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救命活動with転生Girls!  作者: 涼雲ルミ
尽力令嬢とフクシュウ
75/79

Ⅰ11. 尽力令嬢は異常者を想う。

ネフェルちゃんと洞窟に向かった私達は、洞窟の入り口で争っているモーセを見つけた。


「くそっ…なんなんだこの餓鬼!」

なんか…押してるのか押して無いのか分からないような状況。

モーセの方が体格も人数も圧倒的に不利ででやられてる筈なのに、焦っているのは奴隷商人の男達なのだ。


「やっぱり、モーセは…」

何か言いたげにそう呟くネフェルちゃんにその意味を聞いてみれば、少し渋られる。

けれど、“モーセのピンチを救う為”、その為に教えて欲しい、…そう言えば、ネフェルちゃんは渋々口を開いてくれる。


「…昔から、モーセがいると魔法が使えない、って言われていたらしくて…」

それが不思議だった彼のお姉さんは村を出て学園に来て、お兄さんも村に残りつつも魔法に関連するギルド運営を引き継いだ。

そして、彼が学園に入ったのは幼少部1年、つまり最初から。

その時にはすでにモーセ自身その体質に疑問を抱いていたから入学をした、学園で魔法を使うことは殆ど無い為、然程問題では無かったけれど…


「…でも、今……」

モーセ自身が使わずとも、奴隷商人側は魔法が使えなくて焦っている、…そういった所だろうか。

そんな体質あるわけ…と言いたくなるけれど、ゲームでそう云う人もいるって聞いたことがある。

確か、【魔法学】というタイトルでワンエピソード。そして中ボス戦での謎の少年だ。

体育学、家庭学、魔法学の3つのうち魔法学を選んだ時に登場するエピソードで、魔法学の教授として学園にいる少年が魔法学のエリアを案内してくれる、という物だ。…丁度この前のミリアムさんのように。


教授なのに少年、って言うのは、単純に見た目の問題。

ローブを羽織っている人だったけれど、背丈がイグニス様と同じくらいだったから、この世界にある飛び級制度か何かを使っていたのだろうと推測出来る。

そして、その若教授は…異例の体質、の例としてよく挙げられていた。

魔法学の実験失敗した時、その若教授が飛び出してくれて、“まずは〇〇からやってみようか”みたいな感じで終わるまでループするという展開。難しかったけれど、要領を掴めば難なくクリア出来たエピソード。リズムゲームみたいな物だったしね。

なるほど、その人くらいだと思っていたが、この世界にはやっぱ色んな体質の人が存在しているみたいだ。もしかしたら第三作目以降に度々登場するあの子らも…と思いたくなってしまうが、その若教授は第一作目の子だからその線はなさそう。

中ボス戦の少年に至っては、謎のまま終わったという記憶。そもそもの登場が一度きりの上、その後深掘りもなかったのでほぼ空気状態だった。

…でも、なんとなくその若教授と中ボスくんには関係があった気がするし、しかもその特異体質はワンチャン加護説っていうのも轟かれてた記憶があるんよね。ただ、第二作目の次に記憶がない第一作目の細かい所は正直記憶に残っていないので確定は出来ない。


…とりあえず今わかることは、モーセが危ないということだけだ。


それから、私達は顔を見合わせ、モーセの方に向かっていく。

「っセラフィーナ・エンシャンツ!?それに、ネー…」

「っぅモーセ後ろ!!!」

ネフェルちゃんの声と共にモーセの後ろを見てみると、そこには生気を失ったような目の男達が、モーセに向かって大剣を振りかぶっている所だった。



「っっ〈煌めく波動を放ち、幻想の水紋へと導け〉!!」



「え?」

隣からなんて言ってるのか理解できないくらい変な言葉が聞こえてきた。

振り向くと、ネフェルちゃんが奴隷商人の奴らに向かって水を出している所で。…この国の言葉は日本語でも英語でもない。なんとかその言葉を分かるようになっているこの状態で新たな言語を喋られると、頭がパンクしてしまいそうになる。…だけどここで倒れたら“なんだコイツ”扱い待った無し。…急いで体勢を立て直す。

…ちなみに、中々威力が高く、何人かがモーセの隣から洞窟の入り口辺りに吹っ飛んでいき、そのまま入り口の隣にぶつかって気を失っている所だった。

おぉ…!と感嘆の意を洩らすが、その間にもネフェルちゃんは走ってモーセの所に向かおうとする。


「っっだめだ!走るな…っっ」

「うるっせぇ喋んな!…チッ…、お前らはコイツらなんとかしろ!俺がアイツに知らせる!!」

モーセの首の根をつかみ、彼を連れて洞窟の中に入っていく奴隷商人の人。

息の合った「おう!!」という声によって、彼らが私達に向かってくる。モーセの「ダメだ!やめろ!」等という声が、洞窟内で反射して聞こえてくる。


「ネーちゃん、か…」


お姉さんが居るのかなぁという予想通り学園にお姉さんがいる、って言うのはさっきの話から分かっていた。

けれど、モーセが言う…守りたい人、って。…もしかして……

洞窟に向かって走るネフェルちゃんの後を追いつつ、その背中を見上げる。

そうだったのか…と分かったけれど、今は考えている余裕は無かった。なんとかして奴隷商人達に勝って、そしてこの先に進まねばならない。


「ネフェルちゃん、ここは私が…って、ネフェルちゃん!?」


ここは私に任せて先に行けというフラグを自分に立てて、更にネフェルちゃんのフラグを圧し折る作戦だった筈なのに、ネフェルちゃんが急に膝をついて倒れそうになってしまう。

立ち止まって彼女の方を振り向くと、…物凄く体調が悪そうな顔をしながら片手をつき、…めちゃくちゃ息を切らしていた。


「ね、ネフェルちゃん…?」

「す、みま…はぁはぁはぁはぁ…あの…私、はぁはぁ…じつ…はぁはぁ…」

魔法…というよりも、走ったのが原因っぽい。

「分かった!分かったから! とりあえず喋らず行こ!?」

それから息を整えながら、ネフェルちゃんは一言、「実は体力ないんです」と言い切る。

見てれば分かるから喋るなください!?と言ってやりたい気分だったが、それをぐっと押さえて背中を擦る。

しかし、そんなことをしている間に、洞窟の入り口からここまでそれなりの人数の奴隷商人達が走ってくる。


「えぇい!ネフェルちゃんに指一本触れたりなんかしたら、お前ら全員お母さんに言いつけてやるんだから!」


これ程“ママに言ってやるんだからね!”の有効範囲が広いのは私の他にはお兄様くらいだろう。

いや、イグニス様もか。王族公爵レベルだと思う。

私のその言葉を聞いた男達は「そうでちゅねぇ」「ままの所に帰りたいでちゅねぇ!」等という煽りをしてくるわけだが、そんな物私には全く効かない。へっざまーみろ。



「凍結!!!」


魔法はイメージ、らしいので、とりあえず氷漬けをイメージしてみる。

こんな大きな実戦はあの時以来だったけど、思いの外スムーズに固めることが出来た。とりあえずここらへんにいる奴隷商人達は全員氷漬け。

第二作目の攻略対象者にこんな感じの魔法を使っている子がいた気がするんだよね。こんなに威力が高いのも、思い出補正がプラスされているからかも。


「ネフェルちゃんはここで休んでおく?」

私は、唖然として立ち尽くすネフェルちゃんにそう聞いてみる。

体力ないなら無理に走る必要は無い。

今まで殆ど走っていなかったのもそれが原因なのかな、とか思いつつネフェルちゃんの返事を待った。


「…むしろ離れた方が危険と判断します…??」

なんで疑問形…?と思うけれど、その判断は正しいかもしれない。

なんたって、フラグの中ではお約束とも呼べる一つ、お前一人で行けよ!俺は帰る!フラグという物がある。その原因は一人行動によるものだと推測出来るので、尚更一人行動は危険だった。

私はこのフラグを知っているにも関わらずなんてことを…。ネフェルちゃんの判断に感動しつつ、私達は再び手を繋いで洞窟の中に入っていった。

…さっきよりも強く握り返されている気がして、少しだけ嬉しかった。

それと同時に、…詠唱を理解できなかったり魔法の根本をよく分かっていない私は、やはり周りと比べてもかなり異常なんだなぁ…と改めて自覚せざるを得なかったのだった。



ーーーーー







「っす、すんませんッッッ」

モーセを連れて行った奴隷商人が一人であるガリガリ男は、モーセの首の根を掴みながら土下座をする。

うめき声をあげるモーセだったが、そこにいる2人も男も、…何も反応しない。

少年が口を開く。


「この手の奴は嫌いなんだぁ〜出てけよ、お前」


冷たく怪しげに目元が光を浴びる。その目を見たモーセは一瞬固まる。…声なんて、何一つ出なかった。

言葉を放つことすら出来ない、圧倒的威圧感を感じる。


「ねぇ、なんでまだ居るの?出てけって言ってるよね?…あぁ、骨が折れてる?じゃあねぇ〜治してあげよう」

そう言い切った少年は、そのままモーセの所まで歩き…



「うグッッッッ」


懐を蹴り上げる。

アハハッと笑いながら見下ろす少年に、恐れの念を抱かずには居られない。モーセも、もちろんガリガリ男も。楽しそうに笑みを浮かべ、モーセの顎をしゃくる。


「ねぇ、治ったよね?いっぱいいっぱい練習したんだ、上手くなったでしょ?」

その目には少しだけ温かさが蘇っており、自分では無い誰かが映っているような気がした。

言われてみれば、先程まで耐えられないくらい痛かった筈の内臓がそこまで悲鳴を上げていない。モーセは、なんとか深く呼吸をし始め、一言「そうですね」と口を開こうとする。しかし…


「……やっぱ違うわ」


一瞬で冷たい目に戻った少年。

手を離し、立ち上がり、そして冷たく言い放つ。抵抗出来ず顔が地面に着くが、そんなことは全く気にならなかった。


「コイツもあっち行き、他の奴らと一緒にしといて」

そう言いながら後ろに立っている大男に指示を出せば、その大男は乱暴にモーセを持ち上げる。それから、男には一言「お前はさっきの続けろよ」と言い切った。


「今日は俺凄く気分が良いんだ♪」

誰に聞かせるでもなくそう言い放つ少年。

モーセは微かに聞こえてくるその言葉に耳を傾ける。


「ねぇ、居るんでしょ?俺には分かるんだ、貴女の魔力。ねぇ、照明するよ。…そしたら褒めてくれるよね?俺の大好きな…」






「クリスティーナ様…♡」







…少女の名前を呼ぶ時だけは、妙に魔力が溢れる。

彼の魔力量は、レオンハルトに匹敵する程か、…いや、それ以上かもしれない。オトチカシリーズ内でもトップクラスの魔力量を持つ少年の上をいく少年。…彼の正体は………









ーーーーー





「っ…あの…殿下…?」

「ん?どうした??」

ルイス・アベニューは、今現在これ以上無いくらい猛烈に焦っていた。

自分は知らない(皆は知ってた)少女が突然現れて、友やそこにいた子達を消して、自分や王子になんの敬意も無く接し、平民ですと言いながら堂々と公爵家の馬を使い、挙句の果てには…王子は少女の言ったことに従うのだ。


「…俺まで王城に行っていいんでしょうか…?」

「僕が許可しましたから、構わないかと」


目の前にはニッコリと微笑むイグニス第一王子殿下。

その隣には従者らしき少年も座っているが、彼よりも遥かに目を引く佇まいのイグニスから目を離せない。そして何より、自分が王家の馬車に乗っていること自体が信じられない…と言うように再び頭を抱えるルイス。

目の前にいるのは年下だが、確かに王子なのだ。

王城に行く為の橋を馬車で移動しており、門番にも咎められていないのが何よりの証拠だった。


「…俺、よく分からないんですけど…先生にも村のことは伝わってたってことは、上層部経由で騎士団には伝わってるんじゃないんですか…?」

「でしょうね。それでも、俺が父上にも話しておきたいんだ」


貴方が父上に話したらそれはもう国の一番上に伝わるってことなんですよ!?と言いたくなるのをぐっと堪えるルイス。

レオンハルトだけでなく王子にまで普通にしろと言われるとは思っていなかったルイスは、そのまま気絶しそうになってしまう。

窓の外を見れば、すれ違い際に何人かの騎士達が走っている。緊急事態なのだから、仕方が無いだろう。

ルイスはそう思い、目の前に視線を合わせる。

すると、王子が小さく震えているのに気がついた。…そうだよな、と思い始める。自分より5歳も年下な少年、幾ら王子であったとしても、まだ中等部に入学したばかりの少年なのだ。友達や先輩が行ってしまったとなれば、多少不安にもなる。…と。

実際、イグニスも不安には思っていた。

しかし、レオンハルトがいればなんとなく大丈夫だろうという気持ちもあった。

問題なのは、…父親との会話が続くかどうか、だ。…最近父親とまともに会話が出来ていないイグニスにとって、そこが一番の難関だった。

逆に男爵領に向かった彼らにはそこまで心配していない。

セラフィーナやレオンハルトが話している“ティーア”ならば、…クリスティーナ様のことを相談して提案してくれた“ティーア”ならば、…本気でタリティ男爵領に連れて行ったのだろうし、本気でタリティ男爵領に行ったのだろう、…そんな安心感はあった。


「…殿下、そろそろ着きますよ」


だからこそ、自分もここで一歩踏み出さねばならない。

…イグニスが、父に聞かなければならない。…元々好きだったクリスティーナ伝説を、何故嫌いになったのかを。



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