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42.影の戦い【3視点】

◆エレナ◇


「三番隊より、バルムンクの封印が解かれたと連絡が。また、スタンピードの予兆もあるそうです。」

「そうか……。」


 ()()()()

 あの封印は緩んでいたからな。

 まぁ、それでもあと数年は破られないはずなんだが。


「フォルジュを急がせろ。マイルズは手が離せないらしいからな。」

「了解っ!」


 これで、どこまで被害を減らせるか…………。

 

 サーシャに関しては、フォルジュに任せて問題ないが、マイルズは………………。

 まぁ、当主ならこれくらい出来て当然だな。


「さて、バッティアート。いけるな?」


 周囲の部下達が忙しなく動く中、唯一背後で戦場を見すえている男に、私はそう問いかけた。

 

「ったく、急に呼び戻しやがって………………それに、俺はもう歳だぜ?」


 そう言って、バッティアートはあご髭をさすった。

 しかし、その表情は言葉に反して、まるで玩具を与えられた子供のように昂っている。

 

「だが、お前はこっちの方が得意だろう?」

「まぁな。」


 そうして、バッティアートは戦場とは逆の、エリが今奮闘しているであろう方向を見つめた。


「エリは?」

「用事を済ませてから合流するそうだ。」

「そうか。」


 バルムンクの傾向から、恐らく奴はすぐに外には出てこない。

 そして、恐らく封印を解いた奴は、しばらく出入口付近に留まっているはずだ。


 流石にバルムンクが出てくるまでには撤退するだろうが。

 それだけの時間があれば、エリは見つけだせるだろう。


 ――問題は、エリがそいつに勝てるかだが…………。


「バッティアート。」

「ん?なんだ?」

「お前のところの者を数名、エリの元へと向かわせろ。」

「おいおい、あいつも一様隊長だぞ?」

「念の為だ。」


 エリは確かに強い。

 環境さえ揃えば、この私ですら追い込めるほどに。

 だが、それはあくまで環境が揃えばの話。

 恐らく奴らとの戦いで、それが揃うことはないだろう。


 私の意図を察したのか、バッティアートは大きな溜息を吐いた。


「過保護な気もするが…………分かった。ルルミルと他数名を向かわせよう。」

「悪いな。」

「団長の懸念も分かるしな。こんなところで万が一があってはならない。」

「あぁ、そうだ。」


 あぁ、こんなところで、同じ事を繰り返す訳には行かない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


◆???◇


 ――まずい、まずいまずいまずいッ!


「ッ――――!!」


 無数に迫る糸を避け、木の陰に隠れる。

 そして、俺がここに隠れたら――。


「はぁっ!」

「チッ!」


 やっぱりくるよなっ!!

 短剣使いッ!!!

 

 女の短剣を篭手で受け止め、そのまま身体を回転させることで背後から迫る糸を避ける。


「はぁ…………はぁ…………。」

「流石…………暗殺者ギルド………………強い。」

「まぁな。」


 息切れすらしてねぇ奴には言われたくないわ!


 この女の短剣もヤバいが、この糸使いは本当にヤベぇッ!

 

 糸は生きるかのように俺を追尾し続けてくるし、切ろうとしたらこっちの刃がダメになっちまう!

 おまけにこいつ、ただ突っ立ってるように見えて、全く隙がない!


 これがアトキンスッ!

 フローレスですら手を出せない化け物共かっ!


「でも…………捕えなきゃ。」

「はは……余裕だな。」


 殺すのではなく、捕らえるか……。

 舐められてる気もするが…………これが、俺にとって唯一の希望かもしれないッ!

 バルムンクがダンジョンを出れば、こいつにも流石に隙ができるはず。


 問題はそれまで生き延びられるかだが……。


「…………そうでもない…………よ。」

「くっ…………!」


 高速で迫る糸を避けつつ、背後から迫る女の短剣を間一髪で受け止める。

 ってか、()()()()()()()()()!?

 それに、この短剣の女の動きも、段々早くなってるような……。


 だが…………まだギリギリ避ける余裕はある。

 このまま持ちこたえられればッ!


「隊長、もうそろそろ。」

「…………うん。………………そうだね………………。」


 ――ゾワッ!


 その瞬間、脳内が警鐘を鳴らした。

 全身を貫くような悪寒が走り、身体を動かそうにも、まるで生まれたての子鹿のように、上手く足が動かない。

 

 な、なんだこれ……。

 威圧?


 いや…………これは………………()()かッ!


「…………仕方ない…………か………………。」

「はい。この男にかけていい時間は限られていますから。」


 気づけば、短剣の女の雰囲気も、まるで先程とは別人のようになっていた。

 今のこいつらは、どう見ても俺より格上ッ!

 糸の女以前に、この短剣の女一人だったとしても、全く逃げられる気がしないッ!

 

 Sランクの魔物で気を引く?


 ふざけるなッ!

 隊長格ですら、こんな化け物なんだっ!

 そんな化け物が二人もいる戦場にこいつを投じても、気なんて引けるはずがないッ!


 更に、あそこにはあのエレナがいるっ!

 こんな化け物以上の力を持つエレナの気を、果たしてこいつはどれだけ引けるか……。


 いや、もしかしたらエレナは気にも止めないかもしれないが。

 

 俺は………………俺らは………………踏んではいけない虎の尾を踏んでしまったんだッ!!!


「はは………………俺も捨て駒か?」


 あいつは、ここまで予想して俺らを動かしていたってのか?

 全ては、ただのお遊びの為に。

 

 …………ったく、人の命をなんだと思ってんだ。

 まぁ、俺も人のこと言えねぇけど。


「まぁ…………それでも…………抗ってみるか。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

◆エリ◇


 雰囲気が変わった?

 それに、魔力もおかしいような…………。

 

「隊長ッ!こいつ、何か変ですッ!」

「仕留めるっ………………!」


 糸先程の倍まで増やし、男の心臓を狙う。

 勿論、殺す気で。


 しかし……。


「はぁ…………まさか、こんな力に頼ることになるとは……。」

「「なっ…………!?」」


 私の糸は全て、男の手をよって受け止められた。

 ただの糸じゃない。

 魔力で強化した上に、高速の微細な振動によって、触っただけで鉄ですら切り裂ける糸をだ。


「なに…………この気配…………。」

「人?………………いや、これってまるで…………。」


 ――()()


「はぁ…………。こんなんなら、最初からやっとけば良かったっ!」

「――――っ!?」

 

 その瞬間、反射的に身体が動き、こちらに飛来した何かを避ける。

 しかし、それは私の頬を掠め、そのまま背後の木に突き刺さった。


「くないっ!」

「あぁ、そうさ。俺は忍者だからなぁ。まっ、どちらにしろ、こんな対面勝負なんざ本業でもなんでもないんだが。」


 すると、男はどこからか大量のくないを取りだした。


「生きるためだ。少し痛い目見てもらうぜ。」

「…………くそっ!」

一つ一つ

 そうして高速で飛来するくないを、一つ一つ糸で切り落とす。

 一つ………………四つ………………十二………………っ!!


 ダメ…………キリがないッ!!


「逃げてカルメッ!!!」

「し、しかしッ!!」

「ここままじゃ、防ぎきれないッ!!」


 私は糸を触手みたいに使ってるから、この本数のくないもなんとか防げるけど、カルメは違うッ!

 というより、多分私が攻撃に転じたら、カルメがっ!!


「早くッ!」

「っ――――!」


 すると、「すみませんっ!」と一言残し、カルメは団長のいる戦場の方へと駆け出した。


「逃がすと」

「させないッ!!」


 脳を焼き切れんばかりに高速回転させ、動かす糸を更に増やす。

 そうして、その糸の一本が、男の()()()()()()()()


「よしっ!……………………っ!!」

「油断したな。」


 お、お腹が………………あつ………………何が…………。


 そうして脇腹の方を見ると、そこにはくないが深くまで刺さっていた。


「嘘…………どこから…………。」


 男からは目を離していない。

 ってことは、第三者?

 いや、そんな気配はどこにも…………。


「まさか………………。」


 そうして、私は先程切り落とした腕を見た。

 本来、動かないはずの腕。

 しかし、地面に転がっていたそれは、まさに今何かを投擲したような形をとっていた。


「便利だよな、これ。ゾンビみたいだ。まさか、本当に弱点以外が弱点じゃなくなるなんてなぁ?」

「っ…………!」


 脇腹を押えつつ、糸を構える。

 しかし、怪我のせいで動かせるのは、先程までの半分以下にまで減少していた。


「アトキンスの隊長様も、こんな人の皮被った化け物は見た事なかったか。」

 

 男はそう言いながら、切れた腕を拾い、まるで初めからそうであったかのように、腕を元の位置にくっつけた。


「きもすぎ…………。」


 くそ…………。

 

 勝てたはずの相手。

 いくら強化されようと、格下のはずだった。

 なのに、こんな一撃で形勢が逆転するなんてッ!!


「いいか?お前も俺と同じような人間だろうから教えてやるよ。人族ってのはな、ズルをしてでも勝てばそれでいいのさっ!」


ここまでお読みいただきありがとうございました。


次回の投稿は2025年4月16日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

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