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救命活動with転生Girls!  作者: 涼雲ルミ
救世主と元JK
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6.元JKは目を覚ます。

完全無欠とは言わない。言えないから。

それでも、私の生活はそれなりに充実していた。

当時高校三年生だった私は、偏差値はそこそこある希望の大学にも受かり、後は残りの長期休みになにをしようか考えていた所で。

結構有名で私も好きだった乙女ゲームをシーズン1からやり直そうかなぁ〜とか思いながらルンルンで交差点の横断歩道を渡っていた瞬間。


交通事故だろうか。青信号だったのにも関わらず…車かトラックかに轢かれ、私の人生は呆気なく終わった。



……そんな前世の記憶を今、思い出してしまった。


「セラフィーナお嬢様、本日はレオンハルト坊っちゃんと共に…って、お嬢様!?」

「どうか、お気を確かに…! お嬢様!?!!」

「カイザルト様とシュティーナ様はどちらに!?」

「誰か、医者を!医者を呼べ!!!」



私の名前は…セラフィーナ・エンシャンツ。

今の私は5歳で、来月くらいに魔力器適正検定日を控えている、この国の公爵令嬢。家族と共に、何不自由なく暮らせるご身分の少女の筈だった。

そしてここは、多分…私が死ぬ前にやり直そうかなぁ〜とか呑気に考えていた、乙女ゲーム【古の乙女と永遠なる誓い】…通称【オトチカ】の世界。

どうしてわかるのか?…そんなに決まってる。


だって、この容姿…この名前、この家族構成…

まさに、“オトチカ”のシーズン1の、ヒロイン…てか主人公!主人公そのまんまなんだから!!!





目を覚ました私は、案の定ベッドの上だった。

掠れた目を凝らしながら周りに気づかれる前に辺りを見回そうと頑張るが、それでもまだ5歳。全然素早く動けないし、頭の回転だってままならない。視界の隅では誰かが話し合ったり外と部屋を行き来したりしているようだが、全く頭に入ってこなかった。

それでも、なんとか目に入ってくる情報を整理しようと懸命になって考え始める。


まず、情報を整理しようか。

私が転生したこの世界は…恐らく乙女ゲーム、【古の乙女と永遠なる誓い】の世界。

このゲームは珍しくシリーズ化もかなりしていて、私が出てくるのは確かシリーズ第一作目の世界である。ファンからは「オトチカ」と呼ばれ支持を集めていて、…私が最初ハマったのはアニメ化されたシリーズ3からだったんだけど、そこからがっつりとハマって、3から遡るようにシーズン1、シーズン2を、そして3以降をとやりこみ、それ以降も新作が出る度に必ずプレイをしていた。

面白いのが、単なる乙女ゲームとは違い、学び要素も強いことだった。魔法は魔法なんだけど、魔法はスピリチュアルだけじゃないっていうか…。まあ要するに、化学系とか物理系とかを使うから大人や学生でも楽しめるし、その上で選択だから子供もやりやすい…みたいな感じ。

だから、理系だった私は尚更すんごいハマったんだよね…。



「フィーナ!」

バタンッと音が響いたと思えば、父上が扉を開けて入ってきていた。どうやら、脇にいる衛兵が目を大きく見開いていることから、衛兵が開けるよりも前に自ら扉を跳ね開けたらしい。

「…おとうさま……」

今はスタイル良すぎのバチクソイケオジ…って感じではなく、なんか…貴族らしくぽっちゃりとした体型であるお父様。これは偏見強いか?…ちなみに、昔はイケメンだったらしい。まあ、とにかく、貴族らしい外見であるが、それとは裏腹に、領地や平民の皆のことをしっかり考え、さらに…時に優しく、時に厳しく私や兄のことを可愛がってくれる私の自慢のお父様だ。ちなみに、責任感が強く言ったことをしっかりこなす有言実行タイプだが、ダイエットだけは未だ成功したことが無い模様。頑張れお父様。


娘と二人で話がしたい。お父様がそう言うと周囲にいた侍女や衛兵がそそくさと部屋の外に出て行った。

「大丈夫か。」

「うん、なんかきゅうにずつうが…」

「医者からは別状は無いとの話だが…、あぁそうだ、ハルトやシュティもお前のことをとても心配していたよ、」

ハルトっていうのは、レオンハルト・エンシャンツ。

私の兄で…、ゲームでは主人公の兄に当たる立場ね。何においても頼れる、完璧超人である彼。攻略対象者ではないが、主人公をずっと傍で支えてくれることもあり…彼を攻略させてくれぇという声も多かったそう。しかも、攻略対象者でないのにも関わらず、いや、ないからこそなのかな。わからないけど、人気投票では常にトップに君臨していた。やるなお兄様。

そして、シュティっていうのは、シュティーナ・エンシャンツ。

私やお兄様の母で、お父様の妻ね。

確かゲームでは…、……あれ、そういえば、お父様やお母様ってゲームではどうだったっけ。お兄様が色々助けてくれる凄い人だったってのは覚えてるんだけど、だからこそあんまり覚えてないな…。しかも、第一作目だから余計に記憶が薄い。

「無事そうなら良かったよ、クリスティーナ生誕祭も近い、今はゆっくり休みなさい」

そう声をかけてくれるお父様。

クリスティーナ生誕祭…そうだ、確か…クリスティーナ。彼女が今作品のキーパーソン。シーズン1で明かされた…古の乙女の話よね。そこからその設定が使われ、永遠なる誓いをシーズン事に追っていく、って物だった。作品事に時空って繋がってるのかな。そこら辺も細かい所はよくわからないなぁ…。でも確か…ルートが違ったりして矛盾も出てくるし、流石に繋がってないよなぁとか思った記憶があるんだよね。

というか、お父様やお母様のことが全く覚えてないのが引っ掛かる。だって家族だよ?主人公の家族。流石の私でも忘れるわけないってば…、他の攻略対象者達のことは殆ど覚えてないけど…。

うぅ…第三作目以外で1番初めにやったシーズンだから、記憶が薄すぎて…。第三作目なら余裕で脳内再生出来るの…


「…それじゃあ私は、生誕祭に向けてフルール村に向かうとしよう、今年はお前も参加しような」

「……!?」


……に…………

ちょっと待って…、今お父様、フルール村って言った…??


「ふるーる、むら…」

「?どうした、フルール村に何かあったか?」

どうしたもこうしたも無いよ。

私が記憶が薄い中覚えてるシーズン1の情報。主人公と兄、王道ルートの子、そしてもう一人…攻略対象者の一人。彼は確か、フルール村と関係していて。…あぁそうだ、あのルートでのその時彼はお兄様と…!と、芋づる式に色々な情報が流れ込んでくる。

でも、お父様がフルール村に行くってことは、もしかしたら今日が…?


ッッ後悔する前に、やらなきゃ!確認だけでも良い、思い違いだったらそれで良い。それでも、確かめないと…!


「おとうさま、ふぃーなもいきます、いかせてください!!」


悲劇が始まる前に、その悪循環を断ち切る為に。

私は、今までに無いくらい真剣な表情でお父様の方を見る。お父様もお父様で、いつも以上に驚いた面持ちだった。




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