表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救命活動with転生Girls!  作者: 涼雲ルミ
尽力令嬢とフクシュウ
77/79

そして情報提供する。

「ちょっと黙っててよモヤシ、〈Shut up〉!」 


私が男に向かって勢いのまま睨みつけると、次の瞬間彼の口は開かなくなったみたいだった。

モゴモゴとしながら口を開こうとするガリガリモヤシ男だったが、これも魔法なのか…?と思うことにして一旦置いておく。

そして、精霊王の通信に集中することにした。


「お兄様に何があったんですか!」

『レオンハルトが倒れてて、今ティー…といっ…。ただ、ぼ…ら両方魔力切れ…近なん…だ』

うぅ…ダメだ。よく聞こえない。

洞窟の中だから電波が悪いとかそういうアレ…!? 私、Wi-Fi持ってないよ!?


「だから使えないんですか?どうにかして癒やせないんですか?今どうなってるんですか!?」

『おち…け! 今、君…は、どこにいるんだ?』

「洞窟です洞窟!村人の救出に向かっている所で、偶然奴隷商人と遭遇しました。あとはリス…」

『っっハルト!レオ…ハ…トッ!!!しっかりしろ!』


え、これガチでヤバい奴じゃない…?

更に焦ったような声でそう言ってくる精霊王に何も言えずに固まってしまう。

小さくティーアちゃんの声も聞こえてくる。

お兄様の名前を呼んでいる、心の底から心配してくれている声だ。


「…精霊王、お兄様の様態は?」

『えっと…かなり呼吸が変かも。なんか、人間が死ぬ前の呼吸って感じ、それもすご〜く苦しい奴』


冷静にエグいこと言わないで!?とツッコミたくなるのをグッと堪え、他には何か特徴が無いのか、と聞きまくる。

すると、しゃくりあげるようで途切れ途切れに起きる呼吸をしているらしかった。

目には光が消えかかっているらしい。…目…のことは二次元過ぎてよく分からないけれど、しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸…。

思い当たるのは死戦期呼吸くらいだった。

保健体育の授業を思い浮かべながら、私はそのことを伝えてみる。もしかしたら胸骨圧迫、気道確保、人工呼吸等の心肺蘇生やAEDを使えば何とかなるかもしれない、と。

この世界にAEDがあるかは知らないけれど、心肺蘇生くらいはあるだろう、と踏んで。


『…それで助かるの?』


少しだけ希望に満ちたような声色でそう言ってくる精霊王。

確証は出来ない、けど、恐らくそうだ、…と。

そう言えば、震えたような声で『そっか…』と言ってくる。

問題は、誰がいつやるか。

早くやらねばならないし、その為には知っている私が駆けつけなければならない。でも、すぐにはこの迷宮洞窟を抜け出せないだろう。今から走っても数分はかかる。AEDによる電気ショックが一分遅れるだけで救命の可能性は10%下がる。

…うぅ…どうしよう。

そんなことを思っていると、ティーアちゃんの声が聞こえてくる。


『教えて、今すぐそのなんとかかんとかをやるわ!』


精霊王が繋げてくれたのだろうか。

繋げてくれてるってことは、精霊王自身も相当体力が削がれている筈…、だとすれば、出来るのはティーアちゃんだけ、か…。

ティーアちゃんならいけるか…?体格差はあるけれど、まだまだ小中の差、そこまで気にならない。

だから胸骨圧迫は教えれば大丈夫だろう、…まあ、体重が足りるか心配だけど。それに人工呼吸だって…


「ティッ…いやでも!その、人工呼吸は、ききき、き…!」

いやいやいやいやいやいや、いや、待って!?人工呼吸!?ダメだ!人工呼吸!!幾らお兄様と言えどティーアちゃんのは、初キッ…それに!ティーアちゃんと言えどもお兄様の初キ…、!!…いや、逆もあるよ?ティーアちゃんが何歳なのか分からないから何も言えないけれど、初だってあり得なくはないからね。王女様だし、きっとその辺りはシビアだろうから、それこそ…!


『そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?さっさとやり方教えなさい!』

「は、はひっ…!!!」


ティーアちゃんにそう言われてしまい、私は速攻で教えることに。

ま、まあ?人工呼吸はやらなくても良いって教科書にも書いてあったし?胸骨圧迫だけでも十分効果がある!…らしいから!!!


胸骨圧迫は、胸の脇に膝をつき、一方の手の付け根…手掌基部と呼ばれる部分を胸の真ん中に置いて、もう一方の手を重ねる。

体重が加わるよう垂直に、両肘を真っ直ぐ伸ばし、肩が圧迫部位の真上になるような姿に。

そして、強く早く絶え間なく押して、それが30回できたら人工呼吸。流れるように人工呼吸も説明をしてしまう。人工呼吸は気道確保の後、骨の硬い部分に手を当てて顎を持ち上げる。それから鼻をつまんで口を覆って密着させて、約一分かけて胸が上がるのを見て分かる程度に息を吹き込む。

それが出来たら口を離して自然に出るのを待ち、その後もう一度吹き込む。


『こ、こうかしら…?』

……なんだか、不安要素しか無い。

向こうで何が起こっているのか分からず、今にでも洞窟を抜け出したい気分だった。


『違う違う!もっとこっちでしょ多分!』

『うそ!だってセラフィーナさん今…!!』

「立ってちゃダメですからね?!膝は…」

ちなみに、ちらっと横目で奴隷商人は…と見てみれば、モヤシ男…モーセを連れてった方の男は見事に縛られていた。ナイスグリムさん。

そして、大男の方は…と言えば、リスクとキャンディさんが共闘していた。

リスクはもちろんなんだけど、キャンディさん戦う女って感じで凄く格好良い。なんとか勝てそう、…そう思って後ろを振り返ると、リスクが一言声を上げた。


「事情は分かりました!」


え、こっちに言ってる…? まるで戦闘なんか全くしてませんよ、みたいないつもの声色でそえ言い放ったリスクに対し、声も出ずに固まってしまう。


「今っ、アボイ…ドが!そっちに向かってるので!!!」

良かった…なんとか戦闘中をアピールするような声色を出してくれるリスクに人間味を感じて安心する私だったが、…怖いだろ普通に。普通はもっと乱れた声出すって!前世で言うガチ球技中ってことでしょ?それ以上ってことでしょ!?

流石オトチカ攻略対象者ミステリアス系初代隠しルート、リスクルビダ・カモミート。全てにおけるスペックが高い。


「…アボイド??」

てか、アボイドって誰? 同い年の貴族リストには載ってなかった筈だから、リスクの同級生か、知り合いで平民か閥族か…。

リスクの兄がフルール村の人達とめちゃくちゃ知り合いだからこそ分からなくなってくる。


「ああ…っ、昔から、傍にっいてくれた! 僕の、親友!相棒だ!」

親友で相棒…そのフレーズをどこかで聞いたことがあるような気がした。

でも、リスクとは余り関係無い所で、だった気がして。

…そして、辿り着いた先は、やっぱり第三作目。第三作目で初登場した…


「っっアボイドなら、僕の器とぴったりハマるから!っっ、だから、使えるかも…っ!はぁぁあっ!!!」

魔法が使えないから、体技で何とかするしか無い。

剣を片手に突っんでいくけれど、心配になってしまう。だって、体格差的にリスクの方が圧倒的に不利なんだもの! 私は鉄砲をイメージして、水鉄砲を放つ。リスクに当たらないギリギリを行くのが中々難しい。少しは役に立ってると良いけど…


『ティーア!…ろだっ…ば!?!!』

そんな音が聞こえてくる。お兄様…、ティーアちゃん…、皆…!!!


『諦めるなティーア!まだ出来……があるは……ろ!? レオ……ルトは死なせな…、……らあき…めるな!!!』


ティーアちゃんに、だけじゃない。

私にも響いてくる一言に、思わず固まってしまいそうになる。

それをじっと堪えて、大男に鉄砲を当てることだけに集中する。……そう、だよね。諦めるなセラフィーナ。

バッドエンドになんてさせない、お兄様は助ける!絶対に!!


「『はぁッッッ!!!!」』


リスクの声と精霊王の声が重なって聞こえる。見てみれば、リスクは必殺ワンパンチ(?)で大男を戦闘不能にしていたみたいだった。

……そういえば、リスクってルート解禁後は馬鹿力発動してたっけ。セラフィーナと同レベルとまで言われていた気がする。もちろん騎士系の子も強いは強いんだけど、あの子は剣術とか合わさってた。

対して、リスクは単純な力、って言われてたっけ。なるほどね、納得…出来た気はする…?

最も、当時のリスクは復讐命だったから今の彼とは全然違うし、あまり当てにしない方が良いのかもしれないなとは思うけれど。


「えっと…スピリット様?は、アボイドとティーアを繋げてください!」

リスクは私の方に来ながらそう言い切る。

それから、私の手を握った。どうしたんだろ…?と思っていると、『ボイボイ!アボイ♪』という小さなドラゴンの声が聞こえてきた。

「僕の親友で相棒」と笑いながら呟くリスクに、声も出ずにパクパクと口だけ開く。


ティーアちゃんと精霊王…スピリット様が話しているのが薄っすらと聞こえてくるし、ティーアちゃんは強く早く絶え間なくを守ってくれているのが見える。

そうそう、なるべく膝をついて垂直に……


「あれ…?」

やっぱりそう、だよね…?どうして私、ティーアちゃんの姿が分かったの? リスクと手を繋いだ瞬間から、…向こうの景色が見える…気がした。

そして、思い出す…リスクの魔力器。

毎年の生誕祭でわざと光派生の魔法、…火水風土の練習しかやっていたかったから忘れかけていた。

…彼の本当の魔力器は火水風土のどれでもなく、まして光系統ですらない。


『繋げたよ、これで良いんだねリスクルビダ』

「はい!」


精霊王スピリット様の声が鮮明に流れ込んでくる。

目を瞑れば、その状況が見えてきた。…まるで、隣にいるかのような錯覚をしてしまう。

「聞こえる?ティーア、聞こえたら返事して」

ティーアちゃんから「えぇ」という返事を聞くと、リスクは安心したような表情を見せる。


「お願い、」


私に向かってそう口を開くリスク。

その意図が分かり、少しだけ懐かしさを感じてしまう。…ゲームの中盤みたいだ。スピリット様が「すげぇ…」と呟いている声も全て聞こえてくる。

私は、しっかりと頷き目を瞑った。


『ボイボイ!アボイ♪』


大事なのはイメージ、…想像力で世界を魅せろ。


「ティーアちゃん、行くよ!」

一言口を開けば、ティーアちゃんは唖然とした表情から一変、真面目そうな表情に戻る。大丈夫、覚えてる。

昔の記憶通りに想像するだけで良い。

そうすれば、私からリスクに、リスクから彼に、彼からはスピリット様に、そして、スピリット様がティーアちゃんに繋げてくれる筈だから。


だって、リスクの本当の器は幽。

第一作目ラスボスと同じ系統だったから、始めのうちはラスボス=リスク説も唱えられていたみたいだ。

結局リスクは隠しルートだったから良かったはものの、リスクのその力は敵だった場合とんでもないことになっていただろう。

その力とは、見えない物を見せる力。

前世で言う幽霊を見る、みたいな感じだろうか。まあ、幽魔法自体の元ネタがそれだと思うから、大体合ってると思う。

その力を言い換えれば、即ち、映像化の能力。

想像したイメージを自分だけが鮮明に記憶することが出来るし、終盤では触れている相手にその記憶を見せることも出来た。何故今それが出来るのかは分からないし、そもそもティーアちゃんに届くかどうかも分からない。

そこで鍵になるのが、恐らくアボイド、って呼ばれてた…リスクの親友兼相棒。そのフレーズは確か、第三作目に登場した…


『そして次に、人工呼吸についてです』


うわ、しまった!そう思ったときにはもう遅く、人工呼吸についても考えてしまったみたいだった。

リスクのことは表に出さないように頑張っていただけに、胸骨圧迫だけでなく人工呼吸の方も想像してしまっていた。


「………」

一通りの流れが終わり、映像が消えてしまう。

胸骨圧迫は絶え間なくしていたみたいだど、お兄様は目覚めていない。


「胸骨圧迫だけやってもらえれば! その、人工呼吸はえっと…ハードル高そうだし………?」

一応教科書には、「人工呼吸はやらなくても良い」とは書いてあったし、幾ら2人であったとしても、この先気まずくなる未来しか見えない。

その姿を想像するだけで、顔に熱がたまってくる。リスクも私を通じて見ていただろうからか、顔がタコみたいに真っ赤っ赤だった。そして…


『やるわよ、人工呼吸』


なんてこと無いようにそう言ってくるティーアちゃんに対し、「うえぇっっっ!?!?」と叫んでしまうし、リスクも「………」と、真っ赤な顔のまま固まってしまう。

キャンディさんやグリムさん、それにネフェルちゃんはハテナを浮かべて固まっているけれど、浮かべたいのはこっちだった。

なんなら浮かんでるかもしれない、ハテナ。

ティーアちゃん、人工呼吸するのそんなにも抵抗無いんだ…。

いや、確かにお兄様はイケメンだし、ティーアちゃんだって超絶美女よ?流石歴代屈指の容姿端麗敏腕美男美女、って感じ。だけどさ!だけど!!!

…ま、まぁ…他意は無い!二人ともこれっぽっちもない!責められるなら人工呼吸を教えた私!私の責任だから!と暗示をしながら、私はリスクと手を離し、深呼吸をして胸を落ち着かせたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ