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10.唯一の方法

さて、あれから少ししまして。

 私は今、混乱の最中にいます。


 何故って?


「こうなった以上、方法があるなら意地でも吐いてもらう。」

「えーと、は?」


 それはね、少し前までサーシャちゃんの部屋に居たはずの人達に囲まれているからだよ……。


 


 さて、私も唐突なこの状況に驚いてはいるけど、一様状況を整理しよう。

 

 シャーリィーさんが部屋を出た後、私は()()()()()()()()ベッドで体を休めていた。

 いや、もう忘れられてるかもしれないけど、一応私怪我人ね?

 まぁ、一日寝て、少しの間なら歩ける程には回復したんだけどさ……。


 そうして、私がベッドで横になっていた時、唐突に部屋に裂け目が生まれた。


 …………うん。

 これだけでも、は?って感じよね。

 プライバシーとかないの?

 この部屋。


 ………………ないよね。

 だって私、海賊だもんね…………。

 

 そうして、その中から昨日と同じくフォルジュさんが出てきて、私は車椅子に乗せられて強制連行。

 そうして玄関まで連行されてから、解放されたんだけど、その時には既に使用人、オリビアさん、マイルズさんなど、この屋敷の全戦力が私を囲んでいるという意味不明状態だったんたよね。


 ――しかも、使用人の殆どが私より強いっていうね。


 理不尽すぎじゃない?

 人権とかないの?

 この国。

 

 そうして、今。

 なんか目の前にいるマイルズさんが意を決したみたいな表情で私に話しかけてくるのだ。


 ね?

 意味わかんないでしょ?

 うん、私もだよ。

 なにこれ。


「その…………ですね、その前に、話がどうなっているのかお聞きしても?」

「お前の考えを教えろ。話はそれからだ。」

「つまり、自分の過ちを認めたと?」


 マジ?

 この頑固そうなマイルズさんが?

 

 それに、ここまでするのに結構苦労したでしょ?

 いや、私的には気に食わないけど、正直サーシャちゃんを救う方法としては、一番現実味のある方法ではあるからさ……。


 本当に諦めるの?

 

「…………今でも、私は自分の考えが間違っていたとは感じていない。あの場では、それが最善だった。」

「…………へぇ――。」


 ――最善だった、か。


 それしかなかったのではなく、それが最善だって言うんだね、この人は。


「だが、もし他に最善の方法があるのなら、それを選びたい。それが、あの子の親としての、私の責任だ。」

「…………………………そうですか。」


 ふーん。

 私としては、全てを騙して結局これかって感じではあるけど……。

 まぁ、多分オリビアさんあたりに何か言われたんだろうな〜。


「……………………………………分かりました。」


 正直、これは確証を得られるまで言いたくはなかったけど……。

 この状況で、何も知りませんは無理だよね……。


「………………では、まずはこの国のどこかにいるであろうど奴隷商を探しましょう。」

「奴隷商?でもこの国では、奴隷売買は禁止されているわよ?」

「禁止されていても、やるものはいます。」


 というか、オリビアさんには悪いけど、やっててもらわなければ困る。

 だって、もしいなかったら、私の推測全部ぱーなんだよね。

 まぁ、多分いるんだけど。


「仮に奴隷商がいたとして、目的はなんだ?」


 まぁ、普通はそうだよね。

 

「奴隷商が捕獲しているであろう、聖獣の子供を攫います。」


 ………………………………。


 いや、黙らないでもらえる?

 マイルズさんもさ、聞いといて、そんな険しい顔しないで欲しい。

 ここは、「そんな方法が!?」みたいな反応してよ……。

 

「いるのか、この国に。」

「まぁ、多分。」


 その確認を今してるんだよッ!

 まさか、こんな海賊の私頼り状態になるなんて予想出来るわけないでしょッ!


「…………エレナさんは知っていると思いますが、精霊というのは、情だけで契約を結んでくれるほど、優しいものではありません。」

「あぁ。確かに精霊は、情だけでは契約をしない。自分が認めた相手にのみ、契約をする。」


 良かった〜。

 ここでエレナさんに、いや、違うぞ?とか言われたらこの話終わってましたー!

 偉いぞエロフ!

 今のところお前の言ってたこと全部あってる!


「サーシャちゃんは、今寝たきり状態です。サーシャちゃんをよく知る精霊を連れているエレナさんならともかく、何も知らないエルフが、サーシャちゃんと精霊を契約させられるとは思えません。それが仮に、精霊使いであったとしてもです。」

「…………確かに。」


 良かったですッ!

 ありがとうございますエレナ先生ッ!!


「それに、上位精霊との契約なら、ハイエルフならできますよね?」

「あぁ、できる。」

「なら、わざわざサーシャちゃんを攫ってまで、上位精霊と契約させるのは、おかしくありませんか?」

「………………なら、サーシャは何と契約させられようとしていたの?」


 オリビアさんが、そう言って周りを見ると、みんな首を横に振った。

 まぁ、普通は分からないよね。


「……………………そうかッ!聖獣!」


 しかし、フォルジュさんだけは違ったらしい。

 突然出た聖獣という言葉に、動揺が走る。

 

 まぁ、そうなるよね。

 私もそうだったし。


 ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「だが、聖獣など、捕獲できるものなのか?」


 エレナさんが、そうマイルズさんに問いかけた。


「無理だな。力の差がありすぎる。」


 そう言いながら、マイルズさんは首を横に振る。


「はい。聖獣は無理です。ですが、子供ならどうでしょう?」

「…………なに?」


 その言葉に、エレナさんが鋭く反応した。


 それも当然で、そもそも聖獣が卵を産むタイミングなんて、誰にも分からない。

 何百年に一度、いや、何千、何万年に一度かもしれない。

 

 それに、聖獣の子供は、必ず親の聖獣が守っているはず。

 そんな聖獣の子供を攫うなど、自殺行為に等しいことだ。


「確かに、私の言っていることは、本来ありえないことかもしれません。ですが、上位精霊以上の力を持ち、エルフがここまでして、サーシャちゃんを欲しがる理由となれば、これしかないかと。」


 特に、精霊の雫なんて大層なものを使っているんだ。

 これくらいしていなければ、割に合わらないと思う。


「…………だが、聖獣の子供を精皇国に置くのは危険すぎないか?それに、万が一バレたら国が滅ぶかもしれんぞ?」

「はい、おっしゃる通りです。」


 エレナさんの言う通り、精皇国といえど、聖獣の子供を誘拐したなど、愚者以外の何者でもない。

 一歩間違えれば、聖獣が子を奪還しに攻めてくるのだから。


「だから聖獣の子供は、精皇国ではなく、かつ万が一何かあった時でも、利用出来る場所にいるはずです。」

「………………()()()。」

「はい。」


 そう。

 多分聖獣の子供は、この国にいる。

 そうすれば、精皇国を巻き込まずに済むし、万が一聖獣が襲ってきても、ベイリー王国になすり付け、混乱に乗じてシャーリィーさんを攫うなり、殺すなりできるからだ。

 

 多分、今回の黒幕にとっての最悪は、今回の一件に、精皇国の者が関わっていることが証明されることだろうから。

 

「でも、それなら先に陛下に許可をもらわなければならないわね。」

「………………そうだな。」

「……………………え?」


 もうシャーリィーさん行っちゃったよ?

 いや、あくまで確認するだけだけどさ。

 

 それに、この国で奴隷商が禁止されているんだよね?

 なら、このまま捜索始めようっ!って流れにならないの?


「奴隷売買を禁止する法律は新しいものなのよ。そして、法律が出来た際には、王国騎士団も動いていたわ。そんな環境で奴隷商探しなんてしたら、陛下に失礼でしょ?」


 なるほど。

 確かに、国王自らの命令で奴隷商を排除したのなら、その国で奴隷商探しなど、下手をすれば王家への侮辱、そして王国騎士団への侮辱と捉えられてもおかしくない。

 それが最近行われたことなら、尚更。


「分かりました。それと、ロラさん。」

「な、なに……なんでしょうか……。」

「いくら聖獣の子供で、助けられた恩を感じていたとしても、病弱な子供と契約するほど甘くはないと思います。」

「っ…………。」

「だから、これを。」


 そう言って、私が渡したのは、()()()()()()()()()()()()


「これは…………。」

「魔力を放出する魔術式です。」

『っ…………!!』


 まぁ、ビックリするよねそりゃ。


 大変だったよ?

 書くのは簡単なんだけど、昔エロフがおふざけで作った魔術を思い出すがもう大変だった!

 っていうか、私魔法に関しては本来専門外だし。


「私達が聖獣を見つけるまで、これでサーシャさんの魔力を体外に放出しながら、回復魔法を並行して使って下さい。そうすれば、少しはマシになるはずです。」

「こ、……これは…………こんな…………。」


 実は、あの時。


――――いいわ、薬を彼女に。

――――オリビア様ッ!

 

 その時にロラさんが使った魔法は、闇魔法だった。

 そしてこの吸魔の術式の唯一の欠点、それは、扱いが難しく、()()()()()()()()()()


「ロラさん。多分この屋敷で、この魔術を使えるのは、闇属性に適切がある、あなただけです。」

「ぁ…………ぁ……。」


 ロラさんは、大粒の涙を零しながら、私の渡した紙を受け取った。

 

 この屋敷において、これまで本当の意味でサーシャさんと真っ直ぐ向き合っていた人は、多分ロラさんだけだ。

 

 恐らく、彼女は体内の魔力暴走さえなんとかなれば、体の異常はどうにでもなるほどに、回復魔法に秀でている。

 それくらい、これまで頑張ってきたんだ。

 ただ一人の、自分の主のために。


「ロラさん、あなたに無理を言います。間に合わせてください。」

「………………はいっ!必ずっ!」


 そう言って、ロラさんはサーシャさんのもとへ走り出した。


「あの魔術式で、魔力過多症を治すことはできないのか?」


 エレナさんの当然の問いに、私は首を横に振った。


「あれは、体内の魔力を放出する魔術式です。ですが、その量には限界があります。今はぎりぎり放出量が勝つでしょうが、いずれ生成量がそれを上回るでしょう。」

「…………そうか。…………そうだな。サーシャはまだ子供だ。これからの身体の成長で、魔力量も増える。……………………まぁ、そう上手い話もないか。」

「えぇ。だから、急がなければなりません。」

「あぁ、そうだな。」


 そう言って、エレナさんは強く拳を握りしめた。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


次回の投稿は2025年1月12日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

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