06.本当に勇者?【2視点】
◆メラルダ◇
「でも、こんな大勢の前で告白するのは凄いよね……。一目惚れかな……?」
まぁ、場所とタイミングは考えて欲しいけど……。
「ねぇ?メラルダ。」
「ん?」
「あの男の視線、どこ向いてると思う?」
「え?」
どこって、そりゃ顔に決まって………………………………………………………………………………。
「あー。」
「最低よね。」
下心をここまで隠さない勇者がどこにいるのよぉ……。
まぁ、ここにいるけどね?
「もういいか?急いでいる。」
「そうか!なら行こう!」
そう言って男はエレナさんの手首を掴んだ。
「「え?」」
い、今急いでるって言ってたよね?
そう思いながらリディアを見ると、リディアも困惑した様子で首を傾げていた。
「なんの真似だ?」
「ん?急いでるんだろう?」
ま…………まさか…………。
「あ!そうか!みんなが乗れるのかを心配しているんだね?それなら安心して!僕達の馬車は大きいからね!」
勝手に仲間にしてる!?
え!?
でも、エレナさんそんなこと言ってなかったよね!?
「ふざけているのか?」
「ん?急いでいるってことは、僕達と早く精皇国に行きたいって意味じゃないのかい?」
えー。
なんでそうなったの…………?
「そうか。お前はしっかり言わないと伝わらないタイプか。」
「うん?」
「私は、お前の仲間にはならない。そうして、お前達は邪魔だ。失せろ。」
お、おぅ…………。
気持ちは分かるけど……。
「え…………へ…………?」
「もう!何言ってんのよッ!本当にハルトが申し訳ありませんッ!!」
すると、奥から出てきた女が勇者?の頭を掴み、自分も一緒に頭を下げた。
「な、何をするんだ|チカッ!!ぼ、僕はただこの女性の勧誘をッ!」
「黙ってなさいッ!!」
うん、保護者かな?
でも…………。
「保護者連れの勇者パーティーなんて、聞いたこともないわね。」
「ぁ…………ぇ…………。」
い、言っちゃうんだそれ……。
「な、何だとッ!!この餓鬼っ!!」
「まぁ、まぁ、勇者さんよ。それで?やんのか?いつもの。」
「お兄ちゃんダメだよ!この人、お金とか権力で靡くとは思えないもんっ!」
すると、奥から茶化すような二人の男女の声が聞こえてきた。
兄妹かな?
「二人ともやめなさい!」
「良いじゃねーかチカ!この女、結構つえーぞ?」
「うん!勧誘相手は悪くない思う!」
ま、まぁ…………。
確かに、勧誘相手は悪くない…………のか?
「どうする?面倒くさそうだし…………逃げる?」
「いや?」
え、いや?って?
エレナさん?
「そうね。彼らに分からせてあげなきゃ。」
いやいや、なんでリディアまで!?
あなた関係ないよね!?
「分からせるだと!?この餓鬼ぃぃ!!」
「いいから!あなたは黙ってなさいッ!!」
あっちはあっちでなんかやってるし……。
「おい、そこの男。」
「え、あ、僕?な、何かな?やっぱり仲間に……」
懲りてないなぁ……。
そんなの無理に決まって……
「あぁ。」
る…………はず…………。
「な、何言ってるんですかッ!?」
「やったぁ!ならさっそく」
「ただしっ!」
そう言ってエレナさんは、突然私の手首を掴み、強引に抱き寄せてきた。
「ふぁ!?!?」
「お前がこいつに勝てたらな。」
「なっ…………!」
いやいややいやいやいや、はぁぁぁぁ!?!?!?
「何言ってんですか!?私、まだ完全に回復しきっては」
「まぁな。だが、あいつとの模擬戦の時くらいの力は出せるだろう?」
あいつって…………バチストのこと?
まぁ…………それくらいなら頑張れば出せるけど……。
「でも、流石に勇者相手でこれは……。」
「ふん、大丈夫だ。」
「で、でもアルカナもないし……。」
鎌もないし、身体はある程度回復したとはいえ、本気も出せない。
まぁ…………、アトキンス家に来てすぐに、エレナさんから
――完全回復には時間がかかるぞ?今のうちに、別の戦い方を考えておけ。
とは言われてたけど……。
「…………だがお前、あの護衛と模擬戦してたろ?」
「うっ………………。」
「それに、この間の任務もお前から参加したいと言ってきたよな?」
「ぅぅ…………!」
言ったけどッ!!
言ったけどさぁ!!!
「いいよ。僕はそれで。」
いや、私は良くないのっ!!
お前の意見は聞いてないのッ!!!
「で、でも私が負けたら…………。」
エレナさんがアトキンス騎士団団長やめちゃうってことでしょ!?
そうなったら、結構私ヤバくない!?
「そりゃ、マイルズ殿には怒られるでしょうね?騎士達にもなんて言われるか。」
「ぁ………………。」
無理無理無理無理無理無理ッ!!!
絶対っ、む
「そうか。なら、準備しろ。すぐに始める。」
無理だってぇぇえ…………!!!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆陽大◇
少女と対峙し、軽く声をかける。
「お嬢さん、手加減はしてあげるけど、怪我をしても泣かないでね?」
「うぅ…………。」
やっぱり子供だな。
アトキンス家と聞いて少し警戒していたが、それもどうやら無駄な心配だったらしい。
「さて、両者、準備はいいか?」
「うん!」
ん?
そういえば、この子は何の武器を使うんだろう?
見たところ持ってないようだけど……。
というか、アルカナはどこに……?
「いや、私アルカナが……。」
「よし!始めるぞ?」
え…………今、この少女のこと無視した?
っていうか、この子、もしかしてアルカナ持ってない!?
あー、なるほど!
分かったぞ!
この女騎士、僕の仲間になりたくて少女のアルカナをどこかに隠したのか!
そうかそうか!
そんなに僕の仲間になりたかったのか!
まぁ、確かによく良く考えれば騎士って、そう簡単に辞められる仕事じゃなさそうだもんね。
やっぱり、そういうのって建前が必要だし。
だから形だけとはいえ、主人に自分を託すことで、傍から見れば、主人が僕に負けたから、騎士をやめたっていう風にしたいのか!
なら、この勝負、負けられないな!
「ルールは、私が戦闘不能と判断するか、降伏した方が負けだ。当たり前だが、部外者の介入は禁止だ。いいな?」
「え、う、うん…………。」
「は、はい……。」
そっか……確かに決闘だから、みんなの支援は受けられないのか……。
まぁ、でも子供相手なら、僕の力だけで十分だろう。
「では、両者、構え!」
僕は剣を構え、少女は不安そうに拳を構えた。
「始めッ!!」
さて、とりあえず軽く小突くか。
腹あたりを蹴り飛ばせば終わるだろうし。
「え?」
あの子、どこいった?
さ、さっきまでは確かに前に……。
――ドンッ!
「っ…………!」
その瞬間、背中辺りから強烈な痛みが全身を貫いた。
痛い…………どうして?…………どこに?…………痛い…………何故?………………いつの間に?…………なんで僕が?…………痛い……痛い痛い痛いッ!!
苦痛のあまり、気づけば膝から崩れ落ち、大量の汗が地に滲んでいた。
「へ?」
すると、そんな気の抜けた声が背後から聞こえてきた。
「勇者…………?…………ん??やられたフリ???追撃するべきかな?」
クソッ…………!!!!
この餓鬼ッ!!
舐めやがってっ!!
で、でも、今僕が背後を取られたのは、僕が手加減をしていたからで……そ、そうだ!!
手加減していたからだッ!!
よく見れば、こんな餓鬼の動きなんて……!
「ふざけ痛ッ!!」
「ん?」
クソっ!!
背中が痛くて立ち上がれないッ!!
「そうだっ!回復っ!!美音、回復魔法をッ!!」
「う、うん!…………え、なんで??」
慌てた声で、叫ぶ美音。
「どうしたっ!?」
「と、とどかないのッ!!陽大まで、魔法がッ!!」
「なっ…………!」
魔法が届かない!?
そ、そんなこと、今まで一度も……。
「お前ら、ルールを聞いていたのか?」
「え…………?」
「部外者の介入は禁止だと。」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の投稿は2025年5月25日を予定しております。
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