44.冷酷【3視点】
◆バッティアート◇
――エリとその部下が喜びを分かち合う中、そこから少し離れた草むらにて。
「な?言っただろう?」
「………………は…………はい。」
ったく、やっぱり勝ってんじゃねぇか。
こいつらに言われて渋々ついてきたが、来て損したぜ。
「ですが、何故脇を刺されると分かったんですか?」
「何となくだよ、なんとなく。」
それによ、なんでこんなにこそこそする必要があるんだ?
普通に行けばいいのによ。
「やっぱり、あの二人いいよね……!」
「あぁ。カルメさんが多少年上ではあるが、そこもまた……。」
「えぇ!!百合カップルもありね!!」
ったく、本当に何を言ってんだ……。
「さて、俺は行くからな。」
「あ、そういえば団長から頼まれましたものね。」
「そう言えばって…………こっちが本命だぞ、まったく。」
そう言って俺は、一様エリにはバレないよう、静かに草むらから抜け出した。
まぁ、エリはとっくに気づいているだろうがな。
「ダンジョンから出た魔物はあらかた片付けた。」
「エリちゃんがですよ?」
「分かってるわッ!!ったく、………………お前達はここに残って、エリ達の看病をしてやれ。」
「お一人で行かれるのですか?」
「当たり前だ。」
そんな浮かれた状態のお前らを連れて行けるかってんだ!
………………それに、巻き込んじまうかもしれねーからな。
「危ないですよ?隊長。もう歳なんですから。」
「なら、エリを送り届けてから遠巻きに見ておけ。軽い怪我くらいはするだろうからな。あと、あの男もしっかり連れてけよ?…………まだ生きているかもしれないからな。」
「へ…………?」
「冗談だ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆???◇
ったく、なんだあの黒雲は!
何かの魔法か!?
だが、それにしてはさっきからペンダントが殆ど反応しないッ!
「た、大変ですッ!!」
すると、騎士の一人が慌てた様子でこちらにかけてきた。
その様子はやけに切迫していて、こちらに来るやいなや、こいつは大声で叫んだ。
「あ、アトキンスですッ!!アトキンス家が戦争に介入してきましたッ!!」
「「「なっ………………!」」」
アトキンスぅ!?
アトキンスだとぉ!?
何故奴らがここにいるっ!?
彼奴らの話では、エルフってことしか知られてないはずだッ!!
アトキンス領は多種族が集う場所。
にも関わらず、何故こうも早く…………っ!
「それは間違いないのか?」
「は、はいッ!」
男の部下がそう問いかけると、騎士は何度も首を縦に降った。
「不味いですね…………。」
この返答に、女の部下も顔色を変える。
あいつらが裏切ったのか?
だが、あいつらの目的を考えれば、ここで裏切るとは思えないッ!!
ってことは、マジで自力でここまで辿り着いたってのかよッ!!
「くそッ!!まだ戦争のせの字も始まっちゃいねぇってのにッ!!」
この小娘さえいれあれば、皇帝にだって負けやしねぇっ!
そうなれば、俺の家だって建て直せるッ!!
あと少し、あと少しなんだッ!!
「撤退しましょう、旦那様ッ!!」
「うるせぇッ!!」
そう言って、俺は男の部下を殴り飛ばした。
「くっ…………!」
「だ、大丈夫ですか!?団長ッ!!」
「ったく、くだらん事を言うなッ!!」
こんなところで終わる訳にいくかッ!!
何か策を………………ん?
その時、ふと目に止まったのは、先程の黒雲。
「おい、お前。」
「は、はいっ!」
すると、騎士は飛び跳ねるように立ち上がると、ピンと背筋を正した。
「あの黒雲はなんだ?」
「あ、あれはアトキンス家の者の魔法かと。どうやら、触れた者を眠らせる効果があるようで。」
「眠らせる?」
殺すのではなく?
「もしかしたら、こちらの作戦がバレたのかもしれません?」
「な、なにを」
「死体なければ、移魂術に必要な魔力が集まりませんから。」
女の部下は、冷静にそう言うと、ニヤリと笑った。
「旦那様。私に一つ、いいアイディアがあります。」
「いいアイディア?」
「はい。殺すんです!眠っている奴らを!」
眠っいる奴らを殺す?
確かにそれは……………………ん??
「待て待て、お前、まさか俺に同族殺しをしろと言うのかッ!?」
「いえ、それは私がやります。」
「なっ…………!」
「旦那様は、ただこちらで私の帰りを待っていて下されば良いのです。」
だが…………それは。
「待て、アタヤッ!!それは」
「いいの、ルーズ。これも全て、お家復興の為よ。」
「だがっ………………。」
俺の部下が………………同族殺し?
ふむ………………………………………………………………。
――まぁ、何事にも犠牲はつきものか。
それは、部下も例外ではないのかもしれん。
「いいだろう。行ってこい!」
「だ、旦那様ッ!!」
「はいっ!」
男の部下が大声を上げるが、しかし、女の部下は力の籠った返事をすると、「お願いね。」と男の部下に小娘を預け、黒雲向けて走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◆メラルダ◇
「先程は無礼を働いてしまい、申し訳ございませんでした。」
「いえいえ……。」
いや、本当にアトキンス家の人じゃないしね……。
「ったく、それにしても、そんなオリビア夫人に似た髪をして、無関係は無理あるだろ…………。」
「そんなこと言われても……。」
はぁ…………。
馬車に乗せてもらえたとこまでは良かったんだけどなー。
しかも無料だし。
たださぁ………………。
「殿下、お言葉にはお気おつけを。」
「分かってる……。」
まさか、王族の馬車に乗ることになるなんてなぁ……。
「ん?なんだ?乗り心地悪いか?」
「いえ、全然。」
寧ろ今まで乗った中で一番かも…………。
そんな馬車求めてなかったんだけど。
「そんで、一度戻ってから転移で行くってことでいいのか?」
「はい…………ですが、いいんですか?」
正直、めちゃくちゃ助かる。
転移なら、多分間に合うし。
でも、そんな余裕あるのかな?
「おいおい……、まさか迷惑とか思ってんのか?」
「そりゃ…………。」
「お前…………。」
え、何。
なんでそんな呆れた目で見てくるのさ、この坊ちゃん。
「大丈夫ですよ、メラルダ様。今出ている騎士は、全体の半分だけですから。」
「え…………。」
あ、あれで半分?
結構いたと思ったけど……。
「あったりまえだ!王国騎士団舐めんな!」
舐めてないしっ!
知らなかっただけだしっ!
っていうか……。
「私の名前…………。」
「あぁ!ギョーム様からお願いされたのですよ。メラルダ様を戦場までご案内して欲しいと。まぁ、ギョーム様もエレナ様からお願いされたらしいのですが。」
「あはは………………そうですか…………。」
全部お見通しってわけね…………。
「ってかよ、よく変装もせずに歩けるよな、お前。」
「え?」
「お前、前にアトキンス英爵達と王都に来ただろ?」
「え…………あ!」
もしかして…………。
「その容姿だしな。お前がアトキンス家の隠し子じゃないかって、今じゃ王国中にまで広まってるぜ。まぁ、まさかそんな奴が一人で堂々と歩いているとは、誰も思わなかったみたいだがな。」
だよねぇ…………。
そういえば、こそこそと話してる人いたし。
「それにしても、お前本当に似てるよなぁ……。」
「殿下っ!」
「いや、分かってる!分かってるんだが…………お前本当に血縁者じゃねぇんだよな?」
「はい。」
ってか、例えそうだったとしても、素直に言うわけないでしょ!
「そうか…………。」
「殿下が失礼を。」
「いえいえ。」
まぁ、これくらいの歳の子供はこんなもんだよねぇー。
ん?
でも、この子って見た感じ、歳は私と同じくらい?
ってことは…………カリーナとも……。
「にしてもよ、アトキンス家もすげぇよな。」
「それはアトキンス英爵家に失礼ですよ。」
「分かってるよ。」
ん?
何が?
「おいおい、お前知らねぇのか?」
「いや、知らないですけど……。」
「マジか…………お前アトキンス家なんだよな?」
「違いますけど……。」
「似たようなもんだろっ!」
「殿下、失礼ですよ!」
だからずっと違うって言ってるのに……!
「なんの事です?(イラっ)」
「わ、悪かったって……。」
「それはいいですら、何の話です?(イラッ)」
「怒ってんじゃねぇか…………。」
怒ってないしっ!
いくらカリーナと比べて話が通じなさすぎるからって、イライラしてないしッ!
「殿下が申し訳ありません。そして、殿下が仰っているのは、恐らくアトキンス家の方々が、サーシャお嬢様の救出に総出で当たっているからですよ。」
「へ?」
総出?
それの何がおかしいんだろう?
「アトキンス家の方々が総出で任務にあたることなど、そうありません。バッティアート殿やエリ殿はともかく、リシェ殿や英爵様まで動くのは私も初めて見ました。ましてや、使用人の方々まで動くとは……。」
「まぁ、シャーリィーは強いですからね。」
「いや、シャーリィーだけじゃねぇーぞ?他の奴らも全員だ。俺ですら初めて見る奴らも数人いたしな。」
「え……。」
みんな…………?
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の投稿は2025年4月24日を予定しております。
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