そして混乱する。
『ここ…どこ……?』「「………」」
この声を…私は知っている。聞いたことがある。
でも…どこで聞いたか思い出せない。うーん…知っている声よりは少々幼い感じの声だから…ゲームで出てきてたり…?……いやでも、確か、ドラゴン…3作目の彼は……と。そんな感じで考え込んでしまう。
その間にも、少女とドラゴンさんは会話を続けていた。
「…ここはもりのなかですよ、」
『もり…もり??』
少々の言葉にハテナをつけながら復唱するドラゴンさん。
『もり!もりおん!!』
モリオン…待って、私知ってる。
でも、モリオンさんって確か…。ゲームの設定よりも目の前のことに集中しなきゃなのに、意識が朦朧とし始める。とりあえずモリオンは3作目じゃない、だってモリオンは…!
ドラゴンさんがそう言うと同時に、森の奥からは…さらに聞いたことがある女性の声が聞こえてきた。
「おーい、モリオーン?」
「え、なに、だれ…?」
聞いたことあって、関係性も少しだけ知っている筈なのに、頭がパニックになってそう声を漏らす私。
「……やっぱり…」
「ねえ、やっぱりってなに、どういうこと…!?まさか、おって?だったらはやくかえっておとうさまのとこに…いやでも、このこをひとりぼっちには…」
お父様からの追っ手じゃないということも、この子を独りぼっちにしたくないこともわかってる。…でも、ほんとに信じられない。…それとも、カモミート家の人が来て…?アスタグランがここにいるならカモミート家の人達がいても不思議じゃないけどさ!!と考えに考え抜くが、答えは出てこない。
「おちつきなさい、…こどものドラゴンさんがいるなら、おやがいてもふしぎじゃないわ」
「なっ…るほど……、たしかに……?」
いや、いやいやいやいやいやいや、それはそうかもしれないけど、私が言いたいのはそこじゃないのよ!親がいても不思議じゃないことはわかる。でも、だからこそ…この声の主とゲームでの彼女は一体どういうかんけ…
「モリオン…?そこにいるの??」
女性の声が近づき、とうとう草むらから顔が見えるように。
黒髪ロングに黒い瞳。シンプルなドレスのような服装を着た女性で、…私が知る姿よりも少しだけ幼さが垣間見える。
「「「………」」」
…そう、私が知る姿よりも少し幼い。それはつまり、ゲームで登場していること、私が後に彼女と出会うことを意味している。
『あっ!かあさん!!』
そして、ドラゴンのその言葉で確信する。…最終決戦前に立ちはだかったのは…………
ー「『よくも…私の息子を…!!!』」
ー「ッそれはこっちのセリフだ!…兄さん、必ず敵を取りますからね…!」
……でも、だとしたらどうして彼女は…
脳内の記憶と目の前の事象で頭がさらに混乱し、気がつくと私は…その女性と共に結構大きめの悲鳴を上げていたのだった。
「なになにどう………、……わかん……なん…こ…に…!?」
「何々何々、なんで人間がここに…ってかモリオン…ちょ、えぇ…どうしましょ…」
それから、私は混乱に混乱を重ね、声を盛大に漏らしてしまうが、今はそんなに気にならない。なんなら女性の方もめっちゃ漏らしている。少女がはじめまして、とか話しかけてるのに、気になっていないようだった。
…ゲームの中では、この女性がモリオンと名乗っていた。そして、確かこの女性は…カモミート家の一メイドで、有能だからリスクが側に置いていた…のよね。
でも、最終決戦ではドラゴンがいて…しかもこの子供がモリオンって言うらしくて、そもそもこの女性とドラゴンとの関係性は?カモミート家との関係は…?
あぁもう!何が何だかわからな…
「わるいけど、ふたりともおちついてくれる?」
少女の言葉に冷静になりつつも、頭はどんどんヒートアップしていく。
「でも、だって…ここにこのひとが…!」
「人間が何言って…ってか、何者!?あと、その…うん、人間ってそんな小さい時から落ち着いてる物だった!?」
「だってだってだってだって、とにかくこのひと…あなたはしらないかもしだけど、わたしにとってこのひとは…!」
「おちついてくれる???」
「「ヒッッ」」
……少女のその冷たい一言に、私だけでなく黒髪の女性までもが喉を鳴らし、そのまま凍りついた。
「「………」」
少女の方を見てみると、…凄く笑顔だった。
あぁ…これ、完全に怒ってるわ。いやでも、別に私なにもしてないし…と、良くないことはわかってるんだけど言い訳を考えてしまう。
それから、少女は少しホッとした後、すぐに真剣な表情になって言葉を続けた。
「このこ、のろいにかかってましたよ」
「ッッ…へ…??」
あまりに当然、と言った調子で語られるので、一瞬理解が追いつかなかった。…が、よくよく考えてみると…
「え、まってのろい?さっきののろい…?うそ…」
確かに幽呪の力で解除出来たけど!!と。
呪いの話が出てきたのは…確か第三作目の終わり辺りからだった。それより前に出てきてたかは覚えてないけど…、アニメが終わる当時は、古参アピール系の人達が、こんなのオトチカじゃない!!とか、呪いってめっちゃありがちだねwとか、まあ…時代時代!とか…、これなら二作目のがマシだったわwww…とかって言ってたらしいんだよね…。
まあ、その後再評価されて全部合わせて人気がさらに上がったから、別に良いんだけど…。……その呪い設定が、1作目の世界に存在してる…ってこと…?
少女を見つめると、少女はもう別の話題に移っていたようで…
「はねもなおってるとおもいます。かのじょにかんしゃしてください、」
女性にそう言い切った。いやいやいやいやいやいや、それはおかしくない!?
「なおしたのはあなたでしょ?わたしはとくになにも…それに、わたしのまほうがつうじたのは、あなたのアドバイスのおかげだよ?!」
うん、ゲームのことは後で考えるとして…今はこの子が先決だよね!なにせ、彼女のお陰でモリオンくん?を助けられたのに、私が感謝されるなんておかしい。それに私は彼女を止めたのに、彼女は来てくれた。来てくれなかったらどうなってたことか…、そう思いながら、少女と私はお互い功績を押し付けあ…いや、譲り合う。……すると、
「ぷっっ」
女性の方から、吹き出したような笑い声が聞こえてきた。
「………」「なっ…なんでわらうんですか…!」
真顔で振り返った少女とは違い、質問をしてしまう私。…でも、ここは笑う所じゃないでしょ!!
それから、謝られて…2人共仲が良いんだねと言われてしまうが…いや、そう言われましても!今さっき初めて会いましたが?!ゲームででてきてる貴女とは違い、私は彼女の名前すら知りませんがね!?!!
「それより、モリオンを救ってくれてありがとう」
それから、ふわっと笑いながらそう言う女性。…カモミート家のメイドをしている時は、全然笑わないで有名だったって聞いてたのに…、まだ幼いから?…うんん、でもこの人はもうお母さんとして立派なドラゴンなのよね。…益々ゲームとの関係がわからなくなってくる。
「とんでもないです、わたしぐうぜんここにきただけなので!」
…私がわざと森に来たことを知っているのであろう少女は私に向かって怪訝そうな目を見せたが、そこはスルーして女性に向かって笑顔を見せる。
驚いたようだったが、それ以上に息子さんの方が大切なのだろう。なんたって、ゲームでも息子さんのことを気にかけて…
「こんな子達ばっかりだったら良かったのに…」
「っっ…」
………………そう、だよ、ゲームでも息子さんのことを気にかけていた。
隠しルートのリスクのストーリーで明かされる、リスクの敵と言われたドラゴンのセリフ。…隠しルートでは、リスクとドラゴンは…プチ和解みたいな展開に進むのだ。そして、隠しルート以外のルートで進んだ場合の最終決戦場に着く時間と、隠しルート時の時間を合わせる為、ドラゴンに乗せてってもらう主人公とリスク。その時残したセリフが…
ー「……あなた達のような子達ばっかりだったら良かったのに…、そしたら、あの子もしなっ…、……」
……でも、そのドラゴンはその最終決戦場についた途端…撃ち殺されてしまう。
あぁ…ヤバい、一度思い出すと芋づる式に溢れてくる。と言っても、思い出してるのはリスクルートだけなんだけど…
「今日は本当にありがとうね、また会いましょう?」
女性にそう言われ、ハッとなって目を現実に戻す。…それから、女性が抱く子供ドラゴンに目を向けた。この子がどうなるのかわからないし、この女性もこの後どうしていくのかわからない。
『ばいばい、おねーたんたち!』
……でも、これでもう…ゲームに必要以上に関わることは無いよね。リスクとアスタグランさん、そしてモリオンくんと女性…関わらずとも、幸せに暮らしててほしいな。
「あと、このことは内緒にしておいてくれる?」
「も、もちろんです…!」
「………ええ、わかった」
そう言われ、食い気味に答える。少女はアッサリした回答だったけれど。まあ、私としても誰にも言わないでほしいし、win-winの関係だよね。
私達の言葉を聞くと、女性は来た道を戻るように暗闇の中へと消えていった。
「……それで…」
「……ききたいことが…」
それから数分、私達は一言も喋らなかったが、突然の声が何故かかぶる。女性の言う通り、ほんとに仲良いのでは。
「わかる、わたしもまじでききたいことおおすぎて…あときもちのせいりがおいつかん…」
聞きたいことが多すぎるし、思い返したいことも多すぎる。オマケに気持ちの整理が全然追いつかないし…。というか、そもそもこの子誰!?仲良いのでは、の前に名前だよ!名前…あとは出生…魔法…ぜん…
「いせかい…」
「…………………」
え、この子も異世界出生?いや、なワケ。いやでも、それならなんであんなにドラゴンや魔法について詳しかったのよ。やめてやめてやめてやめてやめて、怖いってばよ。あー、何?あれ?あの…そう言う物語が流行ってる的な。前世でも転生モノブームあったし、不思議じゃないよね。
思わず真顔になってしまうと、少女はなんかあわあわと慌て始める。…これはやらかした、謝らないと。
そう思うも、少女はハッとしたように顔を上げた。どうかしたのだろうか。耳を澄ましているようなので、私も同じように耳を澄ませてみると、数人の足音が聞こえてきた。それから、その音は段々大きくなっていき…
「フィーナ!」「ティーア!!!」
お父様に怒られることを現実逃避したいと瞬時に判断したのか、それとも脳内がパンクすることを意識的に恐れたのか。私は…あの子ってティーアちゃんって言うんだ…と言う取り留めのないことをぼんやりと眺める。
……ティーアちゃん。
話してみる価値はありそうだよね。高校生中学生辺りに見える水色髪青瞳の女性に抱きかかえられるティーアちゃんを見つめながら、私はお父様が近づいてくるのを棒立ちで待っていたのだった。




