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34.護衛

◆メラルダ◇

 

「むぅー!!」

「………………。」


 えーと…………。

 メイド長ともあろうものが、こんな顔をしてていのだろうか…………。

 それに、むぅーって……。


「はぁ…………シャーリィー。君の不安も分からないことはないが、これには旦那様の合意もなされている。だからいい加減諦めなよ。」

「……………………それくらい、分かってる……。」


 まぁ、でもシャーリィーがそうなる気持ちと分かる。

 だって、私だって分かってても、気を緩められないんだもの……。

 そうして、私は見ないようにしていたこの元凶を視界に入れた。


「………………なんだ?」


 そこに立っているのは、あの時私達を襲ったあのメデューサ。

 しかし、その指には禍々しい指輪が嵌められている。


「…………ねぇ、なんでこんなことを引き受けたの?」

「…………取引をした。ただ、それだけだ。」


 取引相手は、エレナさんか……。


 今日の早朝、珍しくエレナさんが私の部屋にやってきた。

 そうして、今後のために私に護衛を付けると提案してくれたのだ。


 ただ、その時点でエレナさんの背後にいたシャーリィーが不服そうな顔をしていたことから、なんとなく嫌な予感はしていた。

 だって自分の部下が護衛についてたら、そんな顔しないもんね…………まぁ、私が海賊だから不服というのなら納得だけど……。


 そうして、お昼すぎ。

 エレナさんに連れられて部屋にやってきたのが、この男だった。

 服装は、この屋敷に男性用の使用人服がフォルジュさんのしかないらしく、今は適当に買ってきたのか、市民的な服装をしている。

 まぁ、私も人の事言えないんだけどね……。


 それで…………。


「なんでこの男を私の護衛に?」

「お前達に、やってもらいたいことがある。」


 そう言って、エレナさんは一枚の地図を取り出した。


「この場所に行き、奴隷商の拠点を潰して回れ。」

「私が?」

「他に誰がいる?」

「誰って…………。」


 そりゃ、アトキンス騎士団とかいるでしょ……。

 それこそ、エレナさんがやれば直ぐに終わりそうだし。


「エレナ殿………………本気ですか?」

「あぁ。その間に私達は、()()()()()()()()()。」

「「っ?!」」


 まさか……戦争開戦時と並行してやれってこと?!

 だからシャーリィーじゃなくて、この男を私の護衛につけたのか……。


 つまり、私が拠点を潰して周り、相手の注意がこちらに向いている隙に、戦争に介入するってことね。

 

 でも、それって……。


「私は、その作戦に参加できないんですか?」

「お前の役目も作戦のうちだ。それに、お前のような()()が行ったところで、死ぬだけだ。」

「……………………。」


 確かに、それはそうだけど……そうだけど…………。


「メラルダ、あなたにもやれることはあるわ。これも、サーシャさんを助けるためには必要なはずよ。」

「………………分かった…………。」


 ………………。


「メラルダ、作成開始は一週間後、戦争の開戦と同時に行う。それまで、その男と交流を深めておけ。」

「交流って……。」

「話は以上だ。」


 そう言って、エレナさんは部屋を出て行った。


――――――。


 沈黙が、場を包む。


「…………気にしないことよ、メラルダ。エレナ殿も、少し気が立っているだけ。」

「……ありがとう、リディア。」


 …………エレナさんの言いたいことは分かった。

 私の役目も、決して無駄ではない大切な役目の一つであることも。


 ただ、それでも…………悔しい。

 この短期間で、嫌というほど自分の無力感は感じてきたつもりだ。

 ただ今にして思うと、あの時以外の無力感は、全て怪我をしているからと、心のどこかで言い訳をしていたのかもしれない。


「…………リディア。」

「なに?」

「一つ、お願いがあるんだけど――――。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「私が見ていますので、ご安心下さい。」

「ありがとう、シャーリィー。」


 一定の距離を置いて、男と対峙する。


「手加減するべきか?」

「いらない、本気できて。」

「…………そうか。」


「おいおい、あいつが屋敷に侵入したっていう。」

「えぇ、シャーリィー様の魔力探知すら逃れた強者だそうよ。」

「マジかよ、本当に大丈夫かそれ……。」


 今回、私はこのために騎士団の修練場を借りている。

 周囲にいるのは、私も初めましての騎士の人達だ。


 正直、元々は追われる側であった私が、こうして騎士の拠点にいるのは不思議な気持ちだけど、これも多分慣れだと思う。

 それに、ここにいる人達には、既に私がマイルズさんの協力者であることは伝わっているらしい。

 まぁ、海賊であったことは伝わっていないんだけど……。

 

 ただ、流石にこんな子供が協力者というのは不自然なので、こうして、この男と戦うことで、実力を認めてもらうつもりだ。


 すると、シャーリィーが近づいてきて、小声で私に耳打ちした。


「…………メラルダ様、一様ある程度回復したとはいえ、まだ万全ではありません。ご無理をなさらないでください。」

「うん、ありがと。」


 私がそう返すと、シャーリィーは一瞬で私達から離れた位置に移動した。


「…………双剣か。」

「うん、鎌はなかったからね。」

「…………?」


 怪訝な顔でこちらを見てくる男の武器は、一本の短剣。

 その姿は、あの時の光景を連想させる。


「…………。」

「……本当にやるのか?」

「…………うん、気にしないで。」


 そうして、私は軽く双剣を振ると、そのまま鞘に納めた。


「ルールは騎士団の模擬戦にのっとり、互いに纏っている防御結界が先に割れた方の負けです。」

「分かった。」

「…………。」


 正直、勝てるとまでは思ってない。

 ただ、最低でも自分の身は守れるということを、証明したい。

 そうでなくては、シャーリィーも安心して作戦に参加できないだろうから。


「それでは、始め!!」


 ――――ッ!!


 その瞬間、男の身体がぶれた。


 あの時と同じ。

 でも――――。


「二度も同じことが、通じると思わないでッ!!」


 ――キーン!!


 重いッ!!

 …………けど、あの化け物ほどじゃないッ!!!


「はっ!!」


 ぶつかり合う剣を跳ねのけ、隙の生まれた腹に蹴りを見舞う。


 ――ドンッ!!


 思い音が、周囲に響く。

 しかし…………。


「っっ…………。」


 男は表情を歪めるも、シャーリィーの時のように吹き飛ばすことはできなかった。

 それどころか、男は自ら距離をとり、すぐに何事もなかったかのように元の表情に戻った。


「確かに、あの時とは違うようだ。」

「よく言うよ、余裕のくせに。」


 多分、こいつはあえてあの時と同じ攻撃をしたのだろう。

 私の実力を測るために。


「魔化はしないの?」

「………………あぁ。」

「そう。」


 つまり、私は魔化する必要すら感じないほどに弱いと。

 そういうことか……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


◆シャーリィー◇


 やはり、止めておくべきだったかもしれない。

 

 あの後、メラルダ様がこの男と模擬戦をしたいと言い出した時から、嫌な予感はしていた。

 メラルダ様はきっと、今の自分の実力がどの程度なのかを、この男で測るつもりなのだろう。

 ただ、この男はアトキンス騎士団ですら一人では対応できないくらいには強く、実力を測るには強すぎる相手。


 それでも、メラルダ様を止めなかったのは、私自身、何故かメラルダ様に期待をしているから。

 頭では勝てないと分かっていても、心のどこかで勝てるのではないかと、そんな根拠のない希望のようなものがちらつくのだ。


 でも、結果はこの通り。

 初撃はギリギリ防げたみたいだけど、これはあの時の動きを、男があえてそのまましていたから。

 そして、それをメラルダ様も十分に理解している。


「やっぱり…………私が……。」


 ――ッ!!


 その瞬間、突如強烈な威圧が周囲を襲った。

 その重圧は周囲にいる熟練の騎士達でも顔を青くするほどであり、放出されている魔力量は、下手をすれば私にも匹敵する。


「な、なに…………これ……。」

「隊長クラスだぞ!!」


 騎士達が動揺する中、この元凶である()()()()()は、不敵な笑みを浮かべた。


「なら、そうせざる負えないようにしてあげる。」

ここまでお読みいただきありがとうございました。


次回の投稿は2025年3月14日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

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