04.お風呂の時間です、助けて下さい。
「あの、シャーリィーさん。」
「はい、なんでしょうか?」
「その、……………………お風呂くらいは一人で入れますよ?」
あの後、私は部屋に案内され、そこでこの屋敷についての説明を一通り受けた。
もちろん、説明とは言っても一つ一つの部屋を詳細に教えてもらった訳じゃない。
あくまで、トイレやお風呂など、私でも行っていい範囲の説明だ。
そうして話を聞き終わったあと、私はつい「あの、お風呂入ってもいいですか?」と聞いてしまった。
今更ながら、あの時どうしてそんなことを聞いちゃったんだろうって思う。
そもそも私、一人でお風呂入れるほど回復してないでしょっ!!
まぁ、でも私はその時、色々ありすぎて自分の怪我のことなどすっかり忘れていた。
そうして、その結果がこれである。
「何度も申し上げておりますが、メラルダ様はお怪我をなさっているのですから、ここは私にお任せ下さい。」
「ですよね………………。」
私は今、椅子に座り、身体を洗われている。
何故そこまでしてくれるのかって?
いやね、なんでか知らないけど、シャーリィ―さん、私が利き腕怪我してること知ってるんだよね。
それだけじゃなく、全身の怪我の具合まで知ってるっぽい。
え?
回復魔法かけてもらったろって?
実はね、回復魔法は確かに怪我を治す魔法だけど、なんでもすぐに完治するわけじゃないんだよ。
一見治っているように見えても、怪我の酷さによってはある程度の痛みは残るし、無理をすると悪化することもある。
まぁ、だから無理をするのは良くないっていうのは本当にその通りなんだよ。
だから、正直身体を洗ってもらえるのはありがたい。
でもね?
その結果、一つ問題が発生した。
ここまで言えば、もうエロフのような者達は分かったと思う。
そう、私は今、
――シャーリィ―さんと向かい合う形で身体を洗われている。
もうね、すっっっごく目に悪い。
いや、別に同性だから悪いことはしてないんだけどね!?
それでもさ、同性でもドキドキしちゃうくらいに綺麗なんだよね、この人ッ!
昔カリーナちゃんにデレデレした時ともまた違う、こう、なんというか、ドキドキが抑えらないと言った感じっ!
いや、もう自分でも何言ってるのか分からないんだけどねっ?!?!
同性だからいいよねっ!と、割り切れたら楽なんだけど、こうも純粋な気持ちで体を洗われると、そういう気持ちにもなれない。
というわけで、私はずっと下を向いておりますッ!!!
「メラルダ様。」
「?………………ッ。は、はい!」
「少し足を開いていただいてもよろしいでしょうか。」
「わ、分かりました!」
反射的に顔上げちゃったよぉぉぉ!!!!
なんで今顔上げたの私ッ!?
っていうか、なんで私こんなにドキドキしてんのっ!?
………………もしかして、私の生前男説ある?
いや、昔から男より女の方が好きって思いはあったけど、もしかして……。
いや、今のなし!
なしですっっ!!
これはあくまで純粋な同性のスキンシップっ!
そう、けっっっして!
いかがわしいことではないっ!!
だから私も安心して、シャーリィーさんの身体を……。
「……?。どうかなされましたか?」
「………………いえっ!なんでもないですっ!!!」
「はい?」
ごめん、無理だった。
世界の百合好きのみんな、ごめん。
でも、私にはできないっ!
こんな純粋なメイドさんの身体を、こんな汚れた瞳で映すなんて…………私には…………。
「………………お前、もしかしてくてもそっち系の人間なのか?」
「わっっ!!」
突然の横から聞こえた声に、思わず体が跳ねる。
そうして慌ててそちらを向くと、そこにはバスタオルを巻いたエレナさんが、じーっとこちらを見ていた。
「え、あ、エレナさん!お、お仕事は終わってんですか?」
「あぁ、終わった。それよりお前……。」
「は、はいっ……。」
「まさか、男だったりしないよな?」
「絶っっっったいにありませんっっっ!!!」
ないっ!
というか、ありたくないっ!!
私はあくまで、女っ!!
同じ同性を仮に愛したとしてもっ!
それは、異性では無く同性として愛したいっっ!!
「え?あ、そ、そうか。」
「はいっ!!」
「エレナ様、突然何を仰っておられるのですか。そもそも、男性の変装くらい、私にだって見抜けますよ。」
「そ、それもそうだな。どうやら私も、疲れているようだ。」
そうすると、エレナさんは「はぁ―」とため息を吐きながら、そのまま湯船に浸った。
というか、こんな話した後に考える話ではないんだけど……。
エレナさん色々すっごいな……。
あの胸もしかして、ナタリアよりあるんじゃないだろうか……。
それなのにあんなに身体は引き締まってるし……。
「はぁ…………。」
「どうかなさいましたか?」
「いえ、その……一周まわって悲しくなってきたというか……。」
いや、その……私も一応女なのに……。
こうも綺麗な人ばかりいると、一周まわって悲しくなる。
いやね、一人くらいなら、さっきみたいな思いで見られたんだけど、こうも完璧な女性が二人もいたら、流石に同じ女として思うこともある。
「…………お前、感情の起伏が激しいと言われないか?」
「ここまで激しくなったのはじめてですよ……。」
「えっと……その……なんの話しでしょうか?」
「なんでもないです……。」
もうここまで来ると、芸術鑑賞のノリで見れる気がする。
というかもしかして、この屋敷、みんなこんな感じなのだろうか。
今まですれ違った人達もみんな綺麗な女性ばっかりだったし……。
あれ?
っていうか、男の使用人いた?
執事さんとか。
もしかしてこの屋敷の使用人って女性だけ?
マイルズさん、あんな雰囲気で実はお猿さんなのだろうか?
それなら、そこに私もお邪魔したいなぁ〜。
え?
いや、マイルズさんは無理よ?
男だし。
メイドさん達だけね?
ゾッとさせないで。
「はぁ……女の園。いいなぁ……。」
「お前、男みたいなこと言うな?」
「だって男性より、女性の方がいいでしょう?」
「………………まぁ、そうだな。」
昔から、男は恋愛対象として見れない私。
だから海賊時代も、カリーナからよく「おっさんみたい。」と言われて心を砕かれていた。
「では、お流ししますね。」
すると、何度か優しくパシャ!っと体の隅々まで丁寧にお湯がかけられた。
「終りましたよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「では、次は髪の方を。」
「………………お、お願いします。」
そうして、シャーリィーさんはゆっくりと立ち上がった。
流石に髪は立ってた方が洗いやすいからね。
ただ、私からしたら大問題である。
何故って?
目の前にこう、ドンっとあるのだ。
さっきは身体だったから良かったけど、ほら、頭は上だからさ、こう、どんっと。
いや、シャーリィーさんも一応巻いてるし?
エレナさんほど大きいわけではないんだけど、だからこそいいというか……。
こう、身体に合った大きさというか…………って、何言ってんの私!?
「?」
「あ…………ごめんなさい、本当になんでもないんです……。」
実は、これがやばすぎて「か、体からお願いします!」言っんだけど、まぁ、結局こうなるよね……。
身体の時と同じで、流石に後ろを洗う時には、背後に回ってくれるんだろうけど。
前髪の時は前なんだよね……。
いや、ちゃんと言ったんだよ?
後ろからお願いできないですか?って。
でもね?
『いけません!メラルダ様は病人なのです。何か異常があった時に直ぐに気づけるよう、常にお顔を見れる位置にいなければならないのですっ!』
ということらしい。
もうここまでくると、反動で襲いかねないって心配になるけど……。
頑張って、手が出ないようにしようっ!
えーと、こういう時は何を考えるんだっけ?
え?
ドラゴン?
まぁ、それでいいや!!
ドラゴンが一匹、ドラゴンが二匹、ドラゴン三匹、シャーリィーさんが……って?!
「それにしても、よくここが女の園だと分かったな。」
「ひゃい?」
「ひゃい?」
「いや、なんでもないです。…………?女の園?」
「あぁ、ここは確かに女の園と言われている。」
え?
マジで言われるの?!
やっぱりマイルズさんあんな顔してむっつり!?
ていうか、そもそも男じゃないとかッ!?
「マイルズさんは女……。」
「そんなわけあるか。マイルズは男だ。」
「でも、女の園って……。」
「…………まぁ、そうなるか。だが、マイルズはオリビア以外に興味を持たないからな。」
もしかして、基本女性が苦手だったりする?
…………ありえそう……。
しかもその理由ってさ、絶対子供の時からモテモテだったからだよね?
絶対そう!!
そりゃ、あんな美形ならモテない方がおかしいもんね~。
「このお屋敷に他の男性はいないんですか?」
「いるにはいるが、今は一人だけだな。」
「一人?」
マイルズさんは含まないだろうし……もう一人って……。
あ、バッティアートのことかな?
「一様言っておくが、バッティアートではないぞ。」
「え?他にいます?」
「はは、まぁ、そうなりますよね。」
私が首を傾げると、シャーリィーさんはそう言って「ふふっ」と笑った。
可愛い……死んでまう……。
「お前も、今日あったぞ?」
「え?」
そう言って、ニヤけるエレナさん。
私があった、バッティアート以外の男?
そんなの……。
「…………………………ぇ?。」
「それだ。」
「…………いや、違いますよ。流石に。」
「みんな最初はそう言うんだ。」
え?
噓でしょ!?
「まさか…………。」
「はい。私の兄、フォルジュです。」
あれが男っ!?
確かに男装かなとは思ったけど、男なのッ!?
ずるいよッ!!
男でも女でも完璧はずるい!
だって男は恋愛対象外な私でも、フォルジュさんならって思っちゃうもん!
「ちなみに、屋敷ではガールズブレイカーと呼ばれている。」
「…………なるほど。」
「あぁ、特に容姿に自信のある女にはきついだろうな。」
確かに、まさか自分より綺麗な相手が男だなんて、思いたくもないよね…………。
絶世の美女であり、絶世の美青年でもあるとか。
どう頑張っても勝てないもん。
「頭、お流ししますね。」
「は、はい。」
もしかして、シャーリィーさんも……。
「私は女ですよ?」
「で、ですよね……。」
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次回の投稿は2024年12月30日を予定しております。
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