表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/81

22.無理じゃない?

「………………シャーリィーさん。」

「…………はい。」

「大丈夫って言ってましたよね?」

「…………その…………だ、大丈夫じゃなかったみたいです……。」


 あれから少しして、最初はなんとなくでしか感じられなかった気配がもの、段々明確に感じられるようになってきた。

 それはつまり、私の魔力探知でも感じ取れる位置まで移動したということで……。


「こっち、来てません?」

「…………来てますね……。」


 流石のシャーリィーさんも、まさかこちらに来るとは思っていなかったらしく、私と同じく混乱した様子で竜が来ている方面を見つめている。

 そうして、そのシャーリィーさん以上に混乱しているメイドさんが……。


「リシェは何をやってるのよっ?!もうっ!!」


 そう、心配ありませんと言った本人であるミッテランさんである。

 話によると、リシェさんという獣人族の方が既にあの場にいるらしく、だから問題ないと思ったらしい。

 

 まぁ、確かに獣人族は強い。

 人にもよるけど、強い獣人は竜すら瞬殺してしまうとすら言われている。

 しかし、それと同時に獣人は防衛が苦手だとも言われている。

 その理由は単純で、多くの獣人は肉弾戦を得意としている反面、魔法などの広範囲魔法は苦手をしているからだ。


 もちろん、だからと言って防衛線ができないわけではなく、大抵の種族では敵わない。

 しかし、相手が竜や鬼になると、数で劣る獣人族は、どうしても攻めに回るしかない。


 そんな獣人にとって竜達が揃ってこちらに向かって来ているこの状況を覆すのは、不可に近いだろう。


「ミッテラン、落ち着いて。」

「……そ、そうね。でも、どうする?というか、なんで御屋敷に来るのよあいつらっ!!」

「…………………………もしかして。」


 そうして、シャーリィーさんは、まさかねといった表情で先程襲ってきたメデューサを見た。


「あ……。」


 ――そこで、私も気づいてしまった。

 

 仮にこれが全て、エルフの作戦であったと仮定しよう。

 今頃は、もう騎士団が奴隷商の拠点を抑えているはず。

 それを知ったエルフが、証拠隠滅のためにアトキンス家に聖獣をけしかけた。


 では、どうやってけしかけたか。

 簡単だ。

 恐らく、聖獣を攫った時、あえて()()()()()()されたのだろう。


 流石にこいつが聖獣の子供に勝てるとは思えないから、多分連れて行っただけ。

 ただ、その場であえてこいつの魔力をその場に残したのだ。

 聖獣が、こいつの魔力を追えるように。


 だから、こいつはさっきまで魔力を消していたのだろう。

 そうやってここまで隠していたのかは分からないけど、今この男が魔力をまったく隠そうとしていないのがその証拠。


「………………攫うのは無理でも、その場にいることくらいはできるわよね。」

「ミッテラン。」

「えぇ。こいつは、こうなることまで見越して屋敷を攻めてきたのよ。まぁ、本人の意思かは知らないけどね。」


 私は少し、サーシャちゃんを甘く見ていたのかもしれない。

 エルフの下級貴族が、功績を求めて暴走した結果が、サーシャちゃんの利用なのではないかと。

 だが、ここまで本格的に隠滅をしているくるとなると、流石に話は変わってくる。

 流石にこれだけの竜をけしかけられるとなると、恐らく下級貴族じゃ無理だ。

 これだけのことを安価で引き受ける賊など、いるはずがない。


 となると、上級貴族。

 または、()()かな?


 そんな大物がこれだけのことををしてまで、サーシャちゃんを欲しがってる。

 

 それにさ、あの群れの中にいるんだよね。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「シャーリィーさん。あの竜の上にいるのって…………。」

「……………………はい。恐らく、大聖獣かと。」


 噂には聞いたことあったけど、大聖獣って本当にいたんだね。

 まったく嬉しくないやっ!!

 

 しかもさ、これだけの魔力を持ちながらさっきまでは全く気付かなかったんだよね。

 多分、私達を逃げられないようにするためなんだろうけどさ。


「大聖獣って何匹かいましたよね?」

「はい。ですが、………………これほどの竜の群れを統括できる大聖獣など、一匹しか…………思いつきません。」


 ですよねー。

 私も昔、エリーヌに少しだけ聞いたことがある。

 その世には、絶対に関わってはいけない魔物達がいると。


 ――それがZランクの魔物。


 ギルド、そして神が討伐不可能と判断した、その世界の災悪。

 そして、その中には何匹か大聖獣も含まれていた。

 話によると、昔()()()()()()()と言う話らしい。


 まぁ、それなら流石の神様方も擁護できないよね。

 っていうわけで、そんな世界の敵ともいえるZランクの魔物。

 その中にいるのだ、白龍と呼ばれる、巨大な大聖獣が。


「これほどの魔力を隠していたなんて……。」

「はい…………。」


 さっきまで、私達は大聖獣に全く気づかなかった。

 あの船の化け物の時とは違う。

 完全に魔力探知から逃れていたのだ。


 ん?

 でも待てよ?

 ならどうして今更隠れるのをやめたんだろう?

 

「…………………………っ!!…………シャーリィーさんっ!!!」

「はい?」

「さっきあの男が逃げた時、なんで()()()()()()()()()()()()()!?」

「それは、何故か転移の発動に時間が………………まさかッ!!!」


 あの時、逃げるこの男を追うだけなら、確実に転移の方が早かったはずだ。

 もちろん転移は高等魔法だけど、多分シャーリィーさんなら戦闘に取り入れることもできるはず。

 なのにあの時、何故シャーリィーさんは走ってあの男を追いかけたのか。


 もし仮に、私が気づかないほどの規模で、()()()()()()()結界が張られていたとしたら。

 そして、その結界に高度な隠蔽が施されていたとしたら。


「っ…………。ありましたッ!!転移の阻害効果のある魔法ですッ!!規模は………………………………ベイリー王国全域?」

「シャーリィー、本気で言ってるの?」

「…………えぇ。それにこれは、エレナ様でも気づかないでしょうね。」

「そんな…………。」


 ミッテランさんの表情が驚愕に染まる。

 

 エレナさんすら気づかないとなると、相当高度な魔法だ。

 そして、この結界は多分既に完してしまっている。

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。


「シャーリィさん、エレナさんが阻害魔法を無視して転移できると思いますか?」

「…………無理ですね。」

「それは…………つまり私達だけで凌ぐしかない?」

「………………はい。」


 無理すぎない?

 あれと戦うの?私達。

 エレナさんとか、あの船の化け物とかも強かったけど、あの大聖獣はそんなレベルじゃない。


 エレナさんなら結界を破壊してきてくれるかなとか思ったけど。

 やっぱりそう簡単にはいかないよね。


「シャーリィーさん、今屋敷にいるメイドさん達を総動員したとして、どこまで持ちこたえられますか?」

「………………竜だけなら、恐らく問題ないかと。」


 なるほど……竜だけは問題ない………………って、は?!

 え、竜は問題ないのっ?!

 一様あなた方、メイドさんだよね?!

 あの竜達、普通に考えても一匹Aランク以上はあるよっ?!


「ただ、大聖獣は、神と同一視されるほどの存在です。それと戦うというのは、流石にリスクが高すぎるかと。」


 全く竜の心配してねぇー。


 ………………まぁ、今はいっか。

 それより、大聖獣だよね。

 多分、あれはシャーリィーさんの言う通り、神のような存在なんだと思う。

 だって、そうじゃないと、こんな馬鹿みたいな規模の結界を自分の力だけで張るなんて不可能だもん。


 んで、そんな大聖獣様をどうやって倒すかなんだけど。

 ぶっちゃけ、無理。


 いや、もしかしたら抑えることくらいはできるのかもしれないけど、多分倒すのは不可能だ。

 だってこれは、そういう次元の敵じゃない。


 それにさ、一様ギルドが討伐対象として定めている以上、問題はないと思うんだけど、流石にZランクの魔物をギルドの許可なしで戦っていいのかって話だよね。

 

 正直、エレナさん抜きで戦うと、その被害は想像を絶することになるだろう。

 被弾があちこちに飛び、民家が火の海に変わってもおかしくない。

 ここから街や港までは遠いけど、大聖獣の魔法なんて想像もつかないから。


 そうして、そうなった時のギルド対応が凄く怖い。

 だって、ギルドからすれば、勝手にZランクの魔物を怒らせたうえに、甚大な被害を出した馬鹿。

 というか、もう犯罪者といってもいい。

 

 そして、もしそうなったら少なくとも私は二度と冒険者になんてなれるはずがないわけで……。


「エレナ様がお戻りになるまで、御屋敷を死守するしかありませんね。」

「………………はい。」


 でもさ、これって死守したとしても、被弾はどうしようとなくない?

 広範囲の攻撃なんてされたら、最悪街消えるよ?


 はぁ、でもここで、いや逃げましょうなんて言えないもんなぁ……。

 サーシャちゃんも屋敷にいるし。

 仮にサーシャちゃんを連れて逃げても、多分追いつかけるし……。


 ………………さらば、私の冒険者ライフ。

 さらば、私の自由よ…………。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


次回の投稿は2025年1月7日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ