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01.観察者【2視点】

◆バッティアート◇


「おぉ…………すげぇな、これは。」


 Sランクってだけでも滅多に見ねぇが、ここからでも感じるこの殺気。

 見習い騎士ならこれだけで死ねるぞ……。


 だが、こいつよりも先にやることがありそうだな。

 ったく、めんどくせぇ。


「おい、誰だそこにいるのは!」


 俺はそう言いながら、近くの木に向かって軽く剣を振った。


 ――キーン――――――ゴーンッ!!


「あ…………あっぶないわねッ!!殺す気ッ!?」


 そうして姿を見せたのは、変わった黒の着物を着た、一人の女だった。


 ん??

 ってか…………これりゃ女ってより…………。


「子供?」

「あ゛?」

「あ、いや…………。」


 おいおい…………マジかよ……。

 そんなに怒ることか?

 こんな物騒な殺気放ちやがって。


「イリス少将は二十歳ですよ、バッティアート様。」


 こいつ……いつの間に……!

 

「お前は…………。」

「カームネスの海軍に所属しています。アール・クリム少佐です。」


 ――カームネス。


 確かアウロラの国際治安維持組織だったな…………。


「それで?カームネスが、ここに何の用だ。」

「はい、この付近で禁忌魔術が観測されましたので、その確認に。」

「なっ………………。」


 それって…………まさか、魂移術かッ!?

 ってことは、成功しちまったのかっ!!


「まぁ、未遂に終わってはいるようですけどね。」

「それを先に言えッ!!」


 ってことは、防げたってことか。

 なら、あっちはもう大丈夫か。


「それで、あなた、こんな化け物を一人で殺る気なの?」

「ん?あー、そうだな。」

「正気?普通にSはあるわよ?こいつ」


 頭おかしいんじゃないの?と言った顔でこちらを見る女。

 

「失礼ですよ、イリス少将。この方はアトキンス騎士団一番隊隊長の、あのバッティアート様なのですから。」

「あー、バッティアートってあの!」


 すると、「へー、このおじさんが……。」と興味深げにこちらをじろじろと眺めてきた。


「うーん。でも、それならこの人にもついてきて貰わなきゃね。」

「あ?だから俺にもやることが……。」

「何言ってるのよ。あなた、自分の立場分かってる?」


 た、立場って言われてもなぁ……。


「私達からして見れば、あなたも容疑者の一人なのよ?」

「はぁ?」

「仕方ないでしょ?まだ状況が分からない以上、ここら辺にいる人達はみんな容疑者にするしかないんですもの。」


 無茶苦茶だな、この女!


「そうですね……。イリス少将の言う通り、バッティアート様にもついてきて頂く必要があります。」

「おいおい、まじかよ……。」

「国際法違反ですからね…………同盟国である以上、見逃す訳にはいかないんですよ。」


 まぁ…………そこら辺はよく分からんが……。


「なら、こいつはどうするんだよ?」

「あー、それがあったわね……。」


 あったわねって…………。


「んー。あ、そうだ!レベッカにやってもらいましょう!なんせ彼女は、代行官なのだし!」


 ――()()()ッ!!


 ってことは、鬼も来てんのかッ!!


 …………なら、ここは素直お願いするべきか?

 というか、リシェと会ったりしたら…………普通に周辺更地だな……。


「代行官はそういう意味ではなかったはずですが……。」

「よし、そいつにまかせようッ!!」

「「え……?」」

「それで確定だッ!!よし、戻るぞ!さぁ!着いてこいッ!!あ、念話でしっかりその鬼にも連絡しておけよ??いいな!?」

「「え、えぇ(はい)……。」」


 よしっ!

 これである程度時間は稼げるはずッ!!

 そのうちにさっさと犯人突き出して帰ってもらおう!


 っていうか、それしかないなッ!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


◆エレナ◇


「それで、その代行官に全てを任せてここまで来たと。」

「あぁ。」


 まったく、サーシャを連れて帰ってきたらすぐこれとは……。

 休む暇もないな。


 それにしても、アウロラの代行官か。

 まぁ、禁忌魔術が使われる以上、来ないことはないとは思っていたが、まさかこれほど早く到着するとはな。


「初めまして、エレナ様。私はアウロラのカームネス海軍所属、イリス・ロミ少将と申します。」

「同じく、アール・クリム少佐です。」


 そう言って、二人は礼儀正しく頭を下げた。

 まぁ、バッティアートがそれを見て不服そうにしている当たり、こいつにこのような挨拶はなかったんだろうがな。


「自己紹介は不要か。なら、要件を聞こう。」

「はい、この付近で禁忌魔術の使用を確認しましたので。」

「なるほどな。」


 だが、それでもこれ程早く到着できることはないだろう。


「これで二度目か?」

「はい。」

「あぁ?二度目ってなんだ?」

「……多分………………試し打ち…………した。」


 疑問符を浮かべるバッティアートに、エリが分かりやすくそう答えた。


「試し打ちだぁ?」

「あぁ、これは魔道具だからな。試しに誰かを殺して、機能するかを確かめたんだろう。」

「なるほどなぁ……。」


 だから、この付近で事前待機でもしていたのだろう。

 次禁忌魔術を観測した時、すぐに現場に向かえるように。


「あの……この子は?」


 すると、イリス少将がそう言って、興味深げにエリの方を見た。


「あぁ、こいつはエリ。三番隊隊長だ。」

「ではこの子がっ!」


 すると、興奮した様子でイリス少将はエリの方へと駆け寄ると、その両手を握った。


「クラメン様からお聞きしましたよッ!なんでも、暗器なら何でも使えるとか!!」

「は、はぁ……。」

「私、ずっとお会いしたかったんですッ!」


 クラメン?

 あー、そう言えばあいつら、ウィリーらの護衛としてアウロラに行ってたな。


「お前、クラメンと知り合いなのか?」

「はい!この前は剣を教えて頂きました。」


 ほぅ……。

 あいつが人に剣を教えるとは……。

 自分はほぼ使えない癖に。


「なるほどな。」

「はい!ウィリー様とエリアナ様もお元気でしたよ!中等部の方に体験入学をされておられるようですが、そうとは思えないほどにご立派で……。」

「ゴホンッ!イリス少将、仕事中です。」

「あ……。」


 すると、イリス少将はあからさまに「ゴホンっ!」と咳き込んだ。


「えーと、それで、禁忌魔術の使用者は……。」

「あぁ、こいつらだ。」


 そう言って、私は近くに転がしていた三人に視線を向けた。


「彼らが?」

「あぁ、このペンダントでな。」


 そう言って、私は預かっていたペンダントを手渡した。


「なるほど。……………………確かにこのペンダントには魂移術の術式が刻まれてきますね。」

「ほぅ……。術式が分かるのか?」

「はい。少将以上の階級の者は知らされていますので。」


 成程な。

 まぁ、ここまで来て禁忌魔術の見分け方が分からんでは話にもなるまい。


「では、この二人を。」

「えぇ、連行して。」

「はっ!」


 アール少佐はそう言うと、二人を連れてその場から消えた。


「転移か。」

「はい、あいつはこういう芸当が得意なので。」


 少佐で転移が得意とは、将来有望だな。


「では、精皇国と魔帝国には、後日向かわせて頂こうと思います。」

「もう一つあるわよ、イリス少将。」


 すると、突然蝙蝠がイリス少将の背後に群がった。


「…………敵…………?」

「いや、違う。」


 そういえば、この付近の管轄は()()()だったな。


「久しぶりね、エレナ。」


 その蝙蝠達は互いに密着し、やがて溶けるように人の形を作り始める。

 そうして、それは次第に人の姿となった。


「あぁ。久々だな、レベッカ。」

「まさかこんなかたちで再開するとは、思いもしなかったわ。」


 そう言って、レベッカは来ている漆黒のドレスを軽く払うと、キッっとバッティアートを睨んだ。


「まさか、到着してそうそう面倒事を押し付けられるなんて思いもしなかったしッ!!」

「俺のせいじゃねーだろっ!」


 バッティアートは反抗したが、レベッカは「ふん」っとそっぽを向くと、そのまま私に向き直った。


「まぁ、それはいいわ。それで、イリス少将。あなた、ベイリー王国が抜けてるわよ。」

「え、でもこれは精皇国と魔帝国の戦争よね?」

「でも、ならどうしてここにベイリー王国のアトキンス家がいるのかしら?」

「………………確かに……。」


 まぁ、そうなるよな。


「説明してくれるわよね?エレナ。」

ここまでお読みいただきありがとうございました。


次回の投稿は2025年5月1日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

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