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31.面会

「これが、今の私達の現状だ。」

「………………。」


 エレナさんが全ての情報を伝え終えると、皇主は混乱した様子で眉間を抑えた。


「………………とりあえず、サーシャさんの件に関しては、ご愁傷さまね。」

「あぁ。」

「だけどね、その……………………んん?。」


 そうして、彼女はエレナさんの隣に座る私を見ると、今度は混乱した様子で再び眉間を抑えた。


「………………その子、海賊なのよね?」

「あぁ、そうだ。」

「……………………アトキンス家は、海賊に協力を仰ぐような家系なのかしら?」


 まぁ…………そうですよね。


 あの日、私がサーシャちゃんの病気のことについて見抜いてから、私はますます海賊としてではなく、まるで客人のように扱われるようになった。

 それに、その理由であった王様との面会も既に済んでいるし、その時に特別私が王様に好かれた感じでもない。


 ……なんなら殴ったしね……。

 

 だからこそ、実は彼女の言う通り、今私が自由なのは、私から見ても本当におかしなことなのだ。

 

「………………確かに、このような重大な件に海賊の意見を仰ぐのは危険だというのは分かる。海賊など、大抵は信用に値しないからな。」

「………………そこまで分かっているのなら、何故……。」

「それは、私が彼女をある程度評価しているからだ。」


 え……。


「評価…………というと?」

「そのままの意味だ。」


 評価…………評価ねぇ……。


 思い当たるのは色々とある。

 サーシャちゃんの件を見抜いたこと。

 ここまで、色々と知恵を出したこと。


 ただ、これらはエレナさんの評価をここまで勝ち取るには不十分だ。

 …………と、なると……。


 ――船で化け物を殴り飛ばした時かな……。


「……………………はぁ…………私には理解できないけど、エレナ殿が信用しているのなら、今はそれを信じるわ。」


 海賊とは、基本輸送船などの船を襲い、食料などを奪うことで生活している。

 勿論私達のように、魔物を倒して生活している海賊もいるにはいるが、勿論少数派。


 そうして、その輸送船は勿論種族の区別が無いため、近くの国である精皇国や魔帝国などの輸送船も例外なく襲われることがある。

 だからこそ、基本どの国も海賊をよく思ってはいないため、皇主の疑念はある種当然のことと言えた。


「感謝する。」

「いいわ。私も、どうやら彼女に助けられたようなものみたいだから。」


 そう言って、再度私を見ると、皇主は目を瞑り一度深呼吸をすると、先程よりもさらに真剣な表情で、腕を組み直した。


「さて、ここからは、どうやってこの戦争を止めるかね。」

「………………協力してくれるのか?」

「正直、気乗りはしないけどね。………………でも、どうやらサーシャさんが、この戦争の勝敗を揺るがす力を持っているのは確かなようだし、皇主として、見過ごす訳にはいかないわ。」

「感謝する。」


 これは、以外と凄いことなのでは?

 だって、皇主の協力ってことは、実質魔帝国の協力を得られたということ。

 つまり、最悪魔帝国と協力して精皇国を制圧…………は、無理があるか……。


「ところで、あなた達は今後、どうするつもりなの?」

「精皇国の動きを見つつ、サーシャの行方を追うつもりだ。」

「なるほど………………確かに、今はそれしかなさそうね。」


 今、下手に動いたところで、相手に警戒心を抱かせ、よりサーシャちゃんと助けずらくなるのみ。

 それなら、情報を密かに集めつつ、表立った行動を避けた方が安全だ。


 ただ……。


「…………一つ、いいですか?」

「なんだ、メラルダ。」

「その………………聖獣もおらず、高位精霊との契約も難しい今、彼らはどうやってサーシャちゃんの力を利用するのでしょうか。」


 これが、私が今最も疑問視していることだ。

 私は最初、御屋敷に侵入者が現れたと聞いた時、すっかり聖獣の子が狙われたと思っていた。


 何故なら、今のサーシャちゃんはただの病人。

 しかし、聖獣の子は、単体でも圧倒的な力を持ち、かつ聖獣の子を利用すれば、大聖獣すら利用できるかもしれない。


 もちろん、リスクは大きいけど、それでも彼らはこちらを選ぶとばかり思っていた。

 しかし、結果はその逆。


 だからこそ、今の私は余計相手の狙いが分からなくなってしまった。


「…………サーシャさんの力というよりは、サーシャさんを利用して、アトキンス家を戦場に出す……というのは、無理があるかしら?」

「……………………いや、ないではないが…………。」


 その脅しに素直に従うほど、マイルズさんが素直でないことは、流石にあちらも予想しているだろう。

 それに、精皇国の人間が関わっていたとしても、それが精皇国全体が関わっているとは限らない。


 寧ろ、一部の貴族のみがこの件に関わっているという可能性の方が高く、下手にアトキンス家を精皇国に招くような自体になれば、皇王にこの件が伝わり、戦争そのものが中断される恐れもある。


 相手からしてみれば、それだけは避けたいはず。


「…………相手の狙いが戦争な以上、可能性は低いだろうな。」

「まぁ、そうよね……。」


 しかし、そうなればサーシャちゃんが攫われた理由が、とうとう思いつかなくなっしまった。


「ちなみに、精皇国にこの件は伝えているの?」

「あぁ。念の為国王から、皇王へ手紙送って貰っている。…………無事に届く保証はないがな……。」


 相手もこうなるかもしれないことは把握しているはず。

 そうして、いくら王から皇王への手紙だとしても、皇王の元まで届くまでに、何人かの仲介人が入る。


 そこでその手紙を焼却されてしまう可能性は、極めて高いだろう。


「そうね…………。」


 皇主のその可能性を分かってか、手紙にはあまり期待していないようだ。


「とりあえず、精皇国に隠密を送るしかないわね。勿論、魔帝国にも。」

「そうだな……。」


 今の私達には、正直打つ手がない。

 下手に動けば動くだけ、相手が証拠隠滅のためにサーシャちゃんを殺す可能性が高くなるからだ。


「………………今日は、ここまでにしよう。」


 そうして、エレナさんが席を立つと、私も慌ててそれに続いた。


「そうね、有意義な時間だったわ。」


 皇主は座ったまま、そう言って微笑んだ。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「大人っぽい人でしたね。」

「魔帝国の皇主だからな、これくらいは当然だ。」


 当然って…………。

 

 私と同じ年くらいだよ?

 まぁ、多分年齢的には、私の方が年上なんだけどね……。


 なのに、彼女と話している時は、まるで年下と話してるといった感じがしなかった。

 それどころか、年上と話をしているとすら錯覚してしまうほどに、しっかりとした子だった。


「魔帝国の皇主は、みなああいった感じなんですか?」

「いや、皇主うちの()()()()()()()。」

「まぁ……そうですよね……。」


 まぁ、この感じの子供が三人いるっだけでも驚きなんだけどね。


「…………皇主様は、魔帝国に帰さなくしてもいいんですか?」

「………………良くは無いだろう。だが、これは彼女の意思でもある。」


 皇主の意思?

 

「………………というと?」

「奴隷達を解放した翌日、彼女はマイルズに直接、奴隷商の件の解決に協力したいと、申し出たそうだ。勿論、本国には既に手紙を送っている。」

「なるほど…………。」


 あれ?

 だとしたら、魔帝国の賢い人ならこの戦争が誰かの狙いだって分かるんじゃ……。

 それに、手紙にもそのような文を書いてるとも思うし……。


「…………だが、戦争自体は起こるだろうな。」

「え?」


 なんで?


「お前も知っていると思うが、魔帝国が戦争を起こさないのは、一重にその動機であるダークエルフが戦争を望んでいないからだ。だからこそ、幾らエルフを忌み嫌っていても、戦争に繋がる動機まではなかった。だが、今回は違う。」


 そうして、エレナさんは立ち止まり、窓越しに見える青空を見て言った。


「魔帝国の国民達は、遂に戦争をする()()()()()()()()

ここまでお読みいただきありがとうございました。


次回の投稿は2025年3月3日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

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