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03.マイルズ【2視点】

◆メラルダ視点◇

 

 そこには、一人の男がいた。

 いや、男…………だよね?

 多分…………きっと。

 

 この人を一言で表すなら、漆黒。

 光を通さないんじゃないかと思うほどに真っ黒な長髪と、深淵を連想させる瞳。

 黒を基調とした衣装を完璧なまでに着こなし、堂々とした態度で私達を見ている。

 

 っていうか、もう毎度のとこだけど強いなぁ、この人。

 なんなら、あの化け物より強いかも。

 エレナさんほどではないかもしれないけど、多分私が戦っても一秒もたないだろうなぁ〜。


「はぁ……。」

「…………どうした?」

「いえ、色々と自信をなくしただけです。」


 エレナさんはそんな私の反応に首を傾げた。

 いや、でもこれは仕方ないでしょ。

 エレナさん達と会ってから、私は負けてばかりなんだから。

 

 いや、実際に戦ったのは化け物だけだよ?

 でもさ、流石に私だってある程度は戦わなくても分かりますよ。

 海賊舐めんな?


 …………いや、まぁ、でも世界には私より強い人なんていくらでもいる。

 それくらい、私だって分かってる。

 自信はなくしたけどね?


 だから、力に関してはまぁ、いいでしょう!

 悔しいけど!

 悔しいけどねっ!!


 たださ……

 

 ――男なのに私より綺麗とか何?

 

 いや、容姿に関してはナタリアにも、エリーヌにも負けてたからエレナさんの時はあんまり気にしなかったけど、流石に男でその容姿は反則だと思いますッ!!

 ズルです!!

 違反です!!

 退場しろっっ!!!


「……エレナ。その娘が、例の?」

「あぁ、偶然というのもあるものだな。私が気づかなければ死んでいたぞ、こいつ。」

「そうか、ご苦労だったな。」


 そういうと、男は椅子から立ち上がり、私を見た。

 

「ようこそ、アトキンス家へ。我々は、君を歓迎しよう。」

「………………あ、えっと。ありがとうございます。」


 眉毛なっがっ………。

 この人、女装しても絶対モテるって…………。

 

「私の名は、マイルズ。マイルズ・アトキンスだ。」

「メラルダです。」

「そうか。では、今日はゆっくり休むといい。」

「え?」

「夜食は部屋まで持っていかせよう。話は以上だ。」


 この部屋に来た理由、挨拶だけ?

 もっとこう、色々と話を聞いたり、教えてくれたりしないの?!


「行くぞ。」

「え、あ、はい。」


 そうして、私はエレナさんに連れられ、部屋を出た。

 

 挨拶は大切だけど、もうちょっと色々聞かせて欲しかったな~。

 まぁ、私海賊だから仕方ないっちや仕方ないんだけどね。


「シャーリィ。」

「はい。」

「こいつを部屋へ案内しろ。あと、その手錠も外してやれ、これが鍵だ。」

「かしこまりました。」


 そうして、私はシャーリィーさんに車椅子を押され、そのまま部屋に向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


◆エレナ・モナンジュ視点◇


「入るぞ。」

「……あぁ。」


 そうして私が入った時には、既にマイルズは仕事に戻っていた。


「マイルズ、話がある。」

「あぁ、私もだ。」


 長椅子に腰を落ち着かせ、足を組む。


 そうして、私はあの時の出来事を全てマイルズに話した。


 本来の任務は、失敗に終わったこと。

 あの娘が、海賊団にいたこと。

 そして、その船に突如出現した、あの怪物のことなどをだ。

 

「それで、その怪物とは何者だ?」

「知らん。だが、私が知る限りではあのような種族は存在しない。」

「では、魔物の類か?」

「あぁ。だが、どちらかと言うと、死神に近かったな。」

「死神…………お前が昔対峙したという、あれか。」


 ――死神。


 それは私が百年ほど前に戦った魔物。

 当時は冒険者ギルドが定める冒険者ギルド指定討伐難易度において、Sランクを超えるZ()()()()に指定された、正真正銘の化け物だ。


「だが、死神には勝ったんだろう?」

「勝ってないと言っているだろう。情けをかけられただけだ。」

「だが、死神は実際に捕縛され、今もなお魔法協会の管理下にある。これは、勝ったと言ってもいいのではないか?」

「あんな拘束、奴ならいつでも抜け出せる。あそこにいるのは、奴の気まぐれだ。」

「…………まぁ、お前がそういうのならそうなのだろうな。」


 マイルズはそう言うと、机の中から一枚の紙を取り出した。


「今朝、私宛にこれが届いた。」

「それは?」

「魔法協会、その理事長が変わった。」

「なに?」


 マイルズから紙を受け取ると、そのには確かに現理事長解任の文が書かれていた。

 そして、その座に新しく君臨する者の名もだ。


「あのバカどもは何を考えてるッ?!それも辞任や退任ならまだしも、解任だとっ?!」

「あぁ。そこにも書いてあるが、独断で死神を解放しようとしたそうだな。」

「ふざけやがってッ!!」


――ズドンッ!!


「壁にあたるのはやめろ。」

「………………すまない。」


 思わず殴ってしまった壁は、部屋を完全に貫通してしまっていた。


 だが、悪いが今はそれどころではない。

 何故なら理事長の解任は、世界を揺るがす問題に等しいものだからだ。


「だが、このままでは死神が、また世に解き放たれることになるぞ。」

「あぁ。だが、私達が下手に介入すれば、私達は今の立場を保てなくなる。悪いが、当分は我慢してくれ。」

「…………あぁ。分かっている。」


 アトキンス()()家は、他の貴族とは違い、この国では特別な立場の貴族だ。

 そして、これは私達が感情気任せて行動すれば、容易に崩れてしまう立場でもある。

 もちろん、歴代当主の功績から、そう容易に崩れるもこでもないが、なにぶん相手はあの魔法協会だ。

 それに、下手に動けば魔法協会だけではなく、四神が動くかもしれない。

 それだけは、あってはならない。


「…………話は変わるが、あの娘はどうだ?」

「………………あぁ。色々言いたいことはあるが、一番気になったことを先に伝えよう。あの娘は、四年前以前の記憶が無い。」

「なんだと?」

「何も覚えておらぬうえに、ダンジョンで目覚めたらしい。そんな彼女を拾ったのがアルヴィエ海賊団だな。」


 私が言うのもおかしな話だが、記憶を無くし、しかもダンジョンで目覚めたなど、本来は到底信じられない話だ。

 

 だが、私に嘘は通じない。

 嘘があれば、()()()が教えてくれるからだ。

 そして、彼女はあの時、()()()()()()()()()()

 つまり、それは全て事実で、アルヴィエ海賊団に接触したのも、仲間になったのも、全てがただの偶然ということだ。

 

「そうか。なら、あの娘に海賊としての執着はないと?」

「いや、いくら海賊でなかった娘でも、拾ってもらったうえに、おそらく名前まで貰っている。それに四年間だ。そうやすやすと切り捨てられるものでもないだろう。」

「……それもそうか。」

「だが、あの娘は賢い。今は戻れないことも、これから戻れる可能性が低いことも分かっているはずだ。実際、下船前は何の職に就こうか考えていたからな。」


 賢い娘なのは間違いない。

 普通は、いくら海賊の子供とはいえ、騎士に捕まれば怯え、牢に入れれば、なんでもかんでも情報を吐いてしまうのが普通だ。

 情報を話せば見逃してくれる。

 そんな安易な希望を持って。

 

 だが、あの娘は違った。

 最低限の自分情報しか語らず、逆にこちらの情報を聞き出そうとしている。

 それが無意識なのかは分からないが、少なくとも、ただの子供とは思えない。


「…………もう一つ、気になったことがある。」

「それは?」

「あの娘は、死神レベルの化け物を()()()()()()()()()。」

「………………それはつまり、それだけの実力があると?」

「少なくとも、偶然ではないだろうな。実際、あの時はその場にいた私でさえ、視認するのがやっとの速度だった。」

「それほどにか?」

「あぁ。つまり、彼女にはその資格があるのかもしれないな。」

「…………そうか。」


 すると、マイルズは机に置いたあったハンドベルを鳴らした。


 ――チリン。

 

 その音が部屋に響くと、突如部屋の中央に空間を割くような裂け目が生まれた。

 そうして、その中から先程出迎えてくれたフォルジュが現れる。

 

「お呼びでしょうか、旦那様。」

「あぁ、この壁の修理を頼む。それとメイド達にあの娘には注意するように伝えろ。」

「かしこまりました。」


 ――パチン。


 そうして、フォルジュが指を鳴らすと、先程まで空いていた大穴が、時間を巻き戻すかのように元の位置に戻っていった。


「悪いな、フォルジュ。」

「いえ、これも仕事ですので。」


 とは言いつつも、その表情からは、「これ意外と疲れるので、もうやめてください。」というような思いが伺えた。


「以後は、気をつけよう。」

「ありがとうございます。それでは、私はこれで。」


 そう言うと、彼女は先と同じ方法で姿を消した。

 何度見ても凄い、洗練された時空魔法だ。

 私でも、あそこまでの完成度で行使はできない。


「それでは、私は寝るとしよう。」

「早くないか?」

「疲れてるんだ。お前も、風呂にでも入ってくると良い。今は女の時間だろ?」

「あぁ、そうさせてもらおう。」 


ここまでお読みいただきありがとうございます。


次回の投稿は2024年12月28日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

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