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05.談話

 ――あれから、四年(一七五五年)。



「Gulalalalalalal!!!!」


 ドラゴンの咆哮が、辺りに響く。


「なに呆けてるの!?行くわよッ!!」

「え?あ、うん!」


 カリーナの声で我に返り、大鎌を構える。

 

「ねぇ、エロフ。あれ、戦わないとだめぇ?」

「ダメ!!金欠なの!!」

「仕方ないな~。」


 エロフの涙目の懇願に、「はぁ~」とため息が漏れる。

 いや、何が悲しくて昼間っから()()()()退()()なんてしてるんだろ私。

 

「まぁ、やるしかないか。」

「少しはやる気を出せメラルダ!俺達も手伝うからよ!」

「えぇ!何もしないジョスの分も、私達が頑張るわ!!」

「ナタリア、それは庇ってるの!?それとも貶してるの!?」


 ガルフがそう言ってガントレットを握り、ナタリアが腰から杖を抜く。

 

「さて、今日もがっぽり稼ぐわよッ!!」


 そう言ってカリーナは、赤色のブレスレットに手を添えた。


「はぁ~、仕方ないな~。…………行くよっ!」

「「「おうっ!!」」」


 そうして、各々が動き出す。

 私は前衛。

 このような巨大な魔物の場合、私の役目はガルフと連携した超接近戦。

 上手くドラゴンの攻撃を避け、素早く接近し、跳躍。


 ――ドンッ!!

 

 そして迫るのドラゴンの口を避け、その口を踏み台にして更に跳躍。


「カリーナ!!ナタリア!!!」

 

「おっけー!任せてっ!!」

「うん、いっくよっー!!」


 そうして左右から放たれたのは、巨大な炎の槍。

 炎が象る巨大な槍が、赤い線を描きドラゴンへと飛来する。


 ――ドゴォォォォン!!


 それがドラゴンの両目に着弾し、爆発。

 

「Gulalalalalalal!!!!」


 ドラゴンは両目が潰され、ドラゴンが悲鳴を上げた。

 でも、そんなもので倒れてくれるほど、ドラゴンは甘くないっ!

 

「ガルフッ!」

「おうよ!どりゃぁぁぁ!!!」


 そして、両目を潰したところでガルフがその足を殴り、ドラゴンの体制を崩す。


 ――ドンッ!!!!


 「Gulalalalalalal!!!!」


 そして、私がその首を切り落とすッ!!

 

 「よしっ!はぁぁぁ!!!!」


 ――キー――ン。


「ふぅ。」

 

 着地後、一拍遅れてドラゴンの首が滑り落ちた。

 そしてさらに一拍遅れてその巨体も倒れ、重い音が響く。


 ――ドゴンっ!


 これで、お仕事終了だ!


「エロフ、これでいい?」

「ダメなわけないでしょ?元はと言えば勝手に船の食糧全部あげちゃったあいつが悪いんだしさ。」

「ナタリア!?」

「さて、早く帰ってお酒お酒!」


 そう言ってナタリアは私の袖を掴むと、るんるんと帰路を歩き出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「それで、あの時何考えてたの?」

「あぁ、私何でここにいるのかなって。」

「あー。まぁ、脅迫みたいなものだしね。」


 四年前、あの場から逃げ出した私は、そのままこの船に乗船に、逃げるように海賊島を去った。

 そこまではいい!

 というか、逆に乗せてくれたエロフに感謝しているくらいだ。

 

 しかし、問題はここから。

 あのエロフ、あの時のことをネタに私を脅してきたのだ。


――あの騎士達に多分君、顔覚えられちゃったよ?だから、このままどこかで降りても、すぐに見つかって殺されちゃうかもよ?それに、その年齢だと冒険者になるのも厳しいし、お金も稼げないまま餓死だね!でも、僕達の仲間になれば、その心配もない。君が一人前になるまででいいからさ。どう?乗ってく?


 といった具合である。

 腹黒とはこのことだ。

 

 しかし、悔しいことにこのエロフの言っていることは全部事実。

 下手をすれば捕まり、海賊の仲間の情報を吐かせるための拷問が待っているかもしれない。

 流石に、それは嫌だ。

 というわけで、あの時私は、エロフの話にのった。


「うん。あのエロフ、何かと理由をつけては、私をこき使うからなぁ~。」 

「まぁ、メラルダは強いからね。」

「そう?まぁ、戦い方は決まってきたけど。」


 昔は、なんとなくで殴ったり、蹴ったりしてた。

 まぁ、それでも大抵のことはなんとかなったんだけど……。

 

 でも、昔一度だけ力の加減を間違えてエロフごと敵を吹き飛ばしてしまったことがある。

 

 え?

 すっきりしたかって?

 そりゃもう!

 あと百回はやっても飽きないねっ!

 

 でもまぁ、そんな私をエロフが放置するはずもなく……。

 その日以来、間違えて船を大破されてはたまらないというエロフの意見のもと、師匠による戦いの稽古が始まった。


「シュヴァリエさん、メラルダが大鎌を持ち武器にするとか言い出した時、気絶してしばらく目を覚まさなかったんだよ?」

「まぁ、師匠は自分と同じ双剣を使って欲しいって言ってたからね。」

「シュヴァリエさん、最初は乗り気じゃなかったのに、あそこまで変わるとはねぇ。」

「うん。それは永遠の謎案件だね。」


 師匠は、最初にエロフから頼まれた時は凄く嫌そうな顔をしてた。

 その時のやる気のなさときたら、あのエロフが「やっぱり無理かなぁ〜」と弱音を吐くほどである。

 

 私からしたら、それだけでやったかいがあったというもの!

 ざまぁないねっ!!!

 エロエロフっ!!

 バーカ!

 

 って、ごほんごほん。

 まぁ、そんなこともあり、どうせ今日限りだろうなーって思って、その日は適当に師匠の言うことをそのままやった。

 なんか途中で師匠いなくなったけど、一応全部覚えたのだ!

 褒めてくれてもいいぞ諸君!

 

 そしてたら翌日、なんと朝から師匠が部屋にやってきたのだ。

 あの自分から女の部屋に入る度胸のないと有名なあの師匠が、はじめて自分から私の部屋に訪れたのである。

 いやー、あの時はびっくりしたね!

 一瞬エロフの変装かと思って、殴りかかりそうになったもん!


 そうしてその日から、毎朝師匠の稽古が始まったのだ。

 ちなみに、私は朝が苦手である……。

 

「…………謎で悪かったな。」

「あ、師匠!ただいま!」

「…………あぁ。」


 相変わらず挨拶は素っ気ないけれど、実はこれでだいぶ変わってたりする。

 当初は私が挨拶しても無視、なんなら目も合わせてくれなかった。

 まぁ、いきなりエロフのせいで仲間になった私と仲良くできないのは仕方ないとしても、「挨拶くらいはしてもよくないっ!?」と、当時はよくカリーナに愚痴っていたものである。

 それが、今では「あぁ」。

 

「…………うん、成長したね、師匠。」

「………………なんのことだ?」

「あはは。あ!シュヴァリエさんもお菓子食べます?メラルダお手製の飴ですよ~!」


 そう言って、カリーナは机に置かれた飴を一つ取り、師匠に差し出した。

 というか、それ、ただの砂糖の塊なんだけどね!

 どちらかというと、こんな高価なものを常に船に置いているこの船の方が凄い。

 これでもお金持ちなんだよね、私達!


「…………もらおう。」

「………………………………え?師匠って甘いもの苦手なんじゃ……。」

「いや、そうでも……………………s、そうでもないぞ……。」

「師匠!?」


 ほらぁ!!

 珍しく甘いものを食べたらこれだ!

 というか、甘いもの苦手なのに砂糖の塊食べるとか何考えてるの!?

 もう、こういうよく分からないところは変わらないなっ!


「メラルダ、シュヴァリエはメラルダの物だから食べたのよ?だからそんな顔しない。」

「そうよ~!シュヴァリエはかっこつけたかったの!まぁ、かえってかっこ悪いけどね。」

「ナタリアも!煽らないの!」

「いつからいたの?ママ!」

「師匠が飴食べる時にはいたよ?」

「あ、メラルダにはバレてたか。」


 そう言って、ナタリアは「てへっ」と舌を出した。

 うん、可愛い。

 

 っていうか多分、師匠が珍しく飴なんて受け取るものだから、隠れて反応を見てたんだろう。

 だって二人とも、 さっきからニヤニヤが抑えられてないんだもんな~。

 特にナタリアとか、もう隠す気ないでしょそれ。


「師匠、それは吐き出して。今度、甘くない飴も作るから!」

「……い、いや。大丈夫だ。私はこれでも副船長、飴ごときに負け…………うぷ。」

「飴と死闘しないで!!!」


 というか、そこまで来ると一周周って申し訳なくなるから!

 というか師匠、もう顔面蒼白になってるしっ!?


「あら、これはちょっとまずいかも。シュヴァリエ、早く吐き出しなさい。」

「…………いや…………う……。」

「はぁ……、ごめんねメラルダ。ちょっとシュヴァリエ連れて行くわ。」

「え、うん。」


 そうして、エリーヌさんに肩を借りた師匠は、そのまま部屋を出て行った。

 ちなみに、師匠が部屋を出た瞬間に「おえっ」とか言っていたのは、聞かなかったことにしてあげようと思う。

 よく頑張ってくれた。

 ありがとう、師匠。


「シュヴァリエも、変わったわね~。」

「もって??」

「ジョスとシュヴァリエ、それに他のみんなも、メラルダが来てからだいぶ変わったわ。」

「そうかな?エロフはエロフのままだよ?この間だって、頑張ってナタリアの水浴び覗こうとしてたし。」

「よし、あいつ殺してくるっ!」

「だ、大丈夫だよっ!その後私とメラルダでぼこ……と、止めたから。」


 まぁ、実際ナタリアは凄く美人だ。

 私と同じ金髪なのに、雰囲気が全く違う!

 多分、大人の色気とかそんな感じのやつ!

 理由はまぁ、年齢はもちろん、身長とか容姿とか色々あるけど、やっぱり一番は胸だね!

 これ、どれくらいの大きさなんだろ……。


「なにぃ?メラルダも私の体にご執心なの?私、メラルダなら大歓迎よ?」

「……うん、とりあえず胸の大きさ教えて。」

「メラルダっ!?」

「はっ!」


 危ない、思わずナタリアの胸に吸い込まれるところだった!

 恐るべし、ナタリアの胸っ!

 

「でも、ナタリアってスタイルいいよね。何かやってるの?」

「うーん。強いて言うなら、最近はメラルダの朝の稽古に参加してるわ。」

「それ、私と変わらない…。」


 カリーナナイス!と思っていたのにその答えは酷い。

 私だって、いつも頑張ってるのにぃ。


「あなたも大きくなればこうなるわ。」

「そうかな~。私、カリーナと違って将来を約束されてないし……。」

「はは、確かにエリーヌは凄いわよね。」


 はぁ、私もナタリアとエリーヌみたいな大人になりたいな~。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます。


次回の投稿は2024年12月15日を予定しております。


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