表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/81

02.アトキンス領

「わぁ……。」

「凄いだろう?アトキンス領の港は。」

「えぇ。凄いです。」


 今まで、こうした表だった港には来ることはなかった。

 いつも私達が行っていたのは、裏業者の集まるような怪しい港。

 殺人や強盗はもちろん、騎士団に見つからない位置にあるため、なんでもありの荒れた港だった。


 でも、ここは違う。

 多く商人が集まり、港付近の露店では、ちゃんとした硬貨の取引が当たり前のように行われてる。

 もちろん、何かあっても対応できるよう、憲兵も多く配置されている。

 誰が見ても治安のよい、賑やかな港だ。


「ここには、世界中の商人が多く集まってくるんだ。」

「へぇー。」


 確かに、ここには多くの人が集まってる。

 冒険者っぽい人もいれば、子連れの人もいて、その誰もが楽しそうに、商人の開く店を見ていた。


「……湊は初めてか?」

「いえ。…………ですが、少なくとも、これだけ気を抜ける場所ではありませんでしたね。」

「…………そうか。では、行くぞ。」


 車椅子がゆっくりと押され、人通りの中を進む。

 

 今の私は車椅子に乗り、フード付きのマントを目深く被っている。

 車椅子は、下船の前にエレナさんに言われて準備をしようとした所、立ち上がろうにも力が入らず、そのまま倒れてしまったのだ。

 だから今は大人しく車椅子に乗り、バッティアートが押してくれている。

 

 マントに関しては、念の為だそうだ。

 貴族は王族を責められない。

 それは、誰もが知っている常識だ。

 だから、万が一私が何かしらの問題を引き起こした場合、例えそれが王命であったとしても、他の貴族はアトキンス家を非難するだろう。

 王族なんて、そんなものだ。


「そういえば、お前の名前を聞いていなかったな。」

「あ、はい。メラルダです。」

「そうか。私はエレナ・モナンジュだ。覚えておけ。」

「は、はい。」


 素っ気ない態度であるけど、なんとなく気を使ってくれているのだというのは分かった。

 これも私が子供だからなぁ〜。

 なら、もう一生子供の方が楽じゃね?って気もしてくる。


 ちなみに、今私といるのはエレナさんとバッティアートだけ。

 他の騎士達は、王国騎士団という別の騎士団らしく、私達を見届けた後、そのまま出港している。

 まぁ、だからといって逃げるチャンスかというとそんなはずがなく、エレナさんどころか、私はこのバッティアートにすら勝てないだろう。

 

 あぁ、私って強い方だと思ったんだけどなぁ〜。

 あの化け物に会ってまで一度もなかったのに。


「はぁ……。」

「なんだぁ?流石に貴族様の領内は憂鬱か?」

「うるさいです。」

「お前、俺にだけはなんでそんなに強気なんだよ。」


 お前が変態だからだよ。

 エロフより危険なんだぞお前!!

 自覚ある??

 

「強気ではないです。ただ苦手なだけで。」

「…………俺だって傷つくんだぞ?」


 知るか。

 子供の個人情報見たがる変態とか、救いようもないわ!

 

「メラルダ、もっと言ってやれ。こいつはもっと反省するべきだ。」

「だ、団長っ?!」

「ですよね。私もそう思います。」


 なんか、こんな感じの会話を昔もしたな。

 確か、エロフがナタリアの裸を見ちゃった時だっけ?

 あの時のナタリア、すっごい機嫌悪かったもんなぁ〜。


 でも、まぁ、確かに一度見たら癖になる身体ではある。

 あんな大きいものを二つも持ってるくせに、スタイルのいいナタリアが悪いと言えばその通りだ。

 うん、ナタリアもギルティ!!


 ――だから、私がいつもお風呂で見ちゃってたのも仕方ない!!


「………………お前の仲間は、いいやつらだったんだな。」

「え?」

「記憶のないものが笑えることなど、そう多くない。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 それから、私達は港を出でて、そこからは用意されていた馬車で移動した。

 どれくらい移動したかは分からないけど、港にいた頃は昇っていた太陽も、着いた時にはすっかり沈んでいた。


「ここが、アトキンス家ですか……。」


 馬車を降り、車椅子に乗ったところで、私は呆然とそう呟いた。


 視界に入り切らないほどの大きな屋敷。

 闇夜でもはっきり見えるほどふんだんに使われた魔石。

 船が十隻は入りそうなほどに大きな敷地。

 そうして入口と思われる大きな扉まで導くように左右に咲く、何種類もの綺麗な花。

 今まで見た事のない、あまりに現実離れした景色に、思わず頭がくらつく。

 

「凄いだろう?」

「……はい、とっても。」


 私が素直に頷くと、エレナさんは懐から一つの手錠を取りだした。


「悪いが、ここからはこれを嵌めてもらう。まぁ、正直無くても問題ないが、形式上ってやつだ。直ぐに外せる。」


 問題ないって……。

 まぁ、そりゃ私が何をしても、簡単に抑えられちゃうだろうけどさぁ……。

  

「まぁ、使用人もいるからな。お前が海賊だってことは知らねぇが、不安にさせないためだ。」

「なるほど。」


 確かに、これほどの屋敷なら使用人もいるか!

 だから別に、私が弱いって訳じゃないよねっ!!

 え?

 流石に無理がある?

 それくらい分かってるよちくしょ!!!!


「付けるぞ。」

「あ、はい。」


 そうして、エレナさんが私の手に手錠をはめた。


 ――カチャリ。


 「え?」


 その瞬間、体から突如力が抜けた。

 まるで、力を吸い取られるように、車椅子から崩れ落ちそうになる。


「大丈夫か?」


 それを受け止めてくれたのは、エレナさんだった。

 いつの間にかしゃがみこみ、倒れそうになった私を受け止めてくれている。


「すまない。言い忘れていたが、これは力を制限する効果がある。」

「力を?」

「あぁ。深くは言えないが、簡単に言うとそういうことだ。」


 なるほど。

 確かに、力が抜けた感覚はある。

 でも、これって、魔力だけじゃないよね?

 まるで、身体の機能そのものが制限されたような、そんな感覚。


「…………バッティアート、こいつを支えるのは本来、お前の役目だぞ。」

「そうは言っても、俺が動く前に動いてたでしょ?団長」

「お前が遅いんだ。」

「……無茶苦茶言いなさる。」


 え、いや、バッティアートに受け止められるとか嫌だよ?

 誰がこんな変態おっさんに触られたいんだよッ!!

 私の身体に触れて、少しでもニヤついたら多分殺しちゃう。

 なんか、謎の力に目覚めて殺しちゃう。

 それくらい嫌!


「…………そんなにバッティアートが嫌いか?」

「え?どうして分かったんですか?」

「そんなごみを見るような目をしていたら、誰でも分かる。」

「…………本人の前でそれいうか?普通。」


 そうしてぼそぼそと何かを言いながら、バッティアートは再び車椅子を押し始めた。

 エレナさんも、私を気にしながら隣を歩いてくれている。


 ちなみに、エレナさんすっごくいい匂いでした!!

 ありがとうございますっ!!!

 

 そうして大きな扉の前に着くと、そこにはいつの間にか二人の使用人が立っていた。

 まるで絵から出てきたかのような、綺麗な紫髪の二人の女性。

 二人共似てるから、姉妹かな?

 でも、片方は男性服だし……男装かな?


「「おかえりなさいませ。エレナ・モナンジュ様、バッディアート様。」」

「あぁ。マイルズに用がある。」

「はい、既に私室にて、お二人をお待ちです。」


 男装をしている方の使用人がそう言うと、二人は合図でもしたかのように、同時に扉を開けた。


「うわっ……中も凄い……。」


 大きな玄関?が、無数の装飾で彩られてる。

 絨毯も綺麗に敷かれてるし、あのシャンデリアとか、宝石みたいに綺麗!

 

 ってか、玄関にしては豪華すぎない?

 それとも、これが貴族の普通?

 

「こちらの方は、お客様ですか?」

「あぁ。そのようなものだ。」

「それでは、ここからは私にお任せ下さい。」


 男装した女性がそう言うと、二人はこちらにやってきて、綺麗な姿勢で一礼した。


「ようこそお越しくださいました。私はフォルジュと申します。主にこの御屋敷で全体の管理を任されております。」

「シャーリィーと申します。この御屋敷で、メイド長をさせて頂いております。」

「は、はじめまして。メラルダと、も、申します。」


 …………なんか、凄い。

 同じ人族の筈なのに、お辞儀も話し方も凄い丁寧。

 それでいて、全く違和感も感じない……。

 完璧な人族っていうのは、こういう人達のことなんだろうな……。


「こいつは立てないからな。階段のサポートはまかせるぞ。」

「畏まりました。では、こちらへ。」


 その後、シャーリィ―さんと変わったバッティアートは、そそくさと屋敷を出て行ってしまった。

 

 シャーリィーさんが私を押し、フォルジュさんが私達を先導する。

 その歩く姿はとても洗礼されており、道中の装飾など気にならないほどに思わず見入ってしまった。

 そして行けるか不安だった階段だけど、なんとシャーリィーさんが魔法で車椅子ごと浮かせてくれたのだ。


 いや、車椅子ごとって何?!

 今までそんなの見た事もないんだけど?!


 などと思いつつも、流石にそんなことを言えるはずもなく……。

 そうして、次は当たり前のようにすごい事をやって見せたシャーリィーさんに興奮していると、気づけば目的の部屋まで到着していた。


 廊下に並ぶ、いくつもの扉。

 その一室に止まり、フォルジュさんが扉を叩く。


 ――コン、コン、コン。


「失礼致します。エレナ様方をお連れ致しました。」

「…………入れ。」


 すると、扉の奥から男のように低く、それでいて、女のように透き通った声が帰ってきた。

 男だとは思うんだけど、女っぽくも聞こえるような不思議な声。

 思わず男かな?って思っちゃうけど……。

 でも、流石に男だよね?

 旦那様だし。


「どうぞ、お入り下さい。」


 そう言ってフォルジュさんは、ゆっくりとその扉を開けた。



 

ここまでお読みいただきありがとうございます。


次回の投稿は2024年12月26日を予定しております。


また、誤字報告も合わせてお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ