する勇者。

 しかし、他の三人はさも当然といった様子で勇者を見ていた。


「な、なんで…………。」

「当然でしょ。だって、()()()()()()()()()()()()()。」


 わーお、辛辣ぅー!!


「な、何を言って……!」

「なら、あなたは彼らに何かしたの?」

「あ、当たり前だ!それこそ、俺達はさっきAランクの魔物を倒してきたばかりなんだからなッ!!」


 ――え?


「そう。ますます終わってるわね、この勇者。」

「っ…………!さっきからなんなんだお前ッ!!」

「今、精皇国では、犠牲になった騎士達の葬儀が行われているわよね?」


 あぁ!

 そういえば、エレナさんが道中話してた!

 確か――――――


 


「え?直ぐに面会できないんですか?」

「あぁ。恐らく、犠牲になった騎士の葬儀が行われているだろうからな。」


 犠牲……?


「犠牲は、出さなかったんじゃ……。」

「無論、私達は誰も殺していない。殺したのは、暗殺者ギルドだ。」

「なるほど、確かにすぐは無理そうね。それに、その後も精皇国は禁忌魔法の調査で忙しいだろうし。」


 


――――とか言ってたっけ。


「仮にそれが終わっていたとしても、騎士達は外に出る暇もないほどに忙しいはず。だから、多くの冒険者はギルドの要請に従って、遠くのダンジョンではなく、近くの森などに住む魔物を狩っているはずよ。騎士達の変わりにそれをすることで、少しでも民が魔物の被害に遭わないように。」


 要請とは言っても、多分これは任意だろう。

 そこまで緊急でもないし、冒険者全体に呼びかけるほどでもないだろうから。


 でも、確かにこの周囲にいるのは、私の見る限り商人だけ。

 商人を護衛している冒険者はいても、クエスト帰りの冒険者はいないと思う。


「でも、あなたが来た方向はベイリー王国側。その言い方的に、ベイリー王国と精皇国の間のダンジョンのどこかでしょう。そんな遠くの、緊急性の薄いダンジョンの下層の魔物を倒して、一体誰が喜ぶのかしら?」

「そうだな。まぁ、それは騎士の使命を疎かにして勇者に付き添っている、お前達にも言えることだが。」


 そうしてエレナさんが周囲にいる騎士達を見ると、騎士達ばビクッと震え、顔を青ざめさせた。


「まぁ、お前らに言っても無意味かもしれんがな。」


 そう言って、エレナさんは身を翻した。


「もう行きます?」

「あぁ。少しは暇が潰せるかと思ったが、無駄な時間だったようだ。」

「そうね。これならまだ精皇国を散歩していた方が、よっぽど有意義だったわ。」


 相変わらず辛辣……。


「おい、待てよ。」


 すると、勇者御一行のもう一人の男がエレナさんを呼び止めた。


「なんだ?」

「取引だ。」


 そう言って男は、懐から取り出した巾着をエレナさんに放った。


「取引だと?」

「その金は、俺の全財産だ。これで今日のことは黙っていてれないか?」

「ほぅ…………。」


 そう言ってエレナさんは、軽く中身を確認すると、一瞬笑みを浮かべた後、巾着を男に投げ返した。


「いらん。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


◆陽大◇


「クソっ…………!!」


 ――ゴンッ!!


「ちょっと……!」

「なんでだッ!!せっかく誘ってやったというのにッ!!」


 おかしいっ!!

 勇者パーティーに入れば、楽に大金を稼げるッ!!

 それだけじゃない!

 

 僕達勇者パーティのことは、あのドゥーセ伯爵が支援してくれているっ!!

 騎士達も貸してくれるし、お金だってくれるッ!!


 だからみんな、是非勇者パーティに入りたいと……!

 なのに…………なのにッ……!!


「相手が悪かったな、勇者さん。」

「………………どういうこと?」

「あいつはエレナ・モナンジュ。()()()()()()()にして、英雄王と呼ばれている。」

「なっ…………!」


 だから騎士達の様子がおかしかったのかッ!!


「そして、あのアトキンス家の団長でもある。」


 アトキンス家?

 英雄王とすら呼ばれた女が、今は一貴族の団長を?


「なんで……?」

「さぁ?そこまでは知らねぇ。」

「そうか。」


 でも、もしかしたらこれは…………。


「お兄ちゃん、しっかり伝わってないみたいだよ?」

「まぁ、いいんじゃね?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


◆シャーリィ―◇


「身分を証明するものはありますか?」

「これを。」


 関所の役人に、アトキンス家の紋章の入った手紙を渡した。


「これは…………アトキンス家の紋章ッ!?」

「はい。実は――――――。」


 そうして、私は簡単に事情を役人に説明した。

 勿論、暗殺者ギルドなどは伏せて。


「――――という訳です。」

「畏まりました。お連れの方も?」

「はい。団長もおられます。」

「なっ…………!」


 やっぱり、驚くわよね。

 この国で団長を知らないエルフなどいないでしょうし。


「ご確認なさいますか?」

「い、いえ、大丈夫です!どうぞ、お通り下さい!」


 一応聞いてみたけど、やっぱり役人は確認はせず、それどころか、手と首をぶんぶん振りながら断ると、そう言い残して、次の人の元へと向かって行った。


「やはり、確認はないか。」


 すると、背後の小窓が開き、中からエレナ様が声をかけてきた。

 

「はい。流石の役人も場所を選んだようです。」


 本当は、エレナさんの姿を見たくてたまらなかったでしょうに。


「それにしても、精皇国かぁ…………。」

「そういえば、メラルダ様は初めてでしたね、精皇国。」

「うん!」


 それなら…………!

 

「それなら、驚くと思いますよ?」

「え…………?」


 そうして、関所を抜けると……。


「凄い…………!」


 視界に写ったのは、街の中心を囲むように建てられた無数の建物。

 そうして……。


「あれはなんですか!」

「あれは世界樹ですよ!」


 昔から変わらない、街の中心から聳え立つ巨大な世界樹だった。


「綺麗……!」

「そうね。私も来るのは初めてだけど、まさか精皇国がこんなに発展してるなんて。」


 確かに、魔帝国の人が精皇国のことを知ってるはずないわよね。

 来たとしても、多分関所で追い返されるでしょうし。


「当たり前だろう。国っていうのは、発展競走ばかりするものだからな。」

「そうね。」


 本当に、悲しいことよね。

 他の国に勝つためなら、今までの文化を潰すことを厭わない。

 それが例え、()()()()()()()()だったとしても。


「このまま宿へ向かいますか?」

「あぁ、そうだな。」

ここまでお読みいただきありがとうございました。


次回の投稿は2025年5月30日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ