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救命活動with転生Girls!  作者: 涼雲ルミ
尽力令嬢とフクシュウ
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そして救命する。

「教えて、今すぐそのなんとかかんとかをやるわ!」

『ティッ…いやでも!その、人工呼吸は、ききき、き…!』

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?さっさとやり方教えなさい!」

『は、はひっ…!!!』


私が一喝すると、流れるように言葉で説明してくれるセラフィーナさん。

胸骨圧迫は胸に手を当てて強く早く絶え間なく押して、それが30回できたら人工呼吸で人工呼吸は鼻をつまんで…とかなんとか。


「こ、こうかしら…?」

スピリット様は私とセラフィーナさんとを繋いでくれている為片手が塞がっており出来ないので、私がやっている…んだけど、

「違う違う!もっとこっちでしょ多分!」

「うそ!だってセラフィーナさん今…!!」

『立ってちゃダメですからね?!膝は…』

やっぱり、口頭だけでは全然伝わらない。

大体のあらましは理解出来ても、その全てを理解することは難しかった。その証拠に、私とスピリット様との間でどこをどうすれば良いのかが食い違ってしまう。

うぅ…どうしよう、どうすれば良い?何をすれば、彼女が言っていることを理解できる?……せめて、せめて映像で伝えてくれれば…


『事情は分かりました!』


と。頭にもう一つの声が流れ込んできた。

先程まで一緒にいたリスクの声。キャンディさんが補足してくれるには、どうやらスピリット様の通信の範囲が疎らに散らばってしまっているらしい。恐らく奴隷商の耳にも入っているかもしれない、そう言われてしまい、スピリット様は慌ててその乱れを正すように落ち着きを見せる。

手を胸に当てて、深呼吸をするスピリット様。

『今、………が、そっ…に向かっ……』

ノイズ掛かって聞こえるリスクの声。思わずスピリット様に大声を上げてしまう。

「ごめっやっぱまだむずっっ、」

スピリット様から私達に、そして私達からスピリット様へ、という一方的な通信は簡単にできるのだろう。けれど、私から彼女達へ、という二段階構成の通信はまだ難しいのかもしれない。彼だって、何度も何度も努力し続けて得た物だったから。

そんなことを考えながら、私はレオンハルトさんの額に手を当てる。どうしよう、体温も降下し始めている。

「っ、うん、うん、えっ…うん」

ついに、私への通信が途絶える。

恐らくスピリット様本人が集中し、彼と彼女らのみに焦点を当てたのだろう。


「レオンハルトさん…」

見た限り、ただの負傷にプラス魔力の枯渇。

殆どの人間が魔力枯渇≒体力枯渇だから、負傷した傷を自己回復する前に力尽きているのだ。呼吸も荒い、…私が代わってあげれるのなら、どんなに良いか…。

せっかく転生したのに、せっかく前世の記憶があるのに。

私なんか、皆が崇めているような凄い救世主なんかじゃないのよ?貴女はただの小娘だ、って昔言われたのを思い出す。彼は…彼らは、私にこう言った。黙って守られてろ、と。それが嫌で…。まるで私が何の力も持たない人間なんだ、って言われているような気がして、凄く嫌だった。けど、今改めて実感した。副団長やメーくんの言う通り、私は何も出来ない人間なんだ。騎士団長の言う通り、私は守られる側の人間なのかも。私は何も守れない、私一人じゃ、何も……

スピリット様が何かを訴えてくるが、何も言い返すことができなかった。


「…ろ…、………!!!」

ただ、耳から流れていく。

何…?そんなに焦ってどうしたの? あぁ、そうよ、レオンハルトさんの魔力量は凄まじいから、だから彼を思い出す。どうしよう。最近やっと今の生活に慣れてきたって思っていたのに、やっぱり頭に流れ込んでくるのは、あの時の皆。あったかくて安心できて、いつも傍に居てくれて。そんな皆と離れ離れになった。もう、会えない。ごめん、ごめんなさい…。私が、私があの時、後ろからの気配に気がつけていれば………!!!


「ティーア!後ろだってば!?!!」


スピリット様がこちらに飛び込んできて、私を突き飛ばすようにしてバランスを崩す。

振り返れば、そこには大きな男の人が鈍器を持ってこちらに振りかぶっている所だった。精舞の極を使って防御をするスピリット様。

男の顔を見てみれば、正気を失ったような目つきをしていた。


「諦めるなティーア!まだ出来ることがある筈だろ!? レオンハルトは死なせない、だから諦めるな!!!」


あの時の精霊王と全く同じセリフ。

違うのは、レオンハルトさんの名前か、それとも彼の名前かだけ。状況も立場も何もかもが違う。けれど、それは紛れもなく、私が(クリスティーナ)として生死を全うした時代、精霊王が掛けてくれた言葉。

…そう、だよね。まだ出来ることはある…!


セラフィーナさんが言うには、両膝を手の脇に付いて、両手の平で胸を押さえるのよね。

強く早く絶え間なく、5㌢凹むくらいまで押さえ、一分につき100~120回。胸の真ん中に、片方の手の付け根を置く。他方の手をその手の上に重ねる。肘をまっすぐに伸ばして手の付け根の部分に体重をかけて、胸が5㌢沈むほど強く圧迫する。この時、圧迫と圧迫の間は、胸がしっかり戻るまで十分に圧迫をしっかり解除。

分からない、合ってるかどうかなんて。

でも、今私にはこれしか出来ないから。

ちなみに、スピリット様がその男の攻撃に対抗してくれているみたい。…精霊王に匹敵する強さを持つって、何者なのかしら…、と考えつつも、レオンハルトさんの方に集中する。だいぶ呼吸が安定し始めてきた。けど、声をかけても返事が無いから、まだ危うい状態なんだと思う。

「ティーアっ全ての話は後だ!手を貸して!」

「無理ですっしんぱいそせい?中!!!」

スピリット様にそう言われるが、今手を離したら絶え間なくが潰れてしまう。そう言い切れば、スピリット様は「分かった」と一言述べて、そのまま私の背中に触れる。

一瞬振り返った先には、さっきの男が転がっていた。


「繋げたよ、これで良いんだねリスクルビダ」

『はい!』

リスクの声が鮮明に流れ込んでくる。


『聞こえる?ティーア、聞こえたら返事して』

一言返事をすれば、リスクは安心したような表情を見せた。

そして、セラフィーナさんに向かって「お願い」と口を開くと同時に、スピリット様は「すげぇ…」と呟いた。

…あれ、待って? どうして私、リスクの表情が分かったの…??


「ボイボイ!アボイ♪」


スピリット様の私の背中に触れている手とは反対側の手を見てみると、そこには小さなドラゴンが抱き抱えられていた。

まさか、…でも…この時代では噂どころか今まで話すらまともに聞かなかった筈なのに…どうして……

『ティーアちゃん、行くよ!』


…セラフィーナさんの掛け声と共に、私の流れ込んでくるのは…“彼女の前世の記憶”だろうか。

周りに何人か人が居て、男の人と女の人がそれぞれ同じ服を着用していた。そして、皆黒板の端に付けられた白い物に映る映像を目視している。そこに映っていたのは…


『心肺蘇生法と人工呼吸についてです。まず初めに、心肺蘇生法による胸骨圧迫は、両膝を…』

紛れもなく、一番聞きたかった物。一番映像を見たかった場面。

スピリット様は意識を集中しているので、私も意識を集中させて目を瞑る。胸骨圧迫とやらのやり方はだいたい合ってそうだった。たまに出現する文字?か何かの意味は分からないけれど、絵的には多分正解だろう。でも、えーいーでぃーとやらはよく分からない。電気ショックらしいけれど、人体に電気を流しても平気なのかしら…?

『そして次に、人工呼吸についてです』

そして、じんこう呼吸とやらが始まる。呼吸は分かる、けどじんこうって…、国とか地域内の人の総数…のこと?けど、それってどういう意……


「………」

一通りの流れが終わり、映像が消えてしまう。

胸骨圧迫を絶え間なくしていたけれど、彼が目覚めることは無かった。


『胸骨圧迫だけやってもらえれば! その、人工呼吸はえっと…ハードル高そうだし………?』

……もう、なんで貴女が顔を紅くするのよ。


「やるわよ、人工呼吸」

うえぇっっっ!?!?という大声が頭の中に響いてくる。


そのまま自身の髪の毛を払い、目の前に横たわる少年の鼻をつまむ。…大丈夫、さっき見たことと同じことをやれば良いだけ。保健体育とやらの授業通りに、イメージした通りに。魔法はイメージ、実践だってイメージよ。

口の周りに傷はない、人工呼吸が出来る条件は揃っている。

…公爵子息様をここまで傷つけるだなんて、…許されざる行為だわ。


「フーッッッ」


…セラフィーナさんの心配には及ばない。

これで少しでも助かる確率が上がるというのなら、私はそれで構わないから。ただ、彼の未来のパートナーには少し申し訳ないけれどね。

お願い、…お願いだから生きてよ。

何があったのかは知らない、…ただそれでも、生きてほしいから。貴方の笑顔、貴方の心からの笑顔を…私はまだ見たことはない。見せてほしい、なんて大それたことを言えるわけではないけれど、それでも。……寿命を終えず、大事な人達を遺していくことの悲しみは、私が一番よくわかっているから。

…だから、貴方にそんな思い、させないよ。

貴方の大切な人達に、そんな思い、させないから。


「っっ…はぁ…………………はぁ………」

薄っすらと瞼が開き始め、黄金の瞳が輝き始める。

良かった…、これを続けていけば回復する…のよね。

あ、あと…セラフィーナさんの前世では電撃を送っていたみたいだけれど、私は専門家では無いわけだし、下手に電撃を放ったら大変なことになるかもしれない。だから…


「失礼、します…!」

お洋服を何枚か捲り、お腹の中に手を当てる。

見てない、何も見てないから安心してください。これに深い意味なんて何一つありませんから!!心の中でそう言いながら、私は全力でレオンハルトさんに魔力を流し込む。

魔力は飽和状態で一度に急激に流し込んでしまえば毒になるけれど、枯渇状態でゆっくり流し込めば問題はない。

私は、びっくりさせないように慎重に力を込めていく。レオンハルトさんの表情が少しだけ柔らかくなった気がした。


「……魔力操作、上手いね」

「それはどうも。」

私は魔力を注ぎ込んだ後、申し訳ないと思いつつも、落ちていた洗濯物をレオンハルトさんに掛ける。呼吸がだいぶ落ち着いてきたみたいで、規則正しいリズムを刻み始める。


「ボイ!アボイアボっ♪」

「ありがとう、えっと…」

「アボイ♪」

…分からない、んだけど…、……多分この子は普通のドラゴンでは無くて…


「っっ、リスクルビダ?セラフィーナ? 聞こえる?返事して!……くっっっそ…」

……いや、今はそんなこと考えてる暇は無さそうね。

通信しているのであろうスピリット様を尻目に、私はレオンハルトさんの額に手を当てながら考える。

ふふ、幾ら大人っぽいとはいえ、レオンハルトさんもまだまだ子供ね。…寝顔がまだまだ少年で、…もうすぐ結婚できる年齢だとは思えない。


「ティーア、行こう」

「けど…レオンハルトさんは……?」

撫でるのを辞めて、スピリット様の方を見上げる。

私達の方ではなく洞窟を見ながら口を開いているスピリット様。

どうやら、洞窟の方も結構危険なことになっているみたいだ。とりあえずセラフィーナさん、ネフェルさん、モーセさん達3人と、リスク、キャンディさん、グリムさんの3人は合流出来てそうなのは良しとする。けれど、今現在戦闘中だそうで…


「何かおかしい、…レオンハルトがこんな簡単にやられるのもおかしいし、さっきのコイツ…僕も力の5割で戦ったんだ、…正気を失ってた、明らかに普通じゃない。少なくとも人間じゃないね、…獣人とかの類だと思う」

ということはつまり、…彼女達の方にいる奴もその可能性が高いということ。


「レオンハルトは…」

「………れ…、」


えっ…?と、私達は二人で声を合わせて呟き、そのまま唖然として後ろを振り返る。すると、レオンハルトさんが上半身を起こしてこちらを見ている所だった。よく見てみれば、顔や足が傷だらけで、とても貴族とは思えないような風貌をしている。

それから、私達と目を合わせてハッキリと口を開いた。


「おれも、いかせて、くれ…!」

「っ…何を言うのですか!貴方は大怪我を負っていた、強さを知っているのならば尚更! 勝てる相手じゃない、大人しく待っていてください!」


私はレオンハルトさんの方を見ながらそう言い切る。

レオンハルトさんは苦虫を噛み締めたかのような苦々しい表情になってしまったけれど、私としてもこのまま引き下がるわけには行かなかった。

スピリット様が言うのであれば、普通ではないのだから尚更。別の種族…とも考えたけれど、簡単に確証は出来ない。とにかく、敵は強い。今は大人しく…


「…けど、今のティーアも何も出来ないよね」


スピリット様が少し考えた後そう言ってくる。

うぅ…と何も言えずに固まってしまう私のことを、不思議そうに見つめるのは、目の前に座っているレオンハルトさんと膝の上にいるミニドラゴン。


「君の魔力はほぼ枯渇状態、意識を保ってるだけ凄いと思うよ、褒めてあげる」

「それはどうもありがとう御座います」

私達の会話を見て怪訝そうな顔をするレオンハルトさん。


「えっと…君は一体…、あとティーアの膝の子は?というか、君は間に合っ…って、モーセは!?セラフィーナはどこに…! イッっ……」

レオンハルトさんは急に動いた所為か痛そうに顔を歪める。

そういえば、スピリット様と直接会ったのはあの時が最初で最後だし、あの時も直ぐに倒れちゃったから覚えていないのも無理はない。

とにかく、ここにいるのはスピリット様で、私の膝にいるのはミニドラゴン、私は今ここに居て、モーセさんとセラフィーナさんは洞窟の中、と手短に伝える。


スピリット様の言う通り、確かに私は今何も出来ない。でも、行きたい。……そう思うのは不可抗力で、…多分レオンハルトさんも同じなのだろう。

彼は、不可解ながらも納得したような顔をした後、まっすぐにこちらを見つめてくる。


「…良いよな?お前と変わらないんだろ?」

「……はぁ、分かりました。けど、無茶はなさらないで」

「それはこちらのセリフだ」

体制を整えて立ち上がり、そのまま私を見下ろしてくるレオンハルトさん。

私も立ち上がって、スピリット様の方を見つめる。

スピリット様はレオンハルトさんに近くに転がっていた剣を渡した。さっきまで真っ二つだった筈なのに、いつの間に直したのかしら…。


「なら決まりだね、行こう!」

「ええ!」「ああ!」


まあ、それよりも。私達は顔を見合わせた後、そのまま洞窟に向かって走り始めたのだった。





某救世主「腹筋がありました(?)」



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