45.収束【3視点】
◆エリ◇
「もう大丈夫……ですよ。」
みんなを見渡しながら、私はそう言って笑顔を見せた。
「本当ですか?どこか痛くありません?」
「お怪我とか、まだ痛みません?」
「私がおんぶしましょうか?」
あの後、カルメと一緒にいた私のもとに、一番隊の人達が来てくれた。
そうして、私は彼らに連れられて、こうしてエレナさんのもとまで来たんだけど……。
「本当に大丈夫?」
「まだ休んだ方がいいんじゃ……。」
私隊長のはずなのに…………心配されすぎじゃない……?
そんなに弱く見えるかな、私。
「いい加減にして下さいッ!!」
すると、突然私の周囲にいた人達を、カルメがそう言って強引に引き離した。
「エリ隊長のことは私に任せて下さいッ!!お、お、おんぶも、わ、私がしますッ!!」
?
なんか緊張してる?
「そ、そうでしたか。」
「それは失礼。」
「うふふ、そのままいい感じに……。」
「なッ………………!」
そうして、一番隊の人達は何かこそこそと話しながら、またダンジョンの方へと戻って行った。
「思ったよりも早かったな。」
「だ、団長っ!?」
「…………お疲れ様、…………団長。」
カルメが慌てて姿勢を正す中、私は男が転がってる方を指した。
「あれ…………キモかった。」
「あぁ。奴と同じような能力の奴と、マイルズが戦っていた。」
え?
それって、大丈夫なのかな……?
「もう終わったがな。」
あ、終わったんだ。
「怪我とか…………なかった?」
「あぁ、軽く肘を擦りむいた程度だ。」
「凄い…………!」
「あれでもアトキンス家の当主だからな。」
いや、あれって…………。
「サーシャお嬢様の方も………………終わった?」
「そっちはまだだが………………探知は使うなよ?まだ回復しきってはいないんだからな。」
「うん。」
私の探知は、団長でも届かない位置まで逃げられた時のために温存しておこう。
今の私、魔力ほぼからっぽだから。
「ん?」
「………………?」
「こいつは………………。」
「……どうしたの?………団長。」
もしかして、上手くいかなかった?
「安心しろ、サーシャは無事だ。」
「?」
「……まぁ、ちょっと懐かしい奴を見つけてな。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆ アヴァ◇
「ったく、どうなってんだッ!!」
「………………。」
黒雲から少しずつ離れながら、ペンダントを睨む。
少し前までは、順調に魔力が溜まっていた。
なのに…………なんで急に魔力が途絶えたんだッ!!
「アタヤ…………。」
「ったく、あいつまさかやられたんじゃねーだろうなッ!!」
だとしたら、まずいぞっ!!
魔力が集まらなければ、魂移術なんて使えるはずがないッ!!
それどころか、このままじゃアトキンスの奴らに俺らが殺されちまうッ!!!
「ったく、なんかいいアイディアはねぇのかっ!!」
「あるわよ、いいアイディア。」
なっ!!
この声…………まさかっ!!
「はぁ…………。急にエレナが乱入してきたから何事かと思って来て見れば、まさかこんなことをしていたなんてね。」
――ヘンリッ!!
皇族直属の騎士団、フォレスト・ナイトの騎士団長ッ!!
「な、なんであなた様がここに…………。」
「ちょっと知り合いに会いにね。…………まぁ、変なもん拾ったけど……。」
そうして、ヘンリは一人の女をこちらへ放った。
ん?
…………こいつは……。
「アタヤッ!!!」
「なっ…………!!」
おいおい、マジか……!
ってことは、魔力が急に途絶えたのは……。
「まったく、部下に同族殺しをさせるなんて、何を考えているのかしら?それにこの子、まるで魔物みたいだったわよ?」
「なっ、なにを…………!」
「だってこの子、腕を切っても脚を切っても、すぐに再生したのよ?こんな芸当、普通のエルフにできると思う?」
「それは………………。」
男の部下が言葉を失う。
その理由は、ヘンリの発言を裏付けるように、ここを離れた時の女の容姿と今の容姿が、少しばかり異なっていたからだ。
特に足の色など、まるで魔物のような色に変色している。
おい…………だんだそれ……。
足と腕が再生した?
そんなの、まるで魔物じゃねーかッ!!
ん?
だとしたら…………。
「あなたの部下、どうなってるの?」
「さぁ?」
「え……。」
固まる男の部下を無視し、俺は話を続けた。
「確かにそいつは俺の部下ですが、そんな能力は知りませんでした。つまり、こいつは魔帝国からの密偵だったんですよッ!」
「な…………なにを……。」
「………………。」
そうだッ!!
そんな能力、エルフに使えるはずがねぇ!!
こいつが何者だったかなんてこの際どうでもいいッ!!
今はこいつから逃れなければッ!!
「なるほど、確かに魔帝国からの密偵なら理解できるわ。………………でも、あなたがその子を連れているのは何故?」
「こ、この子って…………。」
「あなたの騎士が抱えている子よ。その子、どこからどう見てもアトキンス家の子でしょう?」
「なっ………………!」
な、なんでバレてんだよ…………!
この二人以外の部下には、こいつは戦場で拾った子供だと伝えていたはずなのに……!
「まぁ…………、その子をどこで拾ったのかは、今は聞かないわ。とりあえずその子と、そのペンダントをこちらに渡しなさい。」
「ペ、ペンダントも…………ですか?」
な、なんでペンダントのこともバレてんだよ……!
「早くしてくれる?」
「ぁ………………いや…………」
「時間がないんだけど?」
っ………………。
くそッ!!
命には変えられないかッ!
そうして、俺は娘とペンダントをヘンリに渡した。
「ありがとう。」
「団長、確認が取れました。」
その時、いつの間にかヘンリの背後に、一人の騎士が立っていた。
「なっ…………。」
その騎士は、何かをヘンリに耳打ちし終えると、すぐにその場から消えていった。
そうして耳打ちをされたヘンリは、呆れた様子で溜息を吐いた。
「残念ね。あなたの屋敷から、その子のものと思われる毛髪が出てきたわ。そうして調べてみたら、一ヶ月ほど前にアトキンス家の次女、サーシャ・アトキンス様が誘拐されていたことが判明した。」
「ッ――――!」
「…………やってくれたわね。」
この短時間でそこまでッ!?
「おいっ!逃げるぞッ!!」
「なっ!」
「聞いてなかったのかッ!!早く俺を連れて転移しろッ!!」
「で、ですが…………。」
っ…………!
こいつ…………俺よりもこの女かッ!!
使えねぇッ!!
「もういいッ!!」
なら、せめて俺だけでもッ!!
「逃げられると思っているのね。」
なにか、逃げる場所は…………あっ!
あの黒雲!!
眠っちまうかもしれねぇが…………ここで死ぬよりかはマシかッ!!
「テレーズ・アヴァ。国家転覆未遂で、あなたを死刑に処す。」
そうして、俺は黒雲に走った。
っ………………!
早く、早くッ!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆エレナ◇
「エリ、少しここで待っていろ。」
「…………?」
「サーシャを連れてくる。」
そう言って、私は目的地に転移した。
そこは、なにもない森の中。
戦場から少し離れた、精皇国の近くだった。
「ここまで私を呼ぶ必要があったのか?ヘンリ。」
「ふふ、やっぱり凄いわね、エレナ。」
そうして、森の中から出てきたのは、懐かしい赤色の長髪をした一人のエルフの女騎士だった。
「この子でしょ?あなたが探してたの。」
「そうだが…………まったく。今頃フォルジュは焦っているだろうな……。」
「え…………嘘…………。」
「当たり前だろ…………。」
やっべ……といった様子で固まるヘンリ。
そんなヘンリから、私は無言でサーシャを受け取ると、軽くその額にデコピンをした。
「いて……。」
「大丈夫だ。あいつには私から言っておく。」
「あ、ありがとう…………。」
「それで、こいつらもか?」
そう言って、私は近くに転がっていた三つの死体を見据えた。
「えぇ、主犯よ。」
「そうか、ありがとな。」
すると、「あっ!」と何かを思い出したのか、急にゴソゴソと懐に手を入れると、「これ。」と言って私に一つのペンダントを差し出した。
「これ、こいつが持ってたの。」
そう言って、ヘンリは死体の中の一人を指した。
「これは…………。」
「何かの魔道具ね。」
「…………………………そうか。」
危なかったな……。
もう既に半分以上は魔力が溜まっている。
「ありがとな、ヘンリ。」
「あの………………!」
「ん?」
すると、ヘンリは突然悲しそうな様子で呟いた。
「も、戻って来る気は……ないのよね?」
「あぁ、すまないな。」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の投稿は2025年4月28日を予定しております。
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